キャベツはねらわれる (童話19)
「たいへんだー、食べられるー」
タマが庭にかけこんできた。虫くいだらけのキャベツをかかえている。
「タマ、そのキャベツ、どうしたの?」
「近くの畑でもらったんだ。でも食べられるー」
タマのそばを一匹のチョウが飛んでいる。
キャベツをねらっているのだ。
「たいへんだー、食べられるー」
タマが逃げまわる。
「食べられるー、食べられるー」
タマがボクにキャベツをポンと投げた。
「わっ!」
ボクはキャベツをキャッチした。
チョウがボクに向かって飛んでくる。
「たいへんだー、食べられるー」
ボクはキャベツをかかえて逃げまわった。
「あら、どうしたの?」
おかあさんが庭に出てきた。
「食べられるー、食べられるー」
ボクはおかあさんにキャベツをポンと投げた。
「えっ!」
おかあさんはキャベツをキャッチした。
チョウがおかあさんに向かって飛んでいく。
「たいへんだわー、食べられるー」
おかあさんはキャベツをかかえて逃げまわった。
「おい、どうしたんだ?」
おとうさんが庭に出てきた。
「食べられるー、食べられるー」
おかあさんはおとうさんにキャベツをポンと投げた。
「おっ!」
おとうさんはキャベツをキャッチした。
チョウがおとうさんに向かって飛んでいく。
「食べられるー、食べられるー」
おとうさんはキャベツをかかえて逃げまわった。
でもすぐにゴロンところんでしまった。
キャベツがコロコロころがる。
チョウがキャベツにとまった。
やっぱりキャベツをねらっていたのだ。
一匹、二匹、三匹。
キャベツの葉っぱからチョウが出てくる。青虫がチョウになったのだ。
四匹、五匹、六匹。
チョウがどんどん出てくる。
七匹、八匹、九匹、十匹。
おかあさんチョウのあとについて、チョウたちが空に向かって飛んでいく。
「よかった、よかった」
ボクたちは手をふって見送った。