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勇者の十字架  作者: 凪野 晴
第一章

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第10話 無期限の育休

 普段の仕事は淡々とこなす事務処理なのに、それ以外では気になることが多いなとカタリナは感じていた。


 かなり特殊な仕事なのはわかる。その分、謎めいていることが多い。忙しい日常とこちらの世界を楽しむことで、普段は忘れがちだけれど。



 五月のゴールデンウィークは、暦通りに加えて特別休暇が一日をもらえた。


 クロスが言うには、連休の谷間は、審査結果の面接希望する申請者は少ないそうだ。だから、仕事を片付けておいてくれたのだ。


 カタリナは、先日聞いたオプトシステムのことを知りたいと思っていた。また、どうしてそのようなシステムが開発されたのかも聴きたかった。なんだか禁忌のものに人類が手を出してしまった様な不安を感じたから。


 クロスは「制御が可能となった」と言った時、心の色が揺らいでいた。いくつかの色が浮かび、混ざっていた。喜び、悲しみ、怒りだった。



 五月も下旬に入った頃だった。二人きりの会議での会話だ。


「やっと今年度の予算が承認された。なんでこんなに時間がかかるんだか」


 クロスが、やれやれといった仕草を両手でしながら言った。


「そんなに時間かかったんですか?」


「ああ、次年度予算の提出が一月だったんだぜ。いろんな部署に説明したり、追加資料を作らされたりで、今にいたる」


「お疲れ様でした。でも、お金が使えるってことですよね。何か新しく購入するんですか?」


「いや、お金はまだ使えない」


「はい? 予算が承認されたんですよね?」


「お金は確保できたが、それを使うためには今度、案件ごとに稟議をあげて、使い道について承認をもらわないといけないんだ」


 カタリナは聞いていて、ちょっと目まいがした。それでは使いたいタイミングを逃すのではないか。


「面倒なのは仕方ないさ。国民の税金をもって運営されているわけだし」


「でも、私たちの人件費というかお給料も税金からですよね。時間がかかるそういった手続きで税金を無駄にしている感覚ってないのでしょうか」


「ほんとだよな。俺も、余計なことをしている感覚は拭いきれない」


「で、確保した予算って何に使うんですか?」


 カタリナは、どんな物を購入するのか、気になった。ちょっとだけワクワクする。


「人員追加かな。もう一人くらい要員が欲しい。その分の人件費は確保できた。ここはもう一人在籍しているけど、育休中だから。だんだん知名度を得てきているためか、申請件数も増えているしね」


 増員の理由を示す資料を見せてくれた。申請件数は増加の一途。でも、要員は増えていない。とグラフなどで説明されている。


 今どき、残業すると税金泥棒だと非難される世の中だ。とはいえ、申請してから面接まで待たせている時間も、増加傾向だそうだ。サービスが悪いと言われないためにもということか。


 確かに今この事務所の運営は二人だ。育休中の方が復帰されたとしても三人。多くはない。


「育休中の方は、いつ復帰される予定なのですか?」


 カタリナは好奇心から聞いてみた。どんな人かも聞かされていないから。


「うーん。なんとも言えない。本人次第という感じだ」


「はい? えっと、一般的に、いつからいつまで育児休暇を取るって手続きをするのでは?」


「まぁ、普通ならそうだけどな。あいつは特別だからな。どんなに休んでもクビになることはないんじゃないかな」


 なんだその給料泥棒、いや税金泥棒。そんな人が許されていいのだろうか。カタリナの表情に出ていたのだろう、クロスが察して、笑いながら言う。


「あいつは、オプトシステムの開発に関わったプロジェクトメンバーの一人なんだ。で、そのシステムの保守。つまり何か障害や困ったことが起きた時に支援するという契約になっている。事務処理を行う要員ではないんだ。育休前は、面倒くさいと言いながら手伝ってはくれていたけれどね。オプトシステムは各国が使っている大規模なシステムであるけれど、開発に関わったのは七人。AIを駆使して構築しているから、少人数なプロジェクトだったらしい。そのうちの一人なんだ。超優秀」


「つまり、大事な要員なので特別扱いされていると言うことでしょうか」


 クロスは、首を縦に振ってくれた。


「そうなんだ。辞めてもらったら困ると思っている上の人たちが多い。他国に行ってもらっては困るしね。自由な訳だけど、育休中でもオプトシステムの監視はしてもらっている。まぁ、正確に言えば、多少のシステム障害が起きても自動で復旧するようになっているし、あいつが手を下すことはまずなくて、トラブル対応は自律型AIにさせているだろうね」


 カタリナは、やはりオプトシステムのことがより気になってきた。


「ああ、そういえば、前にオプトシステムのこと話そうと思って時間切れだったよな」


 ラッキーと、カタリナは思った。


「はい。そうですよ。今も話に出てきましたけど、オプトシステムが何をするものかわからないので、理解が進まないです」


「わかった。じゃ、明日にでも呑みに行こうか。そこで話そう」


 カタリナは、奢りですかとは聞かなかった。クロスが経費で処理するとしたら、それは税金なのではと思ってしまったからだ。税金泥棒に加担はしづらい。

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