Forever memories...
翌日、健也はみさとの病室に足を運んだ。
でもいつもとは違った。
名札は無くなり、病室も妙に寂しげだった。
ベッドのシーツは取り替えられ、もう次の患者の為に準備されている。
『健也!』
健「……え…」
健也の目にはいつものようにベッドに居るみさとの姿が見えた。
目を擦ってもう一度見る。
しかし、健也の前にみさとが現れることはなかった……
み母「健也くん……やっぱり来てくれたんやな……よかった。これ……」
不意に後ろから声を掛けられ、驚きながら振り返ると、みさとの母から未開封の袋を渡された。
健「……これは?」
み母「みさとが健也くんに残した物。受け取ったってくれるかな?」
健「!……ありがとうございます。」
健也は袋を受け取った。
み母「じゃあ私はこれで…また葬儀で…」
健「……はい。」
それだけ告げると彼女は病室を後にした。
後ろ姿が見えなくなると健也は渡された袋を見つめた。
健(みさと……ありがとう…家で見るよ…きっと涙が止まらないから…………)
**********
家
健「ただいま……」
健母「おかえり。ご飯は?」
健「いい……」
健母「そう…お腹空いたら降りてらっしゃい。」
健「ん…」
みさとが亡くなった昨日から健也はこの調子だった。
食事もろくに摂らず、家ではずっと部屋に籠った。
バタンッ
部屋に入り、健也は袋を開けた。
すると中にはアルバムと手紙…
先にアルバムに手を伸ばし、ページを捲った。
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○月△日 晴れ
見て!この雲!
ハート型!
――――――――
○月□日 曇り
今日は曇ってる
けど私はこんな
曇りの日でも空
は好きやな……
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○月○日 雨
雨で空は無理や
ったか……
けど部屋の花、
雨でも綺麗やで!
――――――――
○月▽日 晴れ
雨の次の日の空
は蒼くて大好き!
澄んでて心も洗
われる……
いっそ雨が私の
病気も流してく
れたらいいのに
な…笑
――――――――
アルバムには空や花の写真と、みさとが書いた言葉が綴ってあった。
最後に近付くに連れ、震えた文字に変わって行く…
それでも一生懸命書いてくれたことが犇々と伝わってきて、自然と涙が流れた。
そして最後のページを捲る。
そこにはいつの日か公園で撮った写真といつ撮ったのか、健也の後ろ姿、横顔、寝顔…
ちゃんとメッセージも添えられていた。
――――――――――――
私さ、これが最後のデートになるやろうってわかってた。
わがまま言ってごめんな…
思い出作りたかったからさ…
最後に二人で写真撮れてよかったよ!
――――――――――――
震える文字で綴られた文の上には数滴の涙の痕が残っていた。
健「みさ…と……」
止まらない涙を袖で拭いながら手紙を開く。
――――――――――――
健也へ
今この手紙が開かれてるってことは私はもうおらんかな?
きっと健也のことやから泣きながら読んでんじゃない?笑
泣かんといてよ。
私は健也の笑顔が好きやで。
記憶を無くした時、余命宣告された時、死のうとした時…
いつも側に居てくれたのは健也やったでな。
それがどんなに私の力になったか…
ほんまにありがとう!
感謝してもしきれんぐらい感謝してる…
健也が私の生きる意義…生きる希望やった…
隣で笑ってくれたから私は笑って居られました。
先に逝ってごめんな…
寂しい想い、させてごめんな…
いっぱいいっぱい泣かせるかもしれへんな…
謝ったって健也が救われる訳じゃないのはわかってる。
でも謝らな私の気が済めへんねん…
なぁ健也……これから書くことしっかり読んでな。
最後のお願い。
健也には未来がある。
夢がある。目標がある。
叶える為にはこんな所で立ち止まってる時間なんてない筈やで?
ちゃんと前に進んで下さい。
それとな……
私のことは、忘れて下さい。
私のことを忘れて、次の恋を見付けて下さい。
いつか言ってくれたでな……
『みさとが最後の彼女だよ。絶対みさとと結婚して、幸せな家庭作るよ』って……
でも、私はおらんから、だからもう忘れていいんやで?
いつまでも縛られて健也が幸せになられへんのはいややもん。
きっと素敵な人が現れる。
だからもし、そんな人が見付かったらその人を幸せにしてあげて下さい。
健也は幸せになって……
私は幸せ者でした。
健也に沢山愛されて。
めっちゃ幸せや!!
ほんまにありがとう!
じゃあね……バイバイ…
みさと
――――――――――――
手紙と共に封筒の中には一枚の写真が入っていた。
それは一本のピンク色の花だった。
裏を見るとみさとの字が書かれていた。
健「…ダリア……花言葉…………感謝…………か……みさとらしいな………みさと……忘れる…なんて…できないよ……好きでいる時間が……あまりにも長すぎたみたい……もし…あの日俺がドタキャンしなきゃ…今君は隣に居てくれましたか…?」
写真を見て健也は堰を切ったように泣きじゃくった。
渇れるまで泣き続けた。
**********
8年後
「パパ~~!このおはな、なんていうの?おおきくてきれいだね!」
女の子は目を輝かせて背の高い花を見上げた。
「ん?みっちゃん、これはね、『ダリア』って言うお花だよ。」
「『ダリア』?」
「そう。パパが一番好きなお花だよ。花言葉はね…………」
「へぇ~!ママ!パパがだいすきなおはな、きれいだね!」
女の子は走って女性を連れて来た。
「そうね、『みさと』。花言葉は知ってるの?」
「かんしゃだよ!」
「よく知ってるわね!」
「えへへっ(ニカッ)」
女の子は得意気に笑った。
「帰るか。」
「そうね、みさと、ほら手繋いで。」
「うん!」
3人は幸せそうに手を繋いで夕焼けの中を歩いて行った。
今まで読んで頂いた皆様、ありがとうございました!
途中、更新が遅れましたこと、深くお詫び申し上げますm(_ _)m
駄文でしたが、感想などを頂けると嬉しいですo(^-^)o
ありがとうございました!