生まれ変わり
中年男が消えた後、
エリカはまた1人になったと
寂しげな表情をした。
すると、エリカの体は光に包まれ、
空の上からハシゴがするすると降りてきた。
「あたしの役目も終わったのか」
そう言ってエリカは、
ハシゴにそっと手をかけた。
そのハシゴは男が行った時と同じように、
遙遠い雲に吸い込まれるように登っていった。
「ご苦労だった。
人の命の大切さ、分かったかな?」
少しはなれたところに座っている
白い着物を着た老人がそういった。
エリカは、一度この老人と会ったことがある。
自殺をした直後、エリカは雲の上にいて、
老人が歩いてきて、案内人を命じた。
「じいさん、わかったよ。
あのおっさんに会ってからね。
子猫なんかのために自分の命を
捨てちゃう人だっているんだね。
自殺なんかして、バカだったよ」
相変わらずのエリカの態度だったが、
命の大切さはきちんと学んでいた。
「では、転生させてやるとしよう」
老人は、ゆっくりと杖を振り上げた。
「じいさん・・・いや、神様。
あたし、あのおっさんの子供に生まれたい」
エリカのその言葉に、神様は頷いた。
そして、エリカはゆっくりと目を閉じた。
神様がゆっくり杖を振り下ろすと、
エリカの体は次第に小さくなり、
赤ちゃんとなってある女の体の中に
すっと入っていった。