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分厚い眼鏡をかけ直し、去っていった、彼らをカウンター越しに見送ると席に戻り、元の仕事に執りかかった、暫くして、周りに人気が居なくなるのを確認すると、書類の山の中から、隠していた端末に、今しがた来た、傭兵の情報を送った。あの新型兵器について、間近にいた者と接触したと。返信は間髪入れず帰ってきた。次の指令を受取り、ゆっくり、離れていた同僚に近づき今日は早退すると告げ、そのまま、停めてあったスチームモービルに乗り込み、人気のないところに移動し、おもむろに、頭の髪の毛を引っ張りその白髪かかった髪の毛を剝ぎ取ると、ブロンドの長い髪が現れ、喉のしわがれた皮膚、音声帯変換機と共に、顔面のシミのかかった皮膚と一緒に同じく剥ぎ取ると、つややかな色の白い透き通る肌が現れ、コンタクトを外し、来ていた服を脱ぎ、胸を押さえていたパッドを外すと、たわわに実った南国フルーツそのものの胸が現れ、フウと一息つき。これを着けると、とっても胸が苦しいのよね、と言いながら。それらを後ろの座席に放り投げ、用意していた、ガーターベルトと、ミニスカート、ビスチェ、ブーツに着替え、ダッシュボードから、拳銃を取り出し、残弾を確認し、それを胸の谷間に隠すと、さて、と一言。ボイラーの圧力を上げ、その場を出発した。携帯端末の呼び出しが鳴ると、音声をスピーカーにした、子飼いのポリスから連絡があり、件の一行が、酒場食堂で大暴れしているとの事だった、手を出さず、動向を追尾する様指示し、その酒場食堂に向かった。
大暴れ、というにはその例えが可愛いくらい、その店は大いに破壊されていた。店主は、困った様子もなく、淡々と片付けをしていた。聞くと、お詫びにと置いて行ったクレジットが一桁間違ってると思うほどだったので、まったく支障はない、其れより、喧嘩を売った方が、可哀想な位再起不能にさせられていると言って、肩をすくめて後片付けに戻った。あの、超重力星の出身の者に喧嘩を売る方がどうかしてるんだと片付けながら、それでも憤りは隠せないで、捨てるように独り言とも取れるようつぶやいていた。
形式通り現場を整理していたポリスを呼び止め金貨を渡し、その一行の行先、と、行先のポリスに橋渡しする様言い付け、金貨を増して渡していくと一枚ごと目の輝きが増していくのを眺めながら、次の立ち寄り先を聞き出し、そちらの方に向かうことにした。
どうやら、話を纏めると、目星をつけていた通り、一行はあの新型次空振動弾にかなり深くかかわっているようであり、少女二人とその配下が一人、アンドロイドと傭兵は協議会に登録しているからすぐに身元は判明した。その少女の一組どうやら、どこかの滅ぼされた星系の王家の残党が、再興のため、あの新型兵器を使用した、と言ったところか。本部の情報が、あまりにも大雑把すぎて、いくら辺境の諜報員だとしてもに冷遇がすぎる。が、この大事件、本部の方でも、詳しい情報は、喉から手が出るほど、欲しがっているはずだ、出し抜いてこの機に手柄を立て、こんな辺境の諜報員なんて、冷や飯暮らしなんて、まっぴらだ、中央に返り咲いて部長、室長、局長、長官と上り詰めて、若いピチピチな学校出たての子を秘書として侍らして、ウハウハしてやる、この千載一遇のチャンスを、絶対ものにしてやる。と、スピードを出すためボイラーの圧力を上げて暫くすると、ガクンと言ったきり、動かなくなった。下りてみてみると、プロペラシャフトが、トルクに耐えきれず折れ曲がってしまった。地図を広げて見ると、ちょうど、目的地と、町の間で進むことも戻ることもできない。とりあえずジャッキアップして、スチームモービルの下に潜り込んだ。
侍女は薙刀をかたときも離さず、お姫様の傍から離れようとしなかった、当然と言えば当然だが、何か、粗相が無い様あくまでも従う、そして、守護する、それが目的の一つである。
