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19 冷蔵庫で保存

 ファーが欠けた毎日にはいつまで経っても慣れることができなかった。

 その点から言うと、春休みに入って、学校へ行かなくて済むのはありがたかった。隣同士で座った教室、彼女を送った通学路――僕にとって学校は、彼女との日々そのものだからだ。

 例えば、ファーなんてロボットは最初からいなかったのだと信じ込むことができたならば、まだ自分を納得させることができるだろうに。しかし、そんなことはもはや不可能なほどに、彼女は僕の中に居着いている。

 喉の渇きを覚えて何気なく開けた冷蔵庫に、小さな包みがある。ファーがバレンタインデーにくれたクッキーが、食べる決心のつかないまま入れてあった。

「……やっぱ食べられないよ、ファー」

 僕は、手に取ったクッキーの包みを握りしめていた。くしゃっと包装がひしゃげる音がして、その存在を主張する。

 これはファーがいた証だ。確かに僕と触れ合った、人間より人間らしい『七宮ファー』の形見なんだ。

 知らず溢れてきた涙に、最後に会ったときのファーの体の温もりが蘇ってくる。僕はファーと別れてから初めて、声を上げて泣いた。

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