表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の十字架  作者: 凪野 晴
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/58

第46話 二人の異世界転移

「『眠れる宝石』を施した宝石と俺の指は、俺にしか見えない光る糸のようなものが結ばれることは話したね。転移する前に、異世界でリーゼのルビーの指輪やアイオライトの髪飾りなどに、『眠れる宝石』を使ったんだ。そして、今もスキルを使おうとすると、俺の手からは天に昇る光の糸が見えるんだ」


 カタリナは、クロスの言葉に耳を傾けていた。


「つまり、その光の糸は異世界まで繋がっている。たどらせて、翡翠から身体へミコトの魂を導くってことですね。きっと、クロスさんの手から、ぼくが持っている翡翠へも光の糸が伸びている」


 レンは、持っている翡翠に目をやって確認するように言った。


「ああ、そのとおりだ。だから、ミコトの魂が翡翠に宿ったら、こちらの世界の彼女の身体に魂を導く。レン君、申し訳ないけれど、これは俺にしかできない」


 レンは、理解を示すように、うなづいた。

 

 カタリナは、頭の中で役割を整理してみる。


 レンは、ミコトの魂を翡翠に取り戻すために適任。レンはスコアの都合で長期に異世界に転移できない。だから、その都合が影響されない転生・転移管理事務所の見習いになった。見習いは単独では異世界へ出張できない。同行者が必要。それがカタリナだ。クロスは、ミコトの魂をこちらの世界の身体に戻すために必要。異世界には行けない。


 ……無駄がない配置だった。クロスは、どれだけ準備してきたのだろう。カタリナが就職するよりも前からだ。リーゼの元を離れて、寂しいはずなのに。ずいぶんと時間をかけているのではないか。


「絶対、成功させないといけないですね!」


 カタリナは、思わず気合が入った声を出してしまった。


 ハーフエルフだからと、エルフの森で仲間外れにされていた日々をちょっと思い出す。でも、今は、自分を必要としてくれている人たちがいる。それだけで、力が湧いてくる。


「ああ、もちろん」


 クロスとレンも応じた。


「カタリナさんはこちらの世界に転移した時、向こうでの身体は魔法陣の中に封印されている。異世界転移の際に、その召喚魔法陣に身体も封印解除されて同化できるよ。こっちの世界では病院で管理が必要なのにな。向こうは便利だ」


 クロスさんは向こうの転生・転移管理についても、よく知ってそうだった。


 *


 月曜日。カタリナとレンは、十時前に女神ヶ丘病に着いた。クロスは転生・転移管理事務所の仕事があるため、ここにはいない。レンとカタリナの二人だった。


「先に会わせておいた方がいいと思って」


 レンは、ミコトの病室へ案内したいと言ってきた。


 カタリナは快諾する。この世界で眠ったままになってるミコトに会いたかったので、彼についていった。


 レンは時間が許す限り、ミコトの病室に通っていたという。いつも病室へ向かう廊下で、今日は起きているかもしれないと思っていたそうだ。その期待は毎回裏切られ、そして、病室で静かに寝ているミコトを見て、安心もしていたそうだ。ミコトが生きていることが、彼の希望でもあったのだ。


 ベッドの上で寝ているミコトは、髪が長く伸びていて、日に当たっていないせいか肌は白かった。話に聞いていた快活なイメージとは、かけ離れていた。でも、綺麗だった。


 レンはベッドの側にあったパイプ椅子に座り、ミコトの手を取った。後ろからなので彼の表情は見えない。


 レン自身、ミコトに会いたかったのだろう。二人きりにさせたくて、静かに病室を出た。この二人をちゃんと会わせてあげたい、と心底思ったのだった。



 十一時前までに病院で説明を受け、支度を整えた。二人はそれぞれ別のベッドに寝る。そして、いつの間にか静かに寝てしまった。


 *


 ふと目が覚めると、カタリナは魔法陣の上に立っていた。隣には、驚いた顔をしているレンがいた。異世界の景色を初めて見て、驚きを隠せないでいるようだった。


 カタリナは、身につけているものを確認する。森の騎士として授かった聖剣も腰にあった。戻ってきたのだ。背中には愛用していた弓もある。


「レン君、おはようかな? 王家の翡翠はある?」


「大丈夫です。王家の翡翠も印章もあります」


 魔法陣の上は、屋根がなく吹き抜けになっていた。周囲は魔法陣を保護するための壁があり、一箇所だけ通路になっていた。そこから出られるのだろう。二人はその通路を進む。


 通路の出口には建物が立っていて、門番がいた。二人の名前や異世界滞在期間を確認してきた。つまり、入国管理のような手続きをしたのだった。


 手続きが終わると、門番に王城への道を尋ねた。道を教えてもらったが、街中でひときわ高く建っている王城は、探す必要もないほど存在感があった。


 王城の正門にたどり着くと、持っていた印章が淡い緑色に輝く。聞いていたとおりだった。


 正門の衛兵に印章を見せ、自分たちの名前とリーゼ・マリア・レグナ様に会いにきたことを告げた。またクロス・マサトの名も添えた。衛兵はひどく驚き、困惑した様子だった。確認するために、ここの詰め所で待機してくださいと案内してきた。


 カタリナとレンは、しばらくその場で待っていたが、やがて身分の高そうな案内人が来て、王城の内部への導いてくれた。


 王城の来賓室に案内される。豪華な調度品が並んだ部屋だった。


 カタリナとレンは、用意された椅子に座って待っていると、ドアがノックされた。側にいた使用人がドアを丁寧に開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