あの白い布をあの傭兵が涙を拭うために差し出したとは言え、肌を見られ、白い布を渡した者がその添い遂げる相手だという掟。しかし、それは、掟を知っている者同士の事だ、その者同士のみ有効のはずだ、と、そう思っている。が、お姫様は、あの時から、見る目が、まったく違っており、女のその目になっている、男と言う者を知らず、女だらけの、後宮で、日夜、武芸に明け暮れていたが故に、純粋培養で、それの弊害ではあるが、平時ではそれが有効でありそれは、母星が母星であったから、成り立っていた。侍女はそれを危惧している、お姫様を頼まれたのだ。再興のため、それが、異星人の妻になるなんて、忠臣達に顔向けができない。傭兵の隣にずっとくっついているアンドロイドが、ヒューマノイドであれば、既婚者を理由にあきらめさせる事も可能であるが、いっそ、侍女自身が既成事実として、あの傭兵が白い布を渡す前に妻となっていたとすれば、そうだ、侍女自身も肌を見られたことだし組みしだいて肌を合わせたことも事実であり、これを理由に、自身が先にお手付きされたとすれば、言い訳として成り立つはずだ。そう思い彼女は行動した。
ここは風光明媚な、青い湖として、観光名所として、また、穴場的な避暑地の湖畔である。スチームモービルの応急修理をやっと終え、泥だらけのまま、やっと、一行に追いつき地元のポリスに鼻薬を嗅がせるため署のポリスが怪訝そうに対応するので、金貨を数枚渡すと、手の平を返すように態度が一変し、体の泥を落とす場所を借りる手配をさせ、さっぱりした頃に、衝立の向こうにいるポリスに、一行の立ち回り先と、署長を呼ぶように伝え衝立の向こうに金貨を指で弾いた。
やってきた署長には自分と、その一行のすることや、何があっても手を出さない事、出来れば、少女二人の身柄を拘束する様。そこまで言うと、ビスチェを締め上げ、衝立の向こうでは、お前は何ものだ、的なことを喚きだした、再び衝立の向こうに金貨を数枚投げて、ミニスカートを履き、ガーターベルトにとりかかった。罪状は適当にでっち上げればいい。と言うとまた喚き出したので、袋ごと放り投げた。途端に一切黙った。ロングブーツを履き、拳銃の残弾を確認し胸の谷間に押し込むと。衝立を片手で押し開き、袋の中の金貨の枚数を数えている者にスチームモービルの修理も命令して、その一行の滞在先を案内させた。
侍女は、何とか傭兵に近づこうと、傍に寄ったものの、番犬のごとく、傍について離れないアンドロイドが、本当に番犬の様に、近づいただけで、眼光鋭く睨んで、本当にグルルルルと聞こえてくるのではないかと言う位。大人の話になると思い、場所を変えようということになり二人と一体は部屋を出て行った。
禿とお姫様は、ポツンと部屋に残されて、初めのうちは物珍しく、久しぶりのフカフカのベッドで、はしゃいだり、珍しいアメニティーグッズを試したり、ルームツアーをしていたが、次第にすることが無くなり、外の青い湖が、夕暮れにになり湖そのものが、発光しだし、幻想的な風景を醸し出してはいるが、その風景を、風景として楽しむのは、彼女たちが、もう少し大人になるのを待たなくてはならない。こういったところではなにをしたらいいのか分からず、先程から部屋の中をグルグル回って、夕食までどうしようか、と会議の結果、温泉でとりあえず時間をつぶそうということになり、露天風呂に向かった。
湯帷子もないので、何もつけず髪飾りも外し、タオル一枚で二人が入ると、先客が一人、奥の方に人影がユラユラしてるのが、見えた。湯気で、辺りが真っ白で先の戦闘艦の一件が頭を過ぎり二人とも真っ赤になっていた。お互い真っ赤な顔を見合い、同じことを思っているのが分かると、どちらともなく笑い合っていた。すると、奥の人影が、旅の方ですかと、声をかけてきた。御若い方が珍しいですね、と続けた。急に声を掛けたことを詫び、どこからきて、どちらに行かれますか、自分は気ままな一人旅だとほかに、当り障りのない話題を2.3かわした後、最後に、この前の戦、大変だったでしょうと。声を掛け、するっと脱衣所に入っていった。禿と、お姫様は、目を合わせると。タオルで隠すこともせず、脱兎のごとく脱衣所に着替えに向かった。脱衣所には人影がなかったが、隠れていたのか、物陰から先程の女が出てきて、申し訳ありませんが、あの新型兵器の詳しい話を聞かせていただくため、身柄をお預かりします。と、声をかけてきた。振り向くと、胸に南国フルーツを実らせている素っ裸の女が立っていた。
