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04 ふわふわ

 体育の授業が終わり、校内へ引き上げる。そんな生徒たちの流れに従わず立ち止まったのは、ファーだった。彼女は通りかかった僕に気づくと、地面を指差した。

「これは、何ですか」

 天気雨以来、僕はファーから色々と尋ねられることが増えていた。初対面の頃と比べれば信頼されてはいるのだろう。今、彼女が示しているのは、春の風物詩の白い綿毛。

「タンポポの種だよ」

「キク科の植物ですね。その種子」

「うん。息をかけると飛んでくよ。やってみたら?」

 冗談半分で付け足した最後の一言を真に受けて、彼女は素直に頷いた。茎を摘んで渡してやると、彼女は精密機器らしく繊細な仕草で吐息をそっと吹きかけた。

 宙に舞う白い群れを見送った後、ファーは「私の語彙では表現できません」と呟いた。

「何?」

「的確な擬態語が登録されていません」

 ファーの記憶装置には、綿毛が飛ぶ様子を表す言葉がないということらしい。僕が無い頭を捻って思いついたのは――。

「うーん。……『ふわふわ』とか」

「ふわふわ、ですか。ふわふわ?」

 新しい単語を確認するように、何度も繰り返すファー。僕は何だかもっと見ていたくなり、綿毛をもう一つ彼女に手渡したのだった。

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