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15 下書きの跡

 時々、乾いた音を立てて薪が爆ぜる。夜空に高々と上がる炎を見上げ、ファーが呟いた。

「ずいぶん激しく燃えていますね」

 冬の球技大会は、応援に使った横断幕などを燃やす焚き火で幕を閉じる。例年、表彰式が終わると、生徒たちは中庭へと出て来て、この火で体を暖める。だが、みんなが集まるのは暖を取るためだけではない。

「球技大会名物でさ。胡散臭いんだけど、願いを書いた紙を燃やすと叶うって。ファーもどうぞ」

 メモ用紙を手渡すと、彼女は長い間考え込んだ末に何ごとかを記す。覗き込むと、ファーらしくもない震えた文字の列が、塗りつぶされ、消されていた。

 それでも何とか、『来年も見られますように』と読み取れる。確かに、ファーの試験登校期間は今年の三月までだが――。

「何で消したの? 来年、またおいでよ」

「私に来年はありません」

「え?」

「登校期間後、改良と分析のため、データは回収され、ボディは分解されます。七宮ファーは消えるのです」

「うそだろ!」

「私は機械。偽りのデータは出しません」

 ファーは無表情に告げると、絶句する僕の手から紙を取り戻して火にくべた。炎に照らされた横顔は紅く染まり、血が通っているかのようだった。

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