-8.4
依頼主から、女性しかいないという事で舐めてかかって仕事を安請け合いした、一隻の野盗の艦が、停泊している白鯨に近付いてきた。
彼等の行末はその時点で終わっていた。
校長、副校長、教頭に頭中、と生徒会長が号令をかけると、少女たちは一斉に中央に敬礼をした、ゆっくりと校長、副校長、教頭が答礼し、掲げていた手をゆっくり戻すと、直れと生徒会長は号令をかけた。
ザッと、一斉に統制の取れた一連の動作に、校長は目を細め、表情は緩めはしなかったが、彼女達に全幅の信頼を寄せるように、その瞳の奥は優しかった。
続けて、生徒会長が女生徒に向け、静聴と言って、姿勢を正した。
生徒会長の数歩後ろには数千人の白いセーラー服を着た女学生が整然と寸分の狂い、いや、乱れなく整列していた。
同じくその声に反応し一斉に、ザッと、姿勢を正すその動作はまるで、寸分の狂いの無い、機械のパターンが一斉に変化するような、そう表現することが、それ以上の正確さであった。
生徒会長。
この幼年兵女学校の代表である彼女は、数千人といるこの学校の生徒代表であり、女生徒の中でも成績は言うに及ばず、その人格、その他全てにおいて最優秀の生徒の中から特に選出された唯一の生徒である。
その黒髪は腰まで伸びており、本来なら、兵学校に置いて長い髪は禁忌であるが、その黒い長い髪がその存在の特別性を物語っていた。
優秀が故に髪を伸ばすことが特権として与えられている。
彼女の後ろには、ジッと校長の訓辞を待っている女生徒がその眼差しを校長に向けたままだ。
彼女達は、この星の男たちが、戦艦や、空母と言った武器と共に供出された後の、この星の防衛を目的に、野盗共からこの星を守るため、結成設立された、次世代を担う下士官を養成する為の幼年兵女学校の生徒である。
彼女達は各地域、各地区より選出された、優秀な人材であり、そして日々その目的の為、弩級旗艦、通称白鯨に集いこれを練習艦とし日々鍛錬を重ねている。
微動だにしない女生徒に向け、校長、そしてこの星の元首であるツインテールの彼女は、女生徒を見回すと、凛とした声で。
この星の今の状況を述べ、
続いて、この国の、そして、この星の民が我々に多大な期待をしている事を努々忘れるな、そして、父や兄弟たちが帰って来ても些かも変わらない状態でいるよう。
そのために、諸君は日々血の滲むような訓練をしている。
父や兄たちの後顧の憂いが無い様一層奮起せねばならない。
話は変わるが、試験的ではあるが、傭兵を一人協力願った。
と、言うと、
傭兵と聞いて、女生徒たちは声には出さず、表情の変化は一切ないがないが、女生徒の間で空気が一瞬変わった。
それを察してか、続けて、
経緯を簡単に話し、あくまで、協力である、
学ぶべきところはある、
丁度、今からその傭兵が、旧艦数隻で野盗を駆逐する為、出撃する所だ。
皆は、この戦い方をよく学ぶように、と締めくくり、訓辞は終わった。
訓辞が終わり、女学生が解散し、隊舎に戻る中、一人生徒会長が校長、副校長、教頭の元に駆け寄った。
彼女達の前で立ち止り、姿勢を正し質問をしていいか、どうかの質問をした。
目上、黒い長い髪の彼女からすれば、校長など殿上人であり、直接口をきくなんて畏れ多く、質問などそれこそ、殿上人から聞かれるまですることなど以ての外な事である。
そこを、懲罰覚悟で、質問するだけの重大事と生徒会長は覚悟して、足を止めた校長に質問を投げかけた。
側にいた教頭は左テールを振り。
貴様、と。
近付く生徒会長を制した。
貴様、懲罰覚悟の行動だと知っての事か。
続けて言った。
生徒会長は直立不動で、再度質問の是非を問うた。
貴様、と教頭はサーベルに手をかけ抜き払い、刃を返し峰打ちの所作の入った。
校長は静かに教頭を制し、サーベルを納めさせ、質問があるのなら述べよと続けた、
生徒会長は正面を向き、通る声で、憤りを含んだ質問をした。
