表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/25

10 不良品

「ファー?」

 はっとしたように顔を上げた彼女は、辺りを見回して僕に気づくと、申し訳なさそうに目を伏せる。心ここにあらずといった様子は、メンテナンスで日々最高の状態に保たれているはずのファーには有り得ない姿だった。

「悩み事?」

 僕は彼女に倣い、目線を低くして尋ねる。すると、ファーは「分かりません」と即答した。もしかしたら彼女には悩みという概念自体が無いのかもしれない。しかしそれならば原因不明の不調に見舞われて、なおさら苦しいだろう。

「嫌じゃないなら、話すと楽になるかもよ」

「テスさんに迷惑は――」

 ファーはそこまで言いかけたが、僕の顔を見るとかすかに微笑んだ。

「……研究員から、オーバーヒートが多すぎると指摘されました。もし不良品と判断されれば開発は終了、つまり学校に来られなくなるということです。ここが大好きだから、それだけは嫌です」

 彼女には珍しく、言葉が堰を切ったように溢れ出してくる。

 大丈夫と無責任に励ました僕に、軽く頷くファー。強がりだと分かってはいたが、彼女の表情は会話の前よりも確実に明るい。それに比べ、『僕も嫌だ』の一言も出せない自分がどうにも情けなく、僕は拳を握りしめていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