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麺龍

作者: 藤乃花
掲載日:2025/10/13

濃厚豚骨ラーメンストーリー、お待ち!

長きに渡り修行を続けてき半助はんすけはついに一人前のラーメン屋のマスターとして、自身の店を持つ事が許された。


『ラーメンが好き』という単純だが諦めない思いを持ち続け、どんなに厳しい修行にも耐えてきたのだ。


紅いTシャツの背中部分に書かれてある店名である『麺一メンイチ』の名に劣らぬ精神力を胸に、半助はんすけは今、新しい自身の店でラーメンを振る舞う資格を手に入れる事が出来た。


「店長……これまで自分を育ててくれて、どうも……ありがとうございましたあ‼」


「志を持ち続けて思い通りにならない時でも、決して歪まずひたすらラーメン作りのみに専念してきたからこそ、麺の星を掴む事が出来たんだ」


「店長の……おかげです」


「独り立ちする事というは、店の看板を背負うという事だ。

店を背負う役割を持つという事」


店長の言葉には重みが宿り、半助はんすけの内側へズシリ……とのしかかる。


「勿論、背負っていきます!

この『麺一メンイチ』の名にかけまして」


言葉を曲げるものかと、半助はんすけの情熱に満ちた瞳が意志を示している。


そんな半助はんすけの気持ちを読み取った店長は彼に歩み寄ると、手に握っている物を差し出した。


目に入ってきたのは小さく、そして虹色に光る楕円形をした物だった。


「店長……これ、まさか……!」


「伝説の『麺龍』の鱗を託す。

一人前の証だ」


「……!」


『麺龍』と云うのはラーメン業を営む実力者を守護する『ラーメンの守り神』である。


店長が半助はんすけに託すと決めた物は、まさにその『麺龍』の鱗だ。


ところが半助はんすけは首を横に降り、鱗の受け取りを拒否したのだ。


半助はんすけ……?」


「その鱗を落とした龍は、店長を選んだんです。

自分は鱗は持たずに、自分が自分の守護神になります」


(こんちきしょうが……分かっちゃいたが、やっぱり受け取らないか)


「鱗を受け取る代わりに、自分が作ったラーメンを振る舞わせて下さい!」


店を旅立つ前に半助はんすけが作る別れのラーメンで、鱗の受け取りをチャラにしようという考えだ。


「……ああ、この店で半助はんすけが最後に作るラーメン、心から味わおうじゃないか!」


「感謝致します。

厨房、借りますね」


「!」


半助はんすけの背後に龍の翼らしき欠片が見え、店長は目を凝らしたが、次に見た半助はんすけの姿は普通の青年でしかない。


(……麺龍、かもしれねえ。

だけど、おとこが一度差し出した物を、おさめられるか……ってんだ)


半助はんすけがラーメンを茹でている隙を見て、店長の手は彼の荷物の中に麺龍の鱗を忍ばせた。


店長の動きに半助はんすけ付かず、ラーメンの茹で具合を計っている。


(麺の茹で方、様になってんじゃねえか)


カウンター越しに見る弟子の姿に、店長は思わず涙腺が緩んできた。


(ん?)


手の中に手応えを感じた店長が手を開いて見ると、銀色に光る鱗があったのだ。


(さっきの翼、麺龍……やりやがって)


鱗を鱗で返された店長の唇の端が、やんちゃっぽくつり上がる。


店長の動きに半助はんすけは気付いていたのだ。


「へいお待ち!」


半助はんすけから別れの豚骨ラーメンがテーブルに出され、上りたつ湯気が店長の顔を覆い隠した。


実に美味しそうなラーメンだ。


「ん、いただこう!」


「たあっぷり味わって下さい。

さっきの鱗のお返しに、ね」


少年のように云いながら、半助はんすけの視線は荷物の中へと注がれている。


「こんちきしょうが!

粋な事しやがらあ!」


「ラーメンの味も、イタズラ心も譲れませんよ。

似た者マスターですから」


麺龍を背負っているのか、それとも半助はんすけ自身が麺龍なのか、謎だが分かるのは彼のラーメン未来は先が見えないくらい楽しいモノだという事だ。













豚骨スープとラーメン未来、先が見えないという共通点を見据えて書きました





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