ゲンカクなルームメイト
最近、住み着いたルームメイトが話しかける。
「ジシバリの花が咲いてたよ」
「何それ?」
「メヒシバよ。こっちなら知ってるんじゃない?」
「知らない」
「よく見かける雑草あるでしょ? この時期、それに咲く花よ」
「最近、ここに来たばかりだから」
「そうなんだ。ちなみに花言葉は侵略者だよ。もう一つ花言葉あるんだけど……持ってこれたら良かったけどね。引っこ抜こうとしたけど今の私には無理だった」
「別に大丈夫。それにしても物知りなんだね」
「昔、この辺に住んでた時に調べたんだ。訳あって戻ってきたのよ」
「そっか」
「なつかしんじゃったんだよね。あっ! それどころじゃなかった。最近、この建物に変な奴がうろついてるから気を付けないと!」
「分かった」
「こっちに戻って来る途中ですれ違ったけど大丈夫だった?」
「窓から見えたけど大丈夫だよ。あっち行けって言ったし」
「絶対に声を掛けたらダメ! 不気味な奴らが多いこの世だから何かされてからじゃ遅いよっ!」
「ごめんっ。分かった」
「それと何があっても絶対に近づいたらダメ! 慣れてる私が追っ払っとくから」
「分かった」
「後、絶対に目を合わせたらダメ!」
「分かった」
「勘違いさせるのが一番怖いの! 心を許したと思われたら、一生ついてまわるから!」
「気を付ける」
「そうしなさい。アクセス禁止だよ。施錠が大切だから」
「いつも私の扉は閉まってるから大丈夫。開かないように対策してるし」
「それでも安心したらダメ! 隙を狙ってくるから! 心の戸締まりが一番大切なんだよ!」
「気を付ける」
「必要な鍵はしっかり管理してる? なくしたり壊れてない?」
「大丈夫だよ。お姉さんしか持ってないし」
「つかれてない?」
「つかれてなんかないよ」
「でも、しっかり英気を養うのよ。すぐ、つかれちゃうから。じゃあ、そろそろ私は外に出るけど」
「そっか、残念」
「私の言い付けをしっかりと守るのよっ!」
「分かってる」
「じゃあね、ココロ」
「またね、ナツカ」
鍵を差し込む音がし扉が開く。
「心桜さん、入るね」
「どうぞ。ナツカに会いました?」
「ん〜っ、私は見かけなかったかな」
「そっか、入れ違いか。いつもそうですね?」
「なかなか私は会えないみたい」
一瞬、お姉さんの表情が曇る。それに心桜は気付き訝しく思う。そして、じっと見る。
「どうかしました? 心桜さん」
「やっぱ何でもないです」
「お薬飲みましょうか?」
「はい」
白衣のお姉さんは、薬を飲み込むか確認している。