-8前編
諸元表を睨んでいた、大型戦艦1、戦艦2、重巡4、駆逐艦5、正規空母1、軽空母2、いずれも旧型、かなり古い型だ。
もう一度、それぞれの設計図、構造図、動力、射撃、航続性能、搭載火器の種類の資料をテーブル一面に広げ、それこそ穴が開くほど睨んでいた。
そこで、これは、とある事に気が付いた。
と同時に、エアロックが開き、侍女がワゴンにポットや、食器、食べ物を乗せ入ってきた。
食器や、ポットがカートが進むにつれ、カチャカチャとお互い当たる音が心地いいほどの音を奏でながら。
休憩されませんか、と侍女はカートのロックをかけながら言った。
カップに飲み物を注ぎながら、何か食されますか?簡単な物を作ってきました。
と湯気の立ったカップを俺に差し出しながら。侍女は言った。
ワゴンを見ると、皿の上にこれも出来たばかりだろう、食指が動くようなものが湯気を立てて並んでいる。
そう言えば、と空腹に初めて気が付きじゃあ遠慮なく、と。
ワゴンから、テーブルの上に並べられたそれらを食べだした、食べながらでも、諸元表などの資料に目をやりながら食べていると、侍女が、何かをしながら食べるなんて行儀が悪いと思いませんか。と。
そう言った侍女を見ると、少しプッと怒ったようなふくれっ面で睨んでいた。
女子が作ったものはそれに集中して食べる。
そして、味はどうあれ美味しい、って言う。
それは鉄則ですよ、とふくれっ面から少し笑った笑顔を作った。
えっ、あっ、ハイ。
と、昔小さい頃、何をしてだろうか、どこかで叱られた時のシーンが思い起こされた。
叱られたと言っても、その後に何か温かいものが込み上げてきたような、どこか懐かしい。
少し可笑しくなって笑ってしまった。
笑っている俺を見ながらキョトンとしている侍女を横目に食べることを続けた。
また、エアロックが開き髪を左右に結わえた彼女が入って来て、少し時間を頂けるかしらと。
侍女も一緒に席を立ちあがったが、彼女、元首は彼だけでお願いと、俺を執務室に誘った。
国家元首ともなるとさぞかし豪奢と思って、執務室の中に入って驚いたのだがほとんど、装飾品らしいものが無く、そこらにある事務机一式、そしてソファー一式。
無機質にそれらはあった。
壁には、この星の地図、出征しているであろう年配の軍服を着た男性と、俺くらいの同じく軍服を着た男の写真が二枚の上に飾られていた。
その一つの、年配の男性の写真を手に持ち眺めながら、
父です、そしてこちらは兄です、と視線をそちらに向けていった。
エアロックの向こうには、警備兵が二人だけといった、あまりに質素と言ったら聞こえはいいが。そんなにお金をかけるだけの裕福な部類の星ではないのだろう。
写真を棚に戻し、貴殿、そなたをこの星に亡命してきた者の意見を取り入れ、ほとんど、家臣と同等の扱いをしています。
そのことについてですが。
俺は、
多分、現職の奴ら、いや、人たちが、どこの馬の骨とも分からない人間をそんなに重用して、といった具合だろう。と。
彼女は、視線を写真に向けたまま。
そうです、三女、が特に懐疑的で、傭兵ごときに、と、ここまで言って。ごめんなさい。と断りを入れてはなしを続けた。
いや、と俺はかぶりを振って気にしていない意思を見せ、誰だってそう思うよ、と。
ただでさえ、少ない戦力、割けることなんてできるわけない、元々いた忠臣を蔑ろにすることは黙ってられない、とかいろいろ。
そして、一番厳しい意見だったのは、残された艦艇が練習艦白鯨の他は何世代も昔の旧型艦ばかりだという事。
もしかしたら、見捨てられたのではという。
俺は頭を掻きながら、そういう事ひっくるめてこの際だからと、色々な不満を、俺と言うものが来たから俺をやり玉に挙げているんだろう。
ええ。
三人は姉妹なのか?
ええ。
だから、逆に良かったんだよ、そうやって、意見を言ってくれる人間が側にいることが。
どういう?
つまり、現場の不満とかを聞いてくれる人間が不満側、ここで言う三女がいて、それを直接上にあげることが出来る、そうすることで、自分たちの意見が、少なくとも上部に通っていると実感出来る、それである程度ガス抜きは出来る、一番悪いのは燻る事。それがおおきければ大きいほど、だ。
続けて、
もっとも、意見が通る通らないは別だが。
それほど、聞いてもらえることは、大事、だと思う。
彼女は、ポカンとしていたが、段々顔が紅潮していくのが分かった。
少しえっ、と思いながら話を続けた。
それに対して、どう答えるかは今度はこっちサイドの問題だ。いま、ここに在る艦隊の諸元表を見ていたんだが、御父上と兄上はすごいものを残され、託された。
どういった事でしょう。
俺は。
一度、この俺に戦艦一隻貸してもらえれば、証明できる、貴女の判断が間違っていない事、俺が馬の骨じゃない事。そして何より、見捨てた訳でなく父上や兄上の誤解を解く事。を
しかも、貴女一人。大変だったんじゃないか?貴女は見たところ俺よりも若い。学校で勉強している歳だと言っても不思議じゃない。
続けて俺は言った。
好むと好まざるに置いて、自分の意思と関係なく理不尽にも、周りの運命と言うものに振り回されてしまう。
自分では本当にどうする事も出来ない、ただ抗う、そう、抗う事でしか、自分が自分であることを証明できない。
棚に飾ってある写真の二人を見ながら。
俺に任せろ。
と、ここまで話すと、いきなり彼女が走り寄って来てドンと抱き付き、お願いします、お願いします、と。涙声で言ってきた。
俺より年下と思われる、女の子が、確かに姉妹達は居るが、でも実質たった一人にこの星の一切を任されるプレッシャー、孤独との戦い。
それらを慮るのが先に立っていてこの抱きつかれている、この状況を冷静に分析できたのは、帰りが遅い俺を気遣い、迎えにやって来た侍女にこの状況を見られてからだった。
目を通していただき、読んでいただき誠にありがとうございます。
特に何々編とかは特に決めてませんが「白鯨編」とでも言いましょうか。
また、お付き合いいただければ幸いです。