我々は、正規軍であり、嘱望された、下士官候補であり、誇りもある、それなのにどこの誰だか分からない一介の傭兵をたった一人、雇い、しかも我々に学ばさせるとは納得できません。
貴様の納得などどうでもよい。
と教頭が委員長の言葉が終わらない内に怒鳴った。
また、校長は制し、その質問に答えた。
校長、教頭、副校長を乗せたスチームモービルは敷地の中、煙をあげて出ていった。
その姿を、直立不動で見送り、その姿が見えなくなると、緊張を解いた。
踵を返し、隊舎に向け歩き出しながら、校長の言葉を反芻した。
曰く
我々に足りないものは実践である、教科書通りの戦場なんて存在しない、戦いは泥臭く汚いものだ、護とはそういう事だ、守り切らなければその骸を抱きかかえ一生後悔する。
だから、身を挺して戦っている彼の姿を、我が血肉にしなくてはならない、彼はあの新型次空振動弾事件の中心に居た数少ない傭兵と聞く。
あの事件を潜り抜ける、修羅場を潜り抜けてきた、それは学ぶべきことはあるのではないだろうか。
それに、矜持は大切だが、謙虚さがあってこそ、それは活かされる。
いずれにしても、そうやって、疑問を持つことはいい事だ、期待しているぞ。
その言葉が耳朶にいつまでも残っていた。
夕日に照らされた隊舎を見上げ、たなびく旗を見詰めそして歩き始めた。
隊舎の方から数人こちらに向かって走ってくる者がいた、よく見ると四人、一人はベリーショートで、刀を腰に差している、一人は黒い髪を三つ編みにし、オープンフィンガーグローブに両手両足にウエイトを巻いている。一人は二本の髪を触角の様に垂らしている。
最後の一人は長い髪で顔が隠れていて、ほとんどその表情は見えない、そして、引き摺る位の長いスカート。
彼女達は生徒会長を補佐する、通称四天王。
彼女達は生徒会長が直々に、懲罰覚悟で校長に質問をしていると聞きつけ、心配でやって来たのだった。
生徒会長に続く優秀者であるためそのいでたちに、異を唱えるものななかった。
心配かけたなと、駆け寄った四人に声を掛け、校長が言ったように出撃した傭兵のお手並み拝見と行こうじゃないかと、隊舎に向かって再び歩き出した。
駆け付けた四人は、お互い顔を見合わせ、委員長がそう仰るならと、
五人の夕日に照らされ伸びた影が一足先に隊舎に到着したのを見ながら後に続いた。
モニターには、戦場の実況の映像と、データが刻々と流れている。
傭兵の古い戦艦が縦横無尽に戦場を駆け巡っている。
データの諸元よりはるかにオーバーしている数字を叩き出している。
時間的に、女学生たちの課業が終わり、夕食、入浴が終わり広間に設置されている、数台のモニター前にそれぞれグループとなり、その様子を見ていた、
傭兵の出撃からずっと映像の記録は取っており、アーカイブも含め視聴していた。
戦艦一隻で敵中に突っ込む場面になると、一同はどよめいた。
後方にかなり離れたところに空母と重巡が配置されており、それもまた彼女達が今まで学んできたこと遥か外の考えだった。
入浴を済ませた生徒会長が濡れた髪をバスタオルで乾かしながら、モニターの前を通り過ぎようとすると、四天王の一人、三つ編みの女学生が、声を掛けた。
このシートが空いています、と言いながら、モニター正面の席に座っている女子をヒョイと片手で持ち上げ、違う席にすとんと置いた。
ササ、どうぞと言いながら、その席に誘い、周りにはなんか文句ある?と、無言の圧力をかけつつ、生徒会長にはにこやかな笑顔で、何かお飲み物でも持ってこさせますね、と言いながら先程片手で場所移動を強制的にさせられた女学生を睨みつけた。
瞬間、彼女は猛ダッシュで食堂に飛び込み、ありとあらゆる、飲み物をカートに乗せ猛ダッシュで三つ編みの所まで戻った。
ん、と三つ編みはカートと其の女学生を一瞥すると、生徒会長にはにこやかな笑顔でどれになさいますかと言いながら、コップを生徒会長の席に置いた。
