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18 タスケテ

 ファーが行方不明だとナナミヤの研究所から連絡がきたのは、終業式の翌日。予想外の知らせに驚いた――なぜなら僕は前日、彼女の処遇を巡って研究員と派手にやり合っており、てっきりお叱りの電話だとばかり思っていたからだ。

 しかし、さらなる驚きがやってきたのはその直後だった。

「突然すみません」

 僕の家の玄関に立っていたのは、部屋着のような灰色のワンピース姿のファーだった。どうやら彼女は着の身着のままで抜け出してきたらしい。

 ファーは「返事をするために、来ました」と前置きすると、顔をしっかりと上げて微笑む。

「私を人間にしてくれたのは、テスさんです。……あなたの隣にいると嬉しいし、いないと寂しい。それが恋というものなのだと、私は昨日やっと理解しました」

 僕の胸に押し当てられた頬は、濡れていた。熱を帯びた手も、伝わる肩の震えも、明日にでも解体される機械のものとは到底思えない。

「私も、テスさんが好き。あなたも同じ思いなら、今だけでも隣に――」

「今だけなんて、言わないでよ」

 その日僕らは、ナナミヤが彼女を迎えに来るまで一緒に過ごした。それは短いながらも、これまでのファーとの一年の中で最も幸せな時間だった。

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