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勇者の十字架  作者: 凪野 晴
第三章

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第49話 受け継ぐ想いをより強く

 ミュートロギア地方に入り、旅は進む。順調だった。馬車は、テルミヌスの村にもうすぐ着く。


「リーゼさん、お聞きしたいことがあるのですが」


 レンが、リーゼの顔を見て言った。


「何でしょうか?」


「なぜ、腐食の厄災が予言よりも一年以上早く発生したのか、その後、わかったのですか?」


 カタリナも、そのことは気になっていた。予言と大きくズレて厄災が発生していたのは、見過ごせない。


「……いいえ。わかっていません。そして、厄災を祓う勇者もまだ現れていないと思われます。本来であれば、今ぐらいに厄災が発生するはずでしたね」


 リーゼの心の色に嘘の灰色はない。そして、不安そうな顔だった。国を統治する立場であれば、当然だろう。


 テルミヌスの村に到着した。先に手紙で連絡をしていたそうだが、以前のことも村長は覚えていた様で、快く歓迎してくれた。四人がくつろぐための部屋が用意され、食事ももてなしてくれたのだった。


 お酒と食事を四人は楽しむ。地元の食材を使った料理は新鮮で風味があり、美味しかった。地元産のワインもだ。


「リーゼさんも、ヴィルヘルムさんも、お酒は強いのですか?」


 カタリナは、ほろ酔いの上機嫌と好奇心から聞く。


「弱い方ではないですね。ヴィルヘルムは底なしです」


 リーゼの返答に、ヴィルヘルムは快活に笑う。


「ミコトも呑める方です」とレン。


 リーゼとヴィルヘルムも同意のうなづきをする。


「じゃ、クロスさんだけパーティでは呑めなかったのですね。向こうの世界では、お酒は呑めないのか、いつもお茶やジュースでした」


 カタリナは、自ら見てきたことを話した。そして、ワインに口をつける。


「いや。クロス殿は酒は呑めるぞ。顔は赤くなりやすいが、このような場では、人並みに呑んでたぞ」


「あれ? どういうことでしょう?」


 カタリナは、首を傾げる。


 話を聞いていたリーゼが、何かを思い出したのか、ひとりくすくすと笑った。


「ヴィルヘルム、南の港町ナヴィポルトスでのこと、覚えてます?」


 そう言われて、ヴィルヘルムはあごに手をあてた。その後、豪快に笑った。


「そういうことか! クロス殿らしいな。わしは今、彼のために乾杯をしたくなりましたぞ」


 レンとカタリナは訳がわからなかった。だが、すぐにリーゼが嬉しそうに教えてくれた。


「その港町の酒場で呑んだ時、地酒が合わなかったのか、クロスは泥酔してしまったの」


「一部の宝石の『眠れる宝石』が解除され、暴走しそうになったことがあったんだぞ」


 ヴィルヘルムが続けた。


「……だから、彼は今、お酒を控えているのでしょう。王家の翡翠に施している『眠れる宝石』を誤って解除しないように」


 そう話すリーゼは、とても嬉しそうだった。心の色はもちろん嬉しさの黄色だ。


 カタリナは納得した。だから、歓迎会や飲み会でソフトドリンクを選び、さらにおつまみ選びも健康志向だったのか。風邪などにも、きっと気をつけていたに違いない。


 カタリナは、この場にきて、クロスの謎が解けたことに驚き、嬉しかった。そして同時に、あの人の覚悟は本物だったのだと理解できた。あらゆることに気を配っている。


「クロスさんの禁酒に、乾杯しましょう!」とカタリナは言った。


 四人は酒杯を掲げて乾杯する。そして、大いに喜んだのだった。


 明日には、ミュートロギアの神樹にたどり着く。ここまで準備してきたクロスたちの想いが叶わないはずはない。そう確信して、カタリナはその夜、眠りについた。


 *


 翌朝、馬車を使って四人はミュートロギアの神樹へと向かった。小一時間の旅路の後、馬車は丘にたどり着いた。


 ミコトさんが『符号反転』を放ち、聖なる神樹を成した場所だ。リーゼが教えてくれた。


 丘から、その聖なる神樹が見える。周りの木々すらも小さく見える巨大な樹だった。枝を四方八方に広げ、青々とした葉を茂らせている。空気がとても澄んでいた。


 カタリナは、この地に満たされている聖なる力を感じる。生まれ育ったエルフの森もその力が強い場だったが、同等かそれ以上だ。


 あとは、神樹の元に行き、王家の翡翠を掲げるだけだ。馬車を降りて、四人が向かおうとした時だった。後ろから声がした。


「おいおい、なんだよ、これ。ここに『腐食の厄災』が孵化してる頃だろ。なんでこんな気持ち悪いものが出来てんだよ」


 声の主は、肩までかかる銀髪に角を生やした魔族の男だった。宙に浮いている。魔法で飛んできたのだろうか。貴族の正装のような服装、背中に大きな鎌を背負っている。


 リーゼたちに気づき、降りてきた。

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