モニターには次々と最新鋭の、少なくとも傭兵の駆っている戦艦より新造の艦が一隻、また一隻と撃沈されていくごとに、モニター数台に陣取っている女学生がオオと、どよめいていた。
目ざとく敵艦数隻が離れている空母や巡洋艦に向かうが、所詮戦線を離脱し、逃げ腰の状態で叶うべくもなくそれらも難なく撃沈していった。
もう、ほとんど、勝負がついたと、誰もが思った時、触角の髪の四天王が生徒会長の傍に滑り込み、耳元で何かを伝えた。
何、と一言。
そして、みんなを生徒会室へと言い、立ち上がった。
生徒会室では、髪で顔がほとんど見えない、スカートの長い女学生が先に待っていて、生徒会長、三つ編み、触角の髪、が同時に、遅れてベリーショートが刀を揺らし入って来た。
触角の髪が口火を切った、当直から緊急連絡があり、停泊している白鯨に近付く不審艦があるとの報、そして、いま、出撃している傭兵の後詰めの為、他の艦は出払っていて、白鯨が丸裸状態との事。
単騎で近付くなんて、諜報活動か、破壊工作。
ベリーショートが呻く。
破壊工作か何かですか。
顔が髪で隠れているロングスカートは続けた。
しかし破壊工作だと、隠密行動で、その行動が筒抜けはよっぽどの間抜けか、舐められているんだろう。
生徒会長は歯ぎしりしながら。
多分舐められてるんだろう。
オープンフィンガーグローブの拳同士を叩きつけ三つ編みは言った。
じゃあ目に物見せましょうか。
と、髪で顔が隠れたロングスカートは言った。
ゲハハハ、と品の無い笑い声は、むさい男だけの汚い艦内に響き渡った。
飲みかけの酒や、食べかけの得体の知れない腐った元食べ物。
脱ぎっぱなしの下着なのか、服なのか、雑巾なのか元が何だったのか判断に苦しむもの。
くしゃくしゃに丸めた何か、山盛りになったタバコの灰、その山が食べ物と飲み物の間に、山脈の様になっている。
洗濯物が配管と配管に渡したロープに無造作に引っ掛けていて、それがいつ乾かしたのか誰のものなのか分からない。
そして、壁には、婦女子にはお伝え出来ない様な、あられもない姿の女性のポスターが所狭しと張られ、しかも卑猥な言葉が延々と書かれている。
ダーツ板にはダーツの矢の代わりにナイフが突き刺さっていて、艦が揺れる度そのダーツ板はカンカンと壁を叩いている。
まあ、この艦に入っただけで、女性は妊娠してしまうのではないかという、殆どいかれた艦が白鯨に近付いていた。
品の無い笑い声の後、そいつは、どうせ女ばかりだろう、隠密迷彩なんてしなくてもあんな真っ白なバカでかい図体の艦の破壊工作なんか、まあ、朝飯前だ。
と、言い放つと。
まあ、そんなことより、あれだ。
と厭らしい笑顔になり、女ぁ、よりどりみどりらしいなぁゲハハハ。とタバコの吸い殻の山から吸えるタバコをゴソゴソ掻きだし吸い出した。
そうだ、そう聞いたからこの仕事引き受けたんだ、俺はぁ。
一斉に艦中に下品な笑い声はこだました。
ここでは書ききれない、下品で下衆な話で盛り上がっている艦は正面に白鯨を捕らえた。
捕らえたと言っても停泊中であって炉も落としている。
標的はデカく分かりやすいが、どこから手を付けたらいいか思いあぐねていた、破壊工作の依頼より、下衆な事で頭が一杯だったため、ろくに詳細を詰めず、行き当たりばったりでやって来た。
そんな奴らの事である、いいかげんに作戦も策定せず、どうせろくな抵抗もないだろうと高をくくり破壊装置を二つ抱え、灯りの係りと、リーダーだけで出発する事にした。
この辺だろうと艦橋らしいところに接舷して、取り敢えずここから入って適当に壊して、
後はお楽しみだ。
と、真っ暗な艦内を数人が入っていった。
後の残りは、汚い艦の中に残り、あーでもない、こーでもないと、頭ピンク色のむさい男のエロ談義に花を咲かせた頃、
ゲロ吐きそうと、汚い艦内に女の子の声が響き渡った。男たちは、一瞬動きが止まり、次の瞬間その声の方に殺到した。
