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11 ドレミファソ

 高校生ともなると、例え音楽の授業とはいえ真面目に歌う生徒などほとんどいない。そんな中、僕の耳に届くのはファーの歌声だった。音程も歌詞も正確で、文句のつけようが無い。僕のように聞き入ってしまい、自分の歌が疎かになっている生徒も少なからずいるようだった。

「歌、上手いよね」

 一曲歌い終わり、僕は彼女を褒めた。しかしファーの自己評価は、あくまでクールだ。

「歌ではなく、ゆらぎもないただの音です。私の声は人間に心地良いよう調整されていますから、テスさんのような感想を持つのは当然です。……でも、声に頼らず、他人に感銘を与えられる歌が歌えると素敵ですね」

 最後の方はまるで夢見るように、ファーは呟いた。ここのところ湿りがちだった表情が、今日は明るい。前向きな彼女を見て調子に乗った僕は、冗談めかして提案してみることにした。

「じゃ、カラオケにでも行って練習する?」

「からおけ?」

「……仲間うちだけで好きなだけ歌える施設、かな」

「それは、ぜひ行きたいです」

 ファーの表情が、ますます輝く。半ば騙したかのようであるのは認めるが、僕とファーとの初デート――と表現していいのかどうか――は、こうして実現したのだった。

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