場所をロビーに移したが、先程から、侍女と、アンドロイドの睨み合いは続いている。真ん中の傭兵は、文字通り小さくなっていた。侍女が我が母星では、未婚の女性が裸を見られた時の掟を、順々に話してヒューマンでないアンドロイドは論外であると告げると、アンドロイドはまさに掴みかかる勢いであった。
銃口を向けられたまま、固まっている状態で、何で私の周りには胸のデッカイ女性ばっかり居るんだろうと思いながら、禿は口を開いた、このままでは湯冷めするので、着替えさせてほしいと要求した。いいだろうと女は銃口を向けたまま言った。禿は、お姫様に目配せし、お姫様の着物を禿が、禿の着替えを、髪飾りを含め自然を装い互いに交換した。禿は確信した、どちらかが姫かそうでないか顔は割れていない、念の為交換しておいてよかった、少なくともお姫様の身代わりになれた。暗殺なら、とっくに殺している、身柄がほしいはずだ、しかもあの新型兵器の情報も含めてだと。
ロビーのソファーで傭兵は困惑の極みだった、人生の中で、想定の範囲を超えている事象で。確かにカノジョを作ろうと思っている、今もそうだ。だが、そう言った、つまり、一目惚れしたり、告白したり、デートしたりと、鉄板なベタなカノジョ作りを想像、妄想していたのに、それらを飛び越えて、いきなり妻を娶るなんて。想定外も良い所であった。
あの。と、お姫様の格好をした、禿は銃口を向けている女に声を掛けた。続けて、おばさんは着替えなくていいんですか?と。おばさん!とその女は口角を引きつりつつオウム返しに繰り返しに言い、初めて気が付いた様子で、あっ、と声に出さず、自分の姿を初めて認識し、慌ててお前たちジッとしてろよと、拳銃を近くのテーブルに置きイソイソ着替え始めた。禿は禿の格好をした、お姫様の目を見て、少し笑いそうになって、居ずまいを正すと失礼と言って、お姫様の着物の端を裂いて撚って蝶の形にして印と詠唱を奉り、式神を放った。
二人では狭いソファーでギュウギュウ傭兵の左腕に体全体を押し付けて、と言うか。擦り付ける勢いで、すり寄ったままだ。アンドロイドは、とにかく一歩も引かない覚悟で、侍女を睨んでいる。アンドロイドだろうが、ヒューマンだろうが、関係無い、後から来たくせに、お前みたいな、ちんちくりんな裸を見たところで、何の問題がある?私の方が、毎晩飽きさせない自信がある。と、これ以上、ここでは書けないような、伏字、伏せ音だらけの事を大声で宣っている。ここはロビー、係の者が飛んできて、お客様、当館では、あまり大声を発せられませんようと。当然である、大きな声で伏字はこまる。二人と一体は部屋に戻ることにした。
さあ、と言って拳銃に手を伸ばし、銃口を向けようとしたまま、女は固まった。蝶の形の式神が女の頭に貼りついたと同時に。禿は、慌てる様子もなく、改めて、お姫様と着物を交換し、頭の赤い髪飾りを付けながら、不思議そうに女を見ているお姫様に声を掛けた。そのお姉さんの意識は式神の支配下になっている状態で少なくとも、私たちが滞在している間は無意識で過ごすでしょう、試しに休日をゆっくりしなさいと声を掛けてみて下さい、と。お姫様がそう声を掛けると。女はハイ、と言って、拳銃の残弾を確認して胸の谷間に隠すと、蝶の式神が頭に貼りついたまま、脱衣所を出て行った。さあ、私たちもお部屋に戻りましょうと。禿とお姫様は脱衣所を後にした。
ロビーから戻ってきた傭兵と、侍女とアンドロイドは、お風呂上がりの少女二人を見て、なんだかこの部屋から出ていくときより、機嫌がよさそうな二人を見て、何かあったの?声を掛けると、二人は顔を見合わせ、クスッと笑って、何も。と答えた。
傭兵の一行がホテルを後にした数刻後。正気に戻った諜報員の女は慌てて、署に行き何も出番がなかったポリスの怪訝そうな態度をあえて無視し、足取りの情報を受取り、軌道エレベーターの駐機場に向けスチームモービルを走らせた。
今年最後に何とかもう一つエピソードを、と思い書きました。数ある物語の中、目を通して下さり本当にありがとうございます。