ゲラゲラ笑っている艦内を隙間から見ているベリーショートと三つ編みは、壁とか配管に手をかけることは無かった、全てが薄汚くベトベトしているからだ。
しかも変な臭いが充満して、息をするのも苦しい位。
さっきから二人は鳥肌が立ちっぱなしで、それを通り過ぎて悪寒がする位。
そしてその男たちが話している内容も、品性も何もあったものでは無い下衆な内容だった、三つ編みはたまらずゲロ吐きそうとそれこそ吐くように大声で怒鳴った。
一斉に男たちは、その声の主に会うため声にならない声をあげながら飛びかかった。
この、と言いながら一番先に到達した男の鳩尾を突き抜ける勢いで拳を叩きこんだのは三つ編み。
それを、踏み台にして、上から襲い掛かってきた男を、剣で薙ぎ払った、ベリーショートの剣は刃引きで、正規の戦以外は真剣の帯刀は認められていない。
その為、普段は刃引きの剣を帯刀している。
頭を勝ち割られたそいつはもんどりうって、ゴロゴロのたうち回っていた。
最初の一撃づつで戦闘不能となった二人を見て、オイオイ話が違うぞ、とゴソゴソ怯みながら話し合っていた。
それでも、相手は女の子、なあに、数で抑え込んだらこっちのもんだ。
と言いながら。もう一度一斉に飛びかかった。
白鯨の艦内はメインを落としているので真っ暗で、非常灯が等間隔で点いているだけである。
後尾には巨大な破壊装置を持った男二人、そして、先頭は灯りを持った一人、そして、リーダーと思われる男が一人真ん中にいる、真っ暗で、足元もおぼつかない彼等であるが、エロ話で異様に盛り上がっていて、特に後先考えていないようだった。
とにかく適当な所にこの破壊装置を設置して、後は楽しもうぜ、とかなんとか盛り上がりながら、進んでいると、ここでもゲロ吐きそうと女の子の声が艦内にこだました。
生徒会長はげんなりしていた。
男に対する見方が180度変わりつつあった、委員長が知っている男性像は、父や兄を見て育ってきたので、日々どれだけ武士として己を律し、己を鍛え、弱きものを助け、曲がったことは絶対しないといったザ・男を刷り込まれていた。
だから、男の本性ってこんなに下品なのかと失望していた、いやいや、こいつらだけが特別なだけで、と思っていたが、一つだけ心当たりと言うか、それに近い感情を持ったことが思い起こされた。
それは一度だけ、兄に対してだ。
以前まだこんな世界になる前のある日、兄の本棚で女の人の裸の写真集を見つけた時だった。
問い詰めると、友達に無理やり押し付けられたとかなんとか。
それから暫くは兄と口をきかなかった。
兄を何だか、違う生き物のように思ってしまっていた。
そんな私たちを母は見かねたのか、私に男って何たるかをやんわり諭した。
納得はしなかったけど、飲み込んだといった感だ。
今でもその一点だけは、何だかモヤモヤしている。
そんなこともあって、聞くに堪えない事を、私たちの大切な白鯨の中でするなんて。
たまらずゲロ吐きそうと、大声で怒りを込めて、叫んだ。
白鯨の艦内はその声がこだまし、その声の主を灯りを持った先頭の男は、あちこちに照らしながら探していた。
もう下品な話はこの艦では止めてもらえますか。と言いながら、生徒会長は真ん中のリーダー格の男に六尺棒の先を槍の様に叩き込んだ。
同時に、灯りを持っている先頭の男は、懐から照明弾を取りだし、天井に数発打ち付けた。
天井に食い込んだそれは発光し、辺りを皓皓と照らし出した。
リーダー格の男に六尺棒を打ち付けが、男はガッと棒を掴むと、お嬢ちゃんそいつは効かねえな。
と言いながら放そうとしない。
こいつ、と言いながら振りほどこうとすると、目の前に一瞬で間合いを詰めてきた。
瞬間、詠唱が聞えたかと思うと、その男は壁に叩きつけられた。
生徒会長大丈夫ですか?と触角の髪の毛の四天王が言った。
魔法陣を形成してこいつらを封じ込めます、そう言って魔法陣を形成しだした。
