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03 天気雨

 放課後、僕は生徒昇降口でファーを見かけた。雨がぱらつく夕方の空を一心に眺めている彼女は、ひどく真剣だった。いい加減、ロボットに気を使うのにも倦んでいた僕が興味を引かれたほどなのだ。どれほど異質な姿だったかは推して知るべし、である。

 僕は、ファーに話し掛けた。言葉を交わすのはずいぶん久しぶりのような気がする。

「何見てるの?」

 ファーの隣で見上げると、青空にも関わらず落ちてくる雨粒が光って眩しい。彼女は、空から目を離さずに答えた。

「雨というのは、晴天時でも降るのですか?」

 おや、と僕は思う。それはこれまでのような機械的な音声ではなく、語尾が上がった疑問形だったからだ。

「ああ、天気雨ね」

「テンキアメ?」

「うん。空が晴れてても降ってくる雨のこと」

「天気雨。無事データを収集」

 彼女はそこでやっと僕の方を向くと、「ありがとう」と軽く頭を下げた。その一瞬、僕はファーが機械であることを忘れた。

 ファーはこうして、人との触れ合いの中で少しずつ『人間』に近づいていくのだと、僕は遅ればせながら悟った。しかし、彼女が一年間でどれほどの知識と感情を身に付けるのか――この時の僕には、まだ知る由も無かった。

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