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02 つれない君

「ファー、さん」

 七宮ファーは僕の呼びかけに、無言で三センチほど顔を上げた。首の動きに伴って、綺麗な銀色に光る人工毛髪が乾いた音を立てる。

「次は化学だけど、移動教室だから――」

「化学実験室ですね。移動の予定は前回の授業時にすでにインプット済みですし、実験室の場所も記憶しています、テスさん」

 ファーは無抑揚で言うと、教科書とノートを手に席を立つと教室を出て行った。まるで、無愛想という言葉をそのまま表すかのような態度には、取り付く島がない。

 クラス委員だから、とファーの世話人として指名されたことについては、当初は理不尽だと思ったものの、もう諦めた。しかし、肝心の彼女自身が何もさせてくれない状態では僕の出る幕はない。

 そもそも、僕は『世話役』の存在意義が分からなくなってきていた。転校初日こそ、彼女の人間臭い部分を見つけて好印象を持ったものだったが、次の日からのファーは僕の助けなど全く必要としなかった。すべてをパーフェクトにこなし、一分の隙も見せないまま一日を終える――ファーの学校生活は、その繰り返しだった。

 僕は自分の立ち位置に悩みつつ、自らも化学実験室へと向かう準備を始めたのだった。

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