が、その時灯りを持っていた先頭の男は触角に飛びかかった、すかさず生徒会長の六尺で叩き落としたが、踏み込みが甘かったのか効いていないようだった。
その時ハッと気づいた、今までの鍛錬は確かに厳しいそして、全力でやって来た。
だが全て女、特に同じ年代前後の女子相手だった。
こんな、成人男性と手合わせは皆無に等しい、しかも、今は試合でも何でもない、下手したら命を落とすこともありうる。
実践だ。
男はもう一度起き上がり、リーダー格と、灯りの奴がにじり寄って来た、スッと髪の長い顔が見えないロングスカートの四天王が前に出てきた。
いつの間に、と思っていると、生徒会長と触角の前に立ち、男二人に向かって長いスカートをたくし上げ始めた。
おお、と男二人はその動作に厭らしい何とも言えない歓びの顔をしたかと思うと、その顔はみるみる恐怖に怯えた、いや、恐怖そのものの顔となりやがて生気を失った魂の抜けた、ただ立っているだけの人型の人形の様になった。
フラフラ立っているだけのそれに、破壊装置を持っていた二人が近づき、何やらしっかりしろだのなんだと、揺さぶりながら声を掛けるが、何も感じないのか、ただ揺らされているだけの状態となり、時折ヘラヘラ笑っているだけだった。
埒が明かないと見たのか、持っている破壊装置を起動しその辺に打ち投げてそそくさと逃げ出した。
逃げ出したそいつらの後ろへ、触角の起動した魔法陣で四人を艦外に弾き飛ばした。
起動している破壊装置の傍に髪で顔を隠したロングスカートは、そのロングスカートの中にその二つの破壊装置に跨り隠した。
そして、そそくさと逃げていった四人の行く先の、男たちが乗って来たであろう敵艦を指さした。
汚い艦の中では男たちが芋虫の様にのたうち回っていた。腕をへし折られた者、頭を割られた者、足が反対に向いたもの。あばらが全部粉々になった者。とにかく、普通に動けるものは、魔法陣で吹き飛ばされた四人が這う這うの体でやって来た者たちだけだった。
ベリーショートの剣士と三つ編みの格闘士を見ると、二人は手を上げ降参だ、直ぐ出ていく、降参だと言いながら、気の抜けた二人を艦の中に押し込み。
聞いた話と違うじゃねえか、畜生、金ははずんでもらわねえと割に合わねえ、とかなんとか叫びながら。
彼女達に一瞥もせずそそくさと、エンジンを始動し白鯨を離れた。
暫くしてその汚い艦は小さく離れ、小さくなって点になった頃、一瞬閃光が走り。
無くなった。
白鯨の中では、生徒会長が髪で顔が見えないロングスカートの四天王に、あの破壊装置は?と聞くと。
もう一度、汚い艦を指さし、あいつらに返した。と一言言った。
後日、生徒会長が校長に白鯨破壊未遂事件の報告をして、その帰り際、校長に呼び止められ傭兵の起用の話になった。
生徒会長は、何だか校長のお考えが分かったような気がします。と、付け加えた。
校長は、一言そうかと言って、少し笑ってたような気がした。
報告が終わり、校長室に入れ違いで、男性が入って来た。
あくまでもここは女学校、男子禁制のはず。
そう思っていると、ぶつかってしまった。
不意だったので、よろけてしまい倒れそうになった。
おッと、と言いながらその人は私を倒れないよう抱えた。
厚いガッチリした胸板。
え。
と思っていると、男の人の隣にいた、手には薙刀を持っている民族衣装の着物を着た女性が、ごめんね、うちの夫がと言いながら、気遣ってくれた。
奥さんが居るんだ、と彼を見た時。
初めて会った男の人なのに。
それなのに、年はオジサンなのに。
トゥンクと心の奥で何かが動いた。
その男の人は、夫じゃないと全否定してた様な気がするけど、ほとんど耳には入ってこなかった。
目を通して下さりいつもありがとうございます。書いているうちに長くなり、申し訳ありません。秋の夜長のひと時、読んで下されば大変ありがたく存じます。




