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07 無言のまま

「ファー、おはよう」

 朝の喧騒の中、銀色の後ろ姿を見かけた僕は彼女に呼びかけた。しかし、ファーからはいつものような返事は無い。その代わりに、僕の鼻先には一枚のメモ用紙が差し出された。

「ん? 何?」

 ファーは、何か言いたげに口をぱくぱくさせながらメモ用紙を指差す。いいから読んで、といったところか。

 そこには、まるで市販のフォントのような字で『人工声帯が故障しました。修理は放課後、工場に戻ってからです』とある。つまり、今日いっぱいは筆談で過ごすことになるのだろう。

「不便だね」

 僕の言葉に、ファーは首を横に振る。

「そんなに不自由じゃない?」

 今度は頷く。彼女は立ち止まると、新しいメモ用紙に何事かを書き付けて僕に手渡した。

『私が困っていると、皆さんが何かとフォローしてくれます。それがとても嬉しいので、大丈夫』

 読み終えて顔を上げると、ファーと目が合った。彼女は僕に軽く頭を下げ、先に立って教室へと向かう。

 ファーの声が無い一日は、きっと味気ないものになるんだろうな――そんなことを考えてしまった自分に気づき、僕は手にしていたメモをくしゃくしゃに丸めるとポケットに入れた。何故だか、顔が火照っていた。

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