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-6.3

 エンジンの暖気はある程度済ませ、メインエンジンに点火するだけになった。

 直掩機で出撃。

 格納庫から、発進すると、戦闘艦は間を置かず眼下の者になった。

 後部砲塔座では、ブロンドが、射撃準備に取りかかっていた。

 彼女の射撃精度は特筆するものがあった。

 先の補給線キャンペーンの時、向かってくる敵機をことごとく打ち払った腕前は、私のそれ以上だった。

 彼女自身、どこか、自分に自信がないというか、何か影がある。

 ただ、禿(かむろ)や、御姫様(おひいさま)にはなぜか、受けがいい、幼く見えるせいか、長年の友達の様に見え、その時は、本当に楽しそうだった。

 その影を打ち消すように。


 要塞から、迎撃機が出張ってきた。

 こちらの戦闘艦には手出しさせないことはもちろんの事、何隻か重巡くらいは数隻沈めたい。


 後部座席にいるブロンドから、伝声管を伝い、ありがとうとお礼の言葉が送られた。

 自分のこれまでどうしようもない、やりきれなさ、そんな中で、禿(かむろ)や、御姫様(おひいさま)に出合い、危険な目には合っているが、とっても充実した、日々を送ることが出来ている事を。

 そして、謝罪。

 あの初めて会った時、あなた方の御姫様の縁者だと、あなたの、勘違いを逆手にとって、

 本当は、あの新型兵器について一番近くにいた、御姫様に近付きたくて。

 いえ、もっとひどいことをあなた方の大切な、拠り所でもある御姫様(おひいさま)にひどい事をしようとした。

 もっとも、そのおかげで、頭に式神と呼ばれる、ものが頭に食付いているので、十分罰は当たっているところです。

 と笑いながら。


 暫く、だまって聞いていた、そして、もう大丈夫、もうあなたは大丈夫、いい仲間と出会たんだからと。


 そうですねと、明るく返事が伝声管を伝い聞こえてきた。


 いくよ!と言ってエンジンの出力を上げ、機首を敵艦隊群に向け突っ込んでいった。左右、上下に視界のほとんどを敵艦にして、その間を縫うように、艦船の下部に潜り通常弾をその喫水線の下に打ち込み、誘爆する頃には、はるか後方に爆炎を見送った。

 正面の敵には、艦橋の中で右往左往している、敵兵、乗組員の行動が、表情が分かるほど接近し、なお且つ、すれ違いざまに機関部に炸裂弾を撃ち込み航行不能とした。


 下部から突っ込んできた航空母艦の甲板には、発進準備にてこずっている攻撃機に機銃と通常弾。そして誘爆。真っ二つに割れ沈んでいった。

 この間、敵機が、群がる雲霞の如く、向かってくるが、砲塔、銃座の餌食となり、ある者は、穴だらけの機体となり、片翼だけになった者はいい方で、弾かれた木の枝、裂かれた丸太、割れた瓶、粉々になったクリスタルの様に原型を留めることが出来ないものがほとんどであった。

 その内この雷撃機のまわりには、攻撃をしかけようとするものが遠巻きにようすを伺うようになり、おかげで、戦闘艦の進行方向も含め向かって来る、命知らずはいなくなった。

 余裕で、敵要塞に辿り着こうか、と言った瞬間、後方から夥しい数の通常弾、主砲の光跡が辺り一面、空間と言う空間に敷き詰められた。


 後方からの攻撃。

 後に回り込まれた。

 いや、友軍、今回の雇い主からの攻撃。

 訳が分からなかった。

 情報が錯綜し、この、不意打ちの一撃は、味方の艦の混乱させるには十分すぎるほどであった。


 逆に敵に一番近かったから難を逃れたのだろう、雷撃機は戦闘艦を上に見上げ、被弾状況を確認。


 幸い重大なダメージは無い様で安心したのも束の間、二波、三波と立て続けに主砲の波が来襲した。

 要塞からもカノン砲がその光跡を織る様に、隙間なく打ち込んできた。

 この攻撃で、雷撃機は被弾し、エンジン出力は数パーセントまで落ち込む。

 これだけの攻撃を受けてもなお、直撃を免れているのは奇跡に近い。


 後部砲塔座のブロンドに伝声管から無事の有無を問いかけたが、応答はない、二度三度、大声で叫ぶと、うめき声にも似た返事が、無事を知らせる返事がかえってきた。生きてる、そう安堵した、銀髪の雷撃機乗りは、もう一度ブロンドに声を掛けた。とりあえず、生きて帰って、禿や、御姫様と、又ワイワイそれなりに楽しく過ごそう。と。

 伝声管からは、本当に、このまま死んでたまるものか、このまま、終わらせてたまるものか、まだまだこれから。

 と言ったきり、応答は無くなった。

 その後、何度呼んでも応答はなかった。

 戦闘艦から、通信が入り、牽引するから、あきらめるなと。


 静かになった、伝声管の向こうに思いを馳せて、機首を敵要塞に向けバーナーをふかし、戦闘艦に向け最後の通信を送った。

 艦長は、絶対死ぬな、もう誰も死なせたくない、と今まで聞いたことのないような、叫び声だった。

 その声を聴いた直後、敵要塞からのカノン砲の光跡で目の前が一気に明るくなり、その後の記憶が消し飛んだ。



 艦長の顔が視界一杯になっている。

 何か叫んでいる。艦長。

 口の中に。

 艦長、私と口移し。

 天井の明かり。

 ブロンド、の服を艦長、引き裂いてる。

 艦長も男の子だったんだ。

 父上が見込んだ男だもの。

 彼女、大きいもんね。

 胸。

 大きいのが好きなのかな。

 あ、御姫様抱っこ。

 何、ベッド。

 私はじめてだから。

 優しくしてくれたら助かります。



 医療ポッドの蓋が閉まり、ブロンドと銀髪の治療は始まった。


目を通して下さりいつもありがとうございます。諜報員らしからぬ、ブロンド髪、不器用さ、何となく好きです。

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