守りたいもの
楽しい時間はあっという間に過ぎた。
「お嬢様、お時間です」
振り返るとカリナが立っていた。
「もう?もう少しだけ遊んじゃだめ?」
「はい。それに今日は偵察に行ってきたヴァネッサ様たちのお帰りですので、身支度を整えていただきませんと」
「もう帰るのか?」と聞いてくるマルコスたちに「またね」と返して、私はカリナの裾を掴んだ。
「…わかった。でもその前にパパとママのところ行ってきていい?」
そう聞くとカリナは頷いた。
「もちろんです。付き添いましょうか?」
「ううん。大丈夫。カリナは先に準備してて」
「かしこまりました」
屋敷に戻るカリナを見送ってから、あたしは屋敷の裏にある山に登った。
「パパ、ママ_」
返事はしてくれなかった。
パパとママは人間に殺された。魔王だったパパは勇者に首を切り落とされて、ママは四肢を折られて生きたまま甕に入れられた。パパとママが殺されたのはちょうど四年前。
「昨日ぶりだね」
みんなが送ってくれた花に埋もれたパパとママのお墓が夕日に照らされている。
「今日はね、マルコスとアイリスたちと追いかけっこしたんだ。それでね」
お墓の隣に座り込んで、お墓に寄りかかる。
「ねえ、パパ。ママ。あたしね、みんなを守れるぐらい強くなるよ」
風がそっと吹いた。まるで応援してくれているように心地のいい風だ。
「人間なんかに負けないぐらいに強くなって、みんなと笑って暮らすんだ。……今ももちろん楽しよ。でもね、いつ人間が攻めてくるか分からないんだ」
パパとママが眠るお墓がある丘は、みんなが暮らしている土地が隅々まで見える。
木々が多い森にはエルフや天使、ドラゴニュートたちが住んでいる。その森の中にある洞窟にはリッチや悪魔がいて、栄えている所には吸血鬼やケンタウロスやデュラハンが生活している。
「あたしが、みんなを守る」
「だから、見守っててね。パパ。ママ」




