-8中編
戦艦を駆って、敵陣に飛び込んだ。
侍女がコクピットの通信席に座っている。
視線がかなり痛い。
あの時、俺とツインテールの元首が抱き合っていたのを目撃、というか正面でガン見された時から、だ。
同時に我に返った俺は抱きつかれている状況を理解し彼女を引き剥がそうとしたが、時遅く。
瞬間、疾風のように俺の鼻頭に掌底が飛び込んできた。
そこから、鼻血が止まらない、掌底と、元首に抱き付かれていた事と両方の理由だろう。
この戦い、この征伐戦の前。
国家元首の3人からこの髪を左サイドデールにしている三女から、一度お手並み拝見、出来るだろうか、と申し入れがあった、どうやら、俺達に懐疑的な意見は本当の様だ。
長女のツインテールの元首は、失礼であるぞ、手助けを、助太刀をお願いしているこちらの立場もあろう、と言ってくれた。
執務室での出来事は無かったかのような振る舞いは、その立場を考えると当然だと思い気にしていない素振りをした。
左サイドテールの彼女は続けて。この国を守るのに、傭兵の、しかも此度の枢軸、帝国の急激な同盟政変で、銀河の流れはどうなるか分からない。
その状態で、パワーバランスの微妙な状態で。
傭兵の、しかも元枢軸帝国側の敵方と言っていいほどの傭兵を使うのはやはり、いかがかであろうか。と言うものであった。
そこで、右サイドテールの次女からそれでは一度、力試しをしてはどうかと提案をしてくれた。どうやら、彼女は元首寄りの様だ。
改めて見ると、新型の艦がほとんど無く全て供出させられていた。よって旧型のしかも戦力均衡の条約発効前の艦ばかりだ。
その中で俺が駆って出撃できるのは、一番古い戦艦一隻と、重巡二隻、駆逐艦三隻ほどで、提案された。
俺は、特に異存はなくむしろ証明できるその方が都合がよかった。
丁度悪党、野盗連中の動きが活発になってきたので、先手を打ってこちらから打って出る事となり、件の陣容で出撃した。
そして敵陣に飛び込んだ。
野盗、悪党の艦の型は、改装していても元々近衛団の物であったり、枢軸、帝国の艦であることは、癖と言うか設計思想が反映されるから、分かる。
後は鹵獲した物だろう同盟や連盟の艦も同じ様に改装して、混じっていた。
主砲の光跡が、敵の艦の正面に吸い込まれ、そしてその光が四散し、艦を弾けさせた。
やってくる攻撃機は、随行している重巡、駆逐艦に任せ、もう一度敵艦の間に割って入るように突っ込んだ。
味方の同士討ちを避けるため、随行しているその他の艦は自分たちの身を守ることに専念させ、少ない戦力の損耗を避けるように指示している。
古代艦隊戦の方法にならい、衝角戦と呼ばれる戦い方を参考にしている。
ゼロ距離まで敵艦の距離を詰めて、主砲を撃ち込む、そして離脱。
周りは敵だけしかいない、撃てば当たる。
敵はこちらを撃とうとしても、密集している。
外れれば同士討ちの危険がある。
野盗ごときに正確な射撃は出来るはずがない、と踏んでの事だ。
案の定、敵は中々攻撃できない状態でいた。
その間少しずつ、相手の戦力を確実に削いでいった。
相手は野盗、悪党だ、勝ち目がなければ早々に引き上げるはず。
奴らは自分が痛い目に合うのを極端に嫌がる、勝たなければ儲けが無いからだ。
仲間、手下を食わせていかなければならない、儲けが無い所には当然、人が集まらない、そうなれば偉そうに一団を纏めることも出来なくなり、やがて消えていく運命となる。
だから、出来るだけ最小の損耗で、最大の利益を出したいところだ、だから相手が自分より弱いとみると、確実に狩りに来る。
そこがねらい目だ、寄って来て、群がってもらう方がこちらとしてはありがたい、主砲、通常弾、炸裂、榴弾など、打てば向こうから当りに来てくれる。
一隻、また一隻と確実に仕留めにかかった。
分が悪いと、圏外で待機している重巡、駆逐艦に目標を変えた艦は数隻いたようだが、防御陣形でガッチリ構えられた正規軍にかなうはずもなく、一隻一隻と粉々になり、戦力は無くなって行った。
そのうち、こちら一隻を相手していて、これだけの損害は割に合わないと思ったのだろう、粉々になった僚艦を尻目にして、暫くすると、徐々に1隻1隻と戦線を離脱し始めやがて、最後の戦艦が座標から消えそうになっていた。
最後にその大型戦艦が殿に居たので行き掛けの駄賃とばかりに全速力で追いすがり主砲で撃沈した。
最新鋭に近い新型艦が何世代もの前の戦艦に沈められるのは、多分訳が分からないはずだ。
作戦は終了した。
離れていた僚艦を纏めて、帰路に就こうとしたが、戦線の外れまで来てしまっていた。
周りには、先程の新型艦の残骸があった。
その粉々になった残骸の向こうに大きな衛星を繋いだ人工物のリングがモニターに映し出された。
あれが、次空間転移ゲート。
俺と、侍女は同じものを見て同じく呟いた。
知らぬ間に、俺の鼻血は止まっていた。
目を通して、読んでいただきいつもありがとうございます。




