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勇者の十字架  作者: 凪野 晴
第三章

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第52話 解放と覚醒

「おいおい、マジかよ、マジかよ。もう、致命傷だったのに。なんで復活してんだよ。俺、苦労を台無しにされるの、ほんとむかつくんだよな」


 エグゼンが、文句を垂れる。


「コード、三・五・一!」とリーゼ。


 それを聞いたヴィルヘルムは、両手剣を薙ぎ払った。エグゼンの分身が両手鎌で止めたのも構わず、力づくで振り抜く。その力で、分身はよろけた。


 隙を見逃さずに、ヴィルヘルムは大きく踏み込んで返すように横薙ぎに振った。両手鎌で防がれたが、脅威的な威力で分身をリーゼの方へ吹っ飛ばす。


 カタリナは本体を追うのやめ、自分を狙ってくる分身の斬撃を剣で弾いた。風の魔法で威力を強化した回し蹴りで、リーゼの方へ分身を蹴り飛ばす。


 コードの最初の三は、切り札の攻撃を行うという意味だ。敵をまとめて、リーゼが討つという合図だった。


「……私の焦がれる想いを、()()()()、知っていただきます」


 四体のエグゼンが、リーゼの周りに揃った瞬間だった。彼女の右手人差し指のルビーの指輪が、強く虹色に輝いた。


 二人のエグゼンの両手鎌によって、防御壁が砕け散った。だか、瞬く間にリーゼの周囲に七つの魔法陣が地面に展開される。それらを繋ぐように、大きく七芒星が描かれた。


 七つの魔法陣のそれぞれから、巨大な火柱が幾本も渦を巻くように湧きあがった。四体のエグゼンの分身はあっという間に、その炎に焼かれ、飛ばされながら炭になり、さらに灰になって散った。


 カタリナは、すぐに理解した。あの強烈な火柱は、クロスに逢いたいという想いが、ルビーの指輪から解放されたものなのだ。


 『眠れる宝石』が施されているとはいえ、あんなにも強烈な威力になるものなのだろうか。


 あ、待って。さっき、()()()()と言ってたような……。ということは、あれで全開でないの?


「待てよ、待てよ。いきなり四体はやめろって、あーもう、めんどくせぇ」


 そう言うと、本体からまた四体現れた。


 だが、それを見越していたヴィルヘルムは、瞬時に渾身の重たい一撃を放ち、両手鎌を粉砕し、その勢いのまま一体を葬る。


 カタリナも、素早い剣撃を二度、三度、与えて他の一体を倒した。


 そして、炎の柱が消える瞬間、レンが飛び出した。双剣が的確に一体を捉えて、首をはねる。


 だが、その隙を狙うように、もう一体の分身が背後からレンを襲った。


 しかし、レンは振り向かずに左手の剣を背に回して、両手鎌の斬撃をいなす。そして、振り向きざまに右手の剣で、分身の胴を斬り、振り上げた左手の剣で縦に真っ二つに斬った。


 残るは、本体のみ。


 すぐさま、レンは本体のエグゼンを捉える。一気に手数と威力が増した双剣の連撃に、エグゼンは押される。金属と金属がかち合う音、そして散る数多の火花。


 エグゼンは、両手鎌で防ぎ続ける。四体の分身は瞬時に倒されてしまった。防戦一方だった。


 おかしい。こいつはこんなに強かったか。四人の中で一番弱いから、真っ先に仕留めにかかったのに。これでは、まるで……。


 だが、この連撃もいつまでも続くわけではない。


 反撃で振り下ろした両手鎌に、レンの双剣が十字の形でぶつかる。両手鎌が砕け折れる。だが、レンの連撃が途絶えた。


 エグゼンはニヤッと笑った。一瞬あれば、四体の分身が出せる。即座に殺してやる。


 そう確信した瞬間、カタリナが放った矢が空気を切り裂いて飛んできた。的確に頭を狙ってくる。エグゼンは無理やり、かわした。


 その隙をつき、レンが本体のエグゼンをすり抜けると、幾多の斬撃の跡がエグゼンから浮かび上がり、血が吹き出した。


 エグゼンはその場に崩れるように倒れた。


 倒れたエグゼンに冷たい視線を向けながら、レンは言い放つ。


「命懸けでも足りねえよ、俺たちを止めるにはな」


 そして、レンは双剣を鞘に納めた。たった一人で、一気に三体を倒したのだった。


 カタリナは、一瞬見えたレンの心の色に驚愕していた。見たことない虹色に輝く様な色だった。


 *


 女神ヶ丘病院の会議室。


 クロスはここを借りて、メガネ型端末と指に付けた操作リングで仕事をしていた。小休止しようとしたところで、携帯端末にチャットが入った。育休中の同僚からだった。


A>やっと見つけた。


 その吹き出しともに、画像が開く。『天道院蓮てんどういんれん』のデータだった。スコアの値が、二万五千になっていた。


X>レン君がどうしたんだ? スコアが異常だ。


A>断片の所有者ってこと。四つに分けられた勇者の魂を持つ者の一人ってことだ。彼は今、向こうの世界だよね。何かがあって、覚醒した。


X>それは、勇者の四つあるスキルを何か一つ持っているってことだよな。スキルが何かは、わかるのか?


 クロスは、メガネ型端末でオプトシステムに接続して、レンのデータを閲覧してみた。スコアはこちらでは一万の表示。それ以上の値は表示されない。


 育休中の同僚は、システム管理者だ。クロスよりも上位の権限。隠された情報も閲覧可能だ。


A>『一敗不敗いっぱいふはい』つまり、一度負けた相手には、二度と負けない。まさにチートスキル。


X>そんなスキルがあるのか。でも、彼女と再会したがっているだけの青年だ。巻き込みたくはない。


A>無理だね。因果律は、運命は、彼を選んだ。それに他にも問題は山積みだ。バレないようにデータはマスクして偽装はしておく。他の五人に対してはムダかもしれないが。


X>六人じゃないのか。


A>一人死んだ。だから五人。では、また。


 その吹き出しを残して、チャットは終わった。クロスは、ため息をついた。オプトシステムを開発した七人のうち、一人が死んだ?


 心がざわつく。


 後追いで、もうひとつチャットが来た。


A>そうそう。これではっきりしてきた。厄災が早く出現したのは、おそらく勇者が向こうの世界に転生できていないからだ。


 クロスは、もう一度、深くため息をついた。大切なリーゼの顔を思い出していた。


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