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14 因縁の再会

 ロザリーの耳に、ジルヴァの低い声が響く。


「残念ながら魂が肉体を離れた時に、オフィーリアの祖国がかけた呪いは消えてしまったんだよ。生まれ変わったロザリーに、その呪いの片鱗は見つけられない。だがそうであれば、再びかけ直せばいいだけだ。アルフォンスはまた君に惹かれている。再びの絶望を味わわせてやろうじゃないか?」


 微笑むセオだが、ロザリーの首にかける手を緩めることはない。酸欠の思考は徐々に曖昧になっていく。


「さあ懇願しろロザリー! 助けを求め、私にひれ伏せ! 支配させてみせろ!」


 オフィーリアも、こんな扱いをされていたのだろうか。こんな思いをしたのだろうか。

 自分が無価値な物体になったような、こんな惨めさを――。


 苦しくてもがきながら、目からは涙が流れた。


 ――助けて。


 それだけしか考えられなかった。

 目の前にいるのはロザリーの救済者だ。彼に従えば救われる。なぜなら彼が、唯一の支配者だから――。


 破壊音がしたのは、その時だった。

 したのは音だけではない。実際に馬車の扉が壊され、半壊して地面に引きづられた。衝撃でロザリーは自分を取り戻す。

 ロザリーの上にいたセオは吹き飛ばされたかのように馬車の反対側に弾き飛ばされ、馬車の壁に体を打ち付けていた。


 ロザリーの目は、アルフォンスの姿を捉えた。馬に乗り、爆走する馬車に並走する。

 決死の表情で、彼はこれだけを叫んだ。


「手を伸ばせロザリー・ベルトレード!」


 迷いはなかった。

 恐怖もなかった。


 考えるよりも先に、ロザリーはアルフォンスに向かって手を伸ばす。途端、彼はロザリーを捕まえ、自らの馬に乗せる。


 馬車は勢いを緩めること無く直進し、遂には大木にぶつかり派手に崩壊した。

 ロザリーの体は、アルフォンスにがっちりと支えられていた。彼の前で馬に乗りながら、唖然とその光景を見つめていた。

 ロザリーは、その時になって自分がどこにいるのかを知る。街中を大きく外れた森の中だった。生ぬるい空気が包み、周囲は沼地から立ち込める霧が取り囲む。


 アルフォンスの体は熱いくらいだった。ロザリーを支えながらも彼の視線は壊れた馬車の破片に向けられている。ロザリーにしてもそうだった。


(セオさんはどうなったの? それに――)


 ジルヴァが消え去ったとも思えなかった。だってさっきから、全身が総毛立つほどの悪寒がしている。冷たい汗が背中を伝い、流れ落ちていった。


 静寂の中、アルフォンスが馬から降り、ロザリーのこともまた地面に降ろした。彼は告げる。


「どこかに隠れていろ。可能なら逃げろ」


 言うやいなや、腰から下げていた剣を引き抜き、馬車の残骸に向けて突進した。アルフォンスは右手で剣を握りながら、左手に魔術を帯び、間髪入れずに残骸めがけて発出した。

 途端に残骸が吹き飛ぶ。アルフォンスの放った魔術が当たったのではなく、防がれたためだとロザリーは気がついた。アルフォンスが乗っていた馬が、嗎をあげ怖気づいて逃げ出した。

 ロザリーはアルフォンスに言われたにも関わらず、隠れることも逃げることもできずにその光景を見つめていた。


 残骸の中から現れたのは、その体に傷一つないセオの姿だった。セオは木片を蹴り飛ばしながらアルフォンスに近づき、ジルヴァの声色で高笑いをした。

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