表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/25

【番外編1】 春雷

「親しい間柄ですか?」本編を連載する前に書いた、いわばプロトタイプにあたる500字小説です。

500字で小説を書くバトンをいただいたときに書いたものです。


ここに出てくるファーとテスは本編の二人(の、つもり)です。

少し雰囲気が違うかもしれませんが、よろしければどうぞ。

「ファー、おはよ」

 雨の匂いが漂う通学路、僕は前を行く同級生を呼び止めた。振り返ると、シャラシャラという無機的な響き。人工毛髪が擦れた音だろうか。

「予報見た?」

 にこりと笑って、ファーは手にした鞄を叩いた。

「雷ですね。……念には念を入れて、予備電源まで持ってきちゃいました。テスさん、もしものときは」

「任せて」

 僕は胸を叩いてみせた。

 外見は限りなく人間に近いが、ファーは精密機器だ。落雷で調子を崩すことはよくあるし、一時的にスリープして自身を守ることさえある。僕はクラス委員として、そんなときの復帰の手順を教え込まれているのだった。

「アンドロイドも、色々と大変だね」

 ファーが人間社会に懸命に馴染もうとしているからこそ、間近で見ている僕には辛いときもある。そんな気持ちから出た何気ない一言に、ファーはその辺のヒトよりもヒトらしい表情で空を見上げた。

「私、この季節が好きですから。いつも今頃――センサが雷を感知すると、数日後には平均気温が上昇して、みなさんの顔も明るくなります。そういう人間も、好き」

 少し照れくさそうに、ファーが微笑む。僕は春のような温かさに満たされながら、雷鳴を遠くに聞いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