表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の十字架  作者: 凪野 晴
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/58

第47話 新しい四人

 オレンジ色のドレスに身を包み、亜麻色の長い髪の若い女性が入ってきた。その女性の後ろに、屈強な壮年の男性がついてくる。


「初めまして。リーゼ・マリア・レグナと申します」


 そう言うと、彼女は丁寧にお辞儀をした。


 カタリナもレンもお辞儀をし、自己紹介をする。


「カタリナ・オクトベルです。こちらは、テンドウイン・レンさんです」


「レンです。初めまして」


「ヴィルヘルム・バーナーだ。よろしく」


 カタリナは、少し困惑していた。リーゼの所作は丁寧だったが、心の色は怒りの赤色が見えるのだ。どういうことだろう。初対面で、怒りの色を見せる人は稀だ。


「あなたが、レンさんなのですね。以前、ミコトからいろいろとお話は聞いていました。ところで、カタリナさん。あなたはエルフのようですが、向こうの世界にもエルフはいらっしゃるのですか?」


「いいえ。私はこちらの世界の生まれで、ハーフエルフです。今は、向こうの世界にて転生・転移管理事務所で、職員をしています。職に就くために向こうの世界へ異世界転移しました。クロスさんの同僚になります」


 クロスの名を出した途端、リーゼの怒りの色が強くなった。


「レン殿を連れてきたということは、ミコトを取り戻す計画はご存知ということかな?」


 ヴィルヘルムが尋ねてきた。側にいるだけで、強者だと感じる気配だ。


「はい。クロスさんから聞いています。こちらの国で起きた出来事も」


 やはりクロスという言葉を聞くと、リーゼから赤い炎のような心の色がなびく。でも、丁寧な所作は変わらない。


「レンさんが、王家の翡翠をお持ちなのですか?」


 そう言われて、レンは、胸元から王家の翡翠を取り出した。虹色の輝きを見せる翡翠に、リーゼとヴィルヘルムは感心したようだった。


「……やっと」


 リーゼがつぶやき、翡翠を見つめていた。そして、柔らかい表情を見せた。


 だが、急にカタリナたちに尋ねてきた。


「……ところで、クロスは何故ここにいないのですか?」


 やはり怒っているようだ。彼女は真剣な顔だった。


 少しの沈黙が流れた。


「彼から聞いています」


 そして、カタリナは異世界転移する前に聞いていた段取りを、リーゼとヴィルヘルムに話す。レンもところどころ補足の説明をしてくれた。クロスがこちらに来れない理由を伝える。


「……わかりました」


 だが、リーゼの心の色は赤いままだ。凛とした印象のリーゼだったが、一瞬寂しそうな表情を見せた。それを見逃さなかったレンが伝える。


「リーゼさん、クロスさんはあなたに会いたがっています」


 カタリナは、レンの言葉を聞き、思う。そうなのだ。リーゼとクロスは、世界を隔てて会えないまま、かなりの月日が経っている。


 ミコトを取り戻しレンに再会させる目的とは言え、寂しい日々ではなかっただろうか。リーゼは、この場にクロスが来ると、ずっと期待していたのではないか。


 リーゼは、静かに窓の外の空を見ている。


 綺麗な人だ。そして、威厳と強さを感じさせつつも、周囲からはこの人を守らないといけないと思わせる何かがあった。それを弱さというべきかわからない。誰もが自分の宝物を丁寧に扱い同時に見惚れるように、リーゼにはそんな魅力があるように感じた。


「リーゼさんは、クロスさんとご結婚をされているのですよね?」


 カタリナは、以前、事務所で結婚していて単身赴任だという話を思い出し、先日聞いた異世界の冒険譚もふまえて、相手は当然リーゼだと思っていた。


 その言葉を聞いたリーゼは急に顔が赤くなった。それと同時に赤かった心の色は、喜びの黄色になっていく。 


「カタリナ殿。リーゼ様とクロス殿は、正しくは婚約という関係になると思うぞ」


「あれ? そうなのですか? クロスさんから結婚していて単身赴任だと聞いていたものですから」


 レンが、すかさず単身赴任とはどういうことかを補足してくれた。


 そして、クロスがややこしい説明を省きたくて、あの時はそう言ったのかと、カタリナは今、理解した。


 リーゼの顔は真っ赤で、ちょっとうつむいている。


 ああ、なるほど。ミコトが彼女をからかい、そして可愛がりたくなる気持ちがわかった。


「きちんと左手の薬指に指輪をしていましたから、てっきり」


 カタリナは、思わず追い撃ちをかける。


「ですね。それに、時々、その指輪を大切そうに眺めていました」


 レンも添える。


 二人の追撃にやられたリーゼは、うつむいたまま黙ってしまった。


 だが、心の色は嬉しさの黄色だった。よかった。少しだけ彼女の心を癒せたと思う。そして同時に、クロスにとって何か大いなる危機を救ったのだ。帰ったら、奢ってもらいたい。


「今日のところは、リーゼ様のお屋敷で休まれるといいだろう。手配しておく。我らは、まだ王城で務めがある」


 ヴィルヘルムが、助け舟を出したようだ。


「明日の昼前までには、またここを尋ねてきて欲しい。旅の支度は、こちらで用意しておく。午後には手筈通り、ミュートロギアの神樹へ向けて出発しよう」


 さらに、ヴィルヘルムが方針を示してくれた。


 カタリナとレンは王城を後にし、リーゼの屋敷にやっかいになり、その日は過ごした。だが、リーゼは王城から帰らなかったようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