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勇者の十字架  作者: 凪野 晴
第二章

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第38話 彼女の覚悟

「あの黒い瘴気で強化されているんだよね」


 ミコトは、リーゼに確認した。


「そうです。普段であれば縄張りに入らない限り、魔物は襲ってこないものですが、あきらかに凶暴になっています」


 それを聞き、ミコトはうつむき、黙り込んだ。そして、短い髪を揺らしてから、顔を上げて言った。


「……だったらさ、()()()()()がある。あの黒い瘴気に対して『符号反転』を使う」


「な、何を言ってるんですか! あれは厄災そのもの」


 リーゼは、ミコトの言葉が信じられなかった。ミコトのスキル『符号反転』は効果があるかもしれない。でも、その対象はあまりに強大だ。


「無理です。今は何とか逃げられる方法を探しましょう」


 親友を危険に晒したくない、その一心で、リーゼは言いながら何か打開策をと思考を巡らせる。


「私一人じゃ無理。でもね、リーゼ。私を助けて。二人でならやれる。大丈夫」


 ミコトはそう言うと、大声で叫んだ。


「コード、四・三・一!」


 四は救護、回復の意味だ。そして、三はミコトを示す。一はリーゼだ。ミコトの回復をリーゼが行うという指示。


「リーゼ様、ミコトがやられたのか?」


 ヴィルヘルムが声を上げた。


「私は平気。これから、黒い瘴気、厄災に対して『符号反転』を使う」


 リーゼに代わって、ミコトが答える。


「バカな。無理だ。俺たちが足止めするから、二人だけでも逃げろ!」


 クロスは叫んだ。


「行動する()()があれば、世界は変えられるッ! いくよ、みんな!」


「その口癖は、覚悟じゃなくて、勇気だろ! ミコト、お前は元の世界に帰るんだろ。未来があるんだろ。ここで命を賭けるな!」


 クロスが、その想いを叫ぶと同時に……。


「『符号反転』、全開!!」


 ミコトは両手を前にかざし、黒い瘴気を睨んで、スキルを発動させた。


 魔物にまとわりついた黒い瘴気が反転し、次々と聖なる光に変わり魔物たちを弱体化させる。


 ヴィルヘルムの斬撃がことごとく魔物を屠っていく。クロスの雷撃も多数の魔物を仕留めていった。


 魔物にとって、瘴気にあてられて強化された状態、つまりプラスの状態だったのが、一気にマイナスへと反転し弱体化したのだ。


 厄災の黒い瘴気が退いていくにしたがって、劣勢だった状況が好転していく。


 だが、同時にミコトの魔力と体力は、どんどん減っていく。リーゼがミコトに寄り添い、回復魔法を全力でかけ続けている。


 そのリーゼの魔力も減っていった。厄災の瘴気は退いていくが、森一つを消し去ったほどの大きさだ。


「クロス、ルビーのスキルを解除して! 私の魔力を回復させて!」


 リーゼが叫んだ。


 即座に、クロスは解除する。ルビーの指輪に残っていた魔力がリーゼに注がれた。


「ヴィルヘルム、悪いがこの場を任せていいか? ミコトを回復し続けないと」


 それを聞いたヴィルヘルムは、応える。


「では、これも使え」


 そして、クロスにアイオライトの髪飾りを投げた。受け取ると、クロスはリーゼとミコトの元に駆け寄る。


 弱った魔物は、ヴィルヘルムが片付ける形となった。単身で多くの魔物を相手にしている。


 ミコトは、両手を前にかざしたまま、黒い瘴気に向かい合っていた。額には汗が滲み、呼吸も苦しそうだ。リーゼは、彼女を支えるようにして、回復魔法をかけ続けている。


 クロスは、アイオライトの髪飾りをリーゼに渡し、『眠れる宝石』を解除した。アイオライトの輝きは失われ、そこに残っていた魔力がリーゼに注がれていく。

 

 『符号反転』は、マイナスをプラスに無理やり変える力。


 厄災によって腐食した大地も、黒い瘴気が退くにつれて、元に戻っていく。それにつれて、黒い瘴気を目的に集まっていた魔物も離散していった。


「クロス、またお願い」とリーゼが懇願する。


 クロスは自分が持っていたアメジストの指輪のスキルを解除して、リーゼの魔力を回復させる。


 同心円上に広がっていた厄災の黒い瘴気は、その半径を狭めていき、視認できないくらい小さくなっていく。空にあった雷を伴う暗雲もいつの間にか消え去っていた。


「やりました、ミコト」


 リーゼは素直に喜んだ。魔物たちも、もういなくなっていた。ヴィルヘルムがこちらへと駆けつけてくる。


「……ごめん。まだ、終わってないの。……わかるでしょ。まだゼロに戻せただけ」


 ミコトは、苦しい表情のまま、そう告げた。


 『符号反転』は、マイナスをプラスに無理やり変える力。


 厄災の瘴気を消し去ったが、スキルの使用はまだ完了しない。『符号反転』のスキルは、容赦なくミコトの命を削り、奪おうとしていた。

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