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勇者の十字架  作者: 凪野 晴
第二章

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第29話 王女と騎士

 クロスは、マンガやアニメで見たファンタジーのシーンを思い出す。


 腰に携えていた剣を外し、片膝をついた。そして、両手で剣を捧げるように持った。リーゼが近寄り、その剣を受け取り、鞘から抜く。抜かれた鞘は、リーゼの横にいるミコトが預かった。


 リーゼは剣を掲げて、言った。


「クロス・マサトよ。汝は、リーゼ・マリア・レグナの騎士として、いついかなる時も主人を守り、主人の意志を尊重し、忠誠をここに誓うか?」


 クロスは、見上げる。リーゼと目が合った。見つめ合った。そして、頭を下げて、周りに伝わるように声を張り上げる。


「はい。クロス・マサトはその名において、リーゼ・マリア・レグナに忠誠を誓います」


 それを聞くとリーゼは右手で掲げていた剣を、クロスの左肩へと静かに触れるように下ろした。


 クロスは、その優しくも気高い感触に身が引き締まる。顔を上げて、リーゼを見つめた。


 ミコトとヴィルヘルムが拍手をした。クロスは正式にリーゼの騎士となり、パーティに加わったのだった。


 そして、クロスは、リーゼの持つ翡翠に、あらためて『眠れる宝石』で同じ魔法を施した。今度は加減を間違えないようにできた。


 *


「一度、王都レグナレットに戻ろうと思います」


 冒険者ギルド横の酒場で昼食を取った後、リーゼが今後の方針を示した。昼食のテーブルが、そのまま作戦会議の場となっていた。


「ヴィルヘルム、パーティメンバーが一人増えたことで戦い方や探索時の隊列などが変わりますね。お手数ですが、想定される場面における、最適な布陣などを検討しておいてください。四人になったことで作戦コードが変わるところもあるでしょう。それについても、素案を用意してください」


「御意」


「ミコト、クロスにパーティの作戦コードを教えておいてください。四人になったとしても変わらないところを中心に」


「任せて」


「クロス、私たちは冒険の際、自分たちにしかわからない作戦コードで、状況を共有したり、戦い方を変えます。その方が素早く状況に対応できるからです。きちんと憶えてくださいね」


「わかりました」


 クロスは、リーゼが連れ去れる際にミコトが叫んでいたことを思い出す。確か「コード九・一」だったか。それにしても、リーゼのリーダーシップは的確で優れていると感じた。王族は皆そうなのだろうか。


「あの、王都に戻る理由は何でしょうか?」とクロスは問う。


「いくつかあります。一つ目はこれまでの厄災に関する調査結果の報告。大した成果はないのですが。二つ目は昨晩の出来事に関しての牽制。まぁ、私が生還し健在であることを示します。向こうの計略が失敗したことのアピールですね。三つ目は……これについては、今はまだいいでしょう。私の個人的なことですから」


 リーゼが、凛とした態度で教えてくれた。


 リーダーとしての姿と昨晩の救出した時に震えていた姿の違いを見て、クロスは思う。きっと、どちらもリーゼの姿なのだろう。


「なので、本日の午後は、出立に向けて入用のものをこの街で揃えましょう。一泊して、明朝、王都へ出発です」


 リーゼの指示を聞いていた三人は、揃ってうなづいた。


 *


 翌朝、朝の八時の鐘が鳴った後、リーゼたちは雇った御者の馬車に乗り込み、王都へと旅立った。


 馬車の旅の中で、クロスはこの国についてやパーティの作戦コードなど基本的なことを学んだ。数日を要した旅だった。



 王都に着くと、リーゼの屋敷へと向かう。第三王女という身分なので、当然、王城にも彼女の部屋などはあるそうだ。だが、別宅となる屋敷の方が落ち着くとのことだった。



 屋敷で旅の疲れを癒した翌日、リーゼとヴィルヘルムは王城へ報告をしに行った。ミコトとクロスは屋敷で留守番となった。といっても、使用人などもいるので、不自由はしない。


 来賓がくつろぐ広い談話室で、ミコトとお茶を飲むことになった。床の絨毯や部屋に置かれている調度品は、どれも高そうだった。


 クロスは、ミコトに色々と聞いてみたいと思っていた。馬車や街中では聞きづらいことがある。先のリーゼ誘拐事件以降、クロスも周囲や会話に気をつけるようになっていたのもあって、機会を伺っていた。


「ミコト、聞きたいことがあるんだけど。ここなら、安全かなと思うので」


 ミコトから、パーティに入ったんだから、さん付けや敬語はやめてと要求されたのだが、いまだに慣れない。


「何? クロス君」


 ミコトは君付けのままなのはどうしてだろうと、クロスは思う。


「リーゼさんは、誰に命を狙われているんだ?」


 ちなみに、リーゼには、様付けはヴィルヘルムだけで十分と言われて、クロスは、さん付けを維持している。


「ここに来る旅路で教えたとおり、この国は代々女王が統治してきたのはわかるよね。で、現在、次の女王の候補が三人いるわけ。王位継承を有望視されている第一王女派、それを覆したい第二王女派、そして私たち第三王女派。第一王女派と第二王女派が強くて、第三王女派は厄災の調査という名の元、王城内での王位継承の政治的な争いから外されているんだ」


「なるほど。三人とも血が繋がった姉妹なんだろ? どうして争っているんだ?」


「父親が違うからね。それぞれ、娘を担いで権力を手にしたい思いがあるんだろうね」


「リーゼさんの父親も?」


 ミコトは首を振った。父親はすでに他界しているとのことだった。リーゼの境遇は、良くない様だ。


「それで、どっちにも狙われているってこと?」


「いや、過激なのは第二王女派。王位継承権を覆したいから、後方の憂いというか競合相手を減らしたいというか……。追い出しただけでは、安心していない様子なんだ」


「第一王女派はどう思っているんだ?」


「見て見ぬふりの様子だね。順調にいけば第一王女が王位継承だから、余計なことをしないって感じ」


 クロスは納得がいった。だから、ヴィルヘルムは見当がついていると言っていたのだ。そして、冒険先で命を落とさせる、つまり暗殺を計画したのなら、末端から王族にまでたどれる道なんて残すはずがない。


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