シルヴレイン墓地地下
墓地の地下はヒンヤリしていて多少肌寒く感じる。
お墓と言うのもあってか薄暗くて正直
ちょっと不気味な雰囲気である。
「さぁて。シルヴレインさんの魔導書探しますか~。」
ミゥはそう言うとゆっくりと背を低くしてお腹に巻き付いていたスゥを静かに降ろした。
「ありがと。どうする?手分けして探す?」
「そうしようか…」
そう言っている間にフゥも遺跡内に入ってきた。
しばらくの間作戦会議だ…
「じゃぁ俺は引き続き兵士を誘導したり邪魔するのに徹するから探すのはミゥとスゥに任せるぜ?」
カラスのフゥはミゥ達が見付からないように裏方に徹するようだ。
「うん。それじゃ僕は左回りで探すからスゥは右回りでお願い。」
「了解。わかったわ。」
「しばらくしたらこの真ん中の広間で合流しよう。」
スゥはにょろにょろと右側の通路を進む。
ミゥは左側の通路を進んで行く。
遺跡内は入ってすぐ長い階段を降りると広間のようになっており礼拝堂のような作りになっていた。
左右にはまだ奥へ進める通路があり情報によると相当に広い構造になっているらしい。
スゥは見付からないように狭い隙間に入れるからこういった探索は得意である。ミゥはすばしこいがみつからずに進むにはやっぱり無理がある。
だからカラスのフゥが兵士たちを上手く誘導したり邪魔したりしてミゥを見付からないように進ませる。
「ガアガアガア」
「なんだ?カラスが何で、遺跡のなかにいるんだ?
迷い込んだのか? シッシッ!あっちへ行け。外に出すんだ!」
兵士たちはまんまとフゥの作戦に引っかかる。
フゥを追いかけて行ってしまう。
おかげでミゥの探索はスムーズに進む。
途中幾つかの部屋のように仕切られた空間はあるものの魔導書の様なものは見当たらない。
シルヴレインさんの身に付けたものだろうかが展示されていて博物館のように飾ってあるかのようだ。
「魔導書はここにはないみたい。スゥのほうはどうなんだろう?」
いくつか回って調べはしたけどもめぼしい収穫はない。スゥのほうを気にしながらもさらに奥の間へ恐る恐る兵士に気を付けながらゆっくりとミゥは進む。
その頃スゥはというと同じように魔導書を、見つけられずにいたが…
とある部屋に宝石をたくさん見つけた。
「わっ!これすごい高そう…」
やっぱり女の子だからなのか、こういったものに
目がないみたいである。
スゥのほうは近くに兵士がいても平気な様で小さな隙間に入り込めば姿を隠せるので見つかる危険は殆ど無かった。こちらもこちらで、順調に探索を進めていた。
ミゥとスゥはさらに、下に続く階段を見つけたところで一旦、礼拝堂の広間で待ち合わせ予定だったが下に向かう階段の前で合流した。通路が偶然同じ場所へ繋がっていたらしい。この階にはなにもないと見越した二人はさらに下の階へ向かうことにする。
「特に怪しいところも無かったよ。下に向かうけどスゥはどうする?」
「こっちも特に何もなかったわ。下に行きましょ。」
下の階へ降りると真っ直ぐ延びた通路があり松明が壁に所々設置してあるが、薄暗くて向こうがどうなっているのか、ほとんど見通せない。
通路の左右には小さな小部屋のような間がいくつも並んでいるのが見えた。
一つ目の部屋を左右に別れて探索しようとしたところ真ん中の通路の奥から声が聞こえてきて同時に何人かの人間の歩く音が聞こえた。
「本当に魔導書はあるのでしょうか?隊長…」
部下であろう男が隊長と呼ばれた男に魔導書のことを聞いていた。」
「あるはずだ信用できる情報だし、ないはずがないのだ。もう上の階はいい。全調査員を地下13階に降りるように伝えろ。あそこが一番怪しい。もっと隈無く探させろ。あと、あちこちにある宝も手を出させるな全て接収して帰るぞ。」
「ハッ!かしこまりました。」
部下だろう兵士は駆け足で上の階へ命令を伝えに行く。ミゥたちは置いてある宝箱に隠れて様子を伺う。やがて隊長を含めた兵士二人遠ざかるとお互いに駆け寄る。
「さっきの隊長って呼ばれてた人、魔術士なんだよね?ハリスがそんなこと言ってた気がする。」
「うん…たぶんあいつだわ。気を付けましょ。」
「下の階に行きたいのに大勢来そうだね…どうする?」
「う~ん。どうしよっか?このままこの先を探しても何もないかもしれないわ。さっきの人たちさがし終わってるみたいだし…」
「でも見つけてはいないよね…どこかわからない通路があるのかも…」
二人は悩む。けどそこでスゥが名案を思い付いた。
「私はこれからすぐ一番したの階へ行って兵士たちから隠れながら探すから…ミゥじゃ見つかっちゃうでしょ?だからミゥは上の階を最初から探しなおしてて。フゥとも合流できるかもだし。」
確かに名案かもしれない。蛇のスゥならまずみつからないだろう。
「じゃあそうしよう。お任せするけど無理はしないでね。捕まっちゃったりしたら絶対助けるから。」
二人は悩みながら相談したあげく二手に別れることにした。すでにはぐれているフゥも含めるなら三手になる。スゥは兵士に気を付けながら下の階へ、ミゥは上の階へ向かう。
もうずいぶん長い時間ミゥは荷物を背負ったまま移動している。
何気に重くなってきた。
上の階の物陰で隠れて様子を伺うミゥ。
どうしても見つかるわけにはいかないんだ。
今僕が見つかれば全てが台無しになるんだ。
僕はそう自分に言い聞かせた。
そのためにはどうしても持って入ってきたお弁当が邪魔になるのだ。
これは仕方のないことなのだ。
決して食いしん坊だからとかではない。
絶対に食いしん坊じゃないはずだ。
僕は作戦の為に仕方なくお弁当を全部食べた。
苦汁の選択であった…
…たぶん…
この事件が後に弁当3人分事件と呼ばれることをまだミゥは知らない。




