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 -6後編

 近距離に存在していた、友軍の艦船が、次々とかつて味方であった艦船団からの主砲と通常弾の餌食となり、ある者は縦に裂け、ある者は胴体が四散し、またある者は閃光と共に消し飛んでしまっていた。

 同時に音声モニターからは、各艦船の狼狽ぶりが、にわかりすぎる位分かった。

 ある艦は、最後の打電をし。ある艦は、多分知り合いであろう艦に当てたメッセージらしきものを、送り、またあるものは、裏切り者の存在を、この世の全ての怨嗟を宣っていた。

 正面の映像モニターには、その裏切り者の放つ主砲が、機織りの縦糸のごとく、全天を覆い、また、その光跡に当たったであろう艦船はすさまじい光を放ちそして消えていった。


 一体この空域にはどれくらいの裏切り者と、友軍が存在しているのか?モニターではマーカーが敵味方の判別が出来ず、全て、友軍のマーカーとして表示している。

 なので、判別、識別は不可能だった、敵の識別は正面の要塞群だけだからだ。そうしてるうちにその要塞群から艦船。

 戦艦群が発出してきて、我々は挟み撃ち状態となってしまった。そのうち傭兵艦船の残カウントがみるみる減っていき、音声モニターの音声も雑音ノイズの割合が多くなってきた。それは、音声を発するものが居なくなってきている証左である。

 そうだ、雷撃機は、と、ブロンドと、銀髪の彼女を呼び出した。

 数回呼び出しに答えることはなかったが、かなり雑音交じりで、返答が帰ってきたときにはホッと安堵した。

 が、束の間、この艦にも主砲、通常弾が集中し始め、シールドにエネルギーを全振りし。

 すぐに雷撃機に帰還するよう伝え、攻撃、キャンペーンの目的達成を放棄する宣言し、この時点で報酬の全部を放棄することになるが、命あっての物種ともいう、ここは非常事態、想定外のさらにその上の出来事だ。

 まさか味方が、しかも雇い主に近いものの裏切りは想定も何もない。

 雷撃機からの通信が入ってきた、状況は俺が思っているよりひどかった。

 全弾打ちつくし機のエンジン出力は数パーセントしか、無く、ここに至っては、敵艦と共に死なば諸共と突っ込むことを赦して欲しいと入電してきた。

 俺は、その通信を聞いて、俺は、全身の血液が逆流する。

 毛が逆立ち、マイクに向かって死ぬことは絶対に許さない、勝手に死んだら俺がお前をぶっ潰す。

 と、向こうでは、クスクス笑いながら、死んだらどうやって、私をぶっ潰すんですか、と言っていた。それでも、見付けてぶっ潰す、いいか死ぬな、俺が迎えに行く。と言って雷撃機の座標を割り出しすぐに反転し全速で向かった。


 ここは、AIアンドロイドに牽引信号を送り続けるように、指示し、航行を任せ、お姫様(ひめさま)禿(かむろ)はシールドを、侍女にはジャミングの中、出来るだけ主砲、通常弾の弾幕を張り敵を近づかせない様、言い残し、俺は牽引準備取りかかった。


 被弾したままの雷撃機が、モニターから映ったり消えたりしながら、多分地上でそれを例えるならば、千鳥足でフラフラしながら、主翼の半分が折れているのが見て取れるくらいの距離まで確認すると、おれは格納庫に駆けていった。


 走りながら、クソっ、誰も死なせるか、と叫びながら。


 格納庫のゲートが開くと同時に、雷撃機が飛び込んできた。

 折れた翼の先から、プラズマ、火花が走っていて、車輪は装甲がめくれ上がりだすことが出来ず、胴体を床に擦り付ける形で、着艦した。床はめくれあがり折れていない翼は、壁に食い込んだ。

 機体の約半分の装甲には機銃による穴が無数に空いており、機体の中がむき出し状態でもあった。

 コクピットの風防に飛びつき中を見ると、ぐったりしていて、ヘルメットの間から夥しい血が流れ、握っている操縦桿が真っ赤になっていた。

 後部の砲塔座にいるブロンドの方は、意識はなく、ヘルメットが完全に脱げマスクだけがかろうじて顎に引っかかっている状態だった。こちらは、出血はなさそうだが、油断はできない。

 体を強打していたら、内臓がやられていることになる。とにかく、一刻も早く医療用ポッドに搬入しなくてはならない。


 風防にロックがかかっていて、しかも歪んでいるので、脱出できないでいる。

 そこで俺は風防の少し捲れているところと、ねじれているところに貫手で風防をこじ開け捩じり切って、弾き飛ばした。

 シートベルトのロックは伸びきってしまいまともに解除が出来ないので、シートベルトを引き千切った。

 銀髪の雷撃機乗りを抱えて、コクピットから引きずり出した。

 続いて、後部砲塔座にいるブロンドに駆け寄り、同じく風防とシートが、衝撃で歪んでいたので、貫手で剥ぎ取り雷撃機の中から引きずり出した。

 用意していた、医療用ポッド担架にそれぞれ乗せ、銀髪の方は呼吸を確保するため口の中に溜まっていた自分で吐いた血液を掻きだし、それでも口の奥の方に溜まっている血液を口で吸い出し吐き出した。数回それを繰り返し口腔の中の気道を確保することができた。

 ブロンドの方は深刻で、脈が弱く、なっていたので、ビスチェを裂き心臓マッサージと電気ショックを続けなんとか回復することができ、彼女達を医療区画に運び、後は医療ポッドに任せることができた。

 後を、付喪神(つくもがみ)が付き添うように追っていくのが見えた。

 コクピットに戻りながら、旗艦はどれだ、何処のどいつが、こんな外道なことをしてんだ。と、今までにない血が逆流し滾る感覚に達していた。


 AIアンドロイドに電探で索敵させた。友軍のモニターや、敵のモニターにハッキングし、どの位置に旗艦があるかを。


 ここから少し離れた、安全と思われる所に少しの手勢に守られて。じっと動かずに漂っているとの情報が入ってきた。

 だろうな、いざとなれば、自分一人、安全な場所に、か。


 俺の様子を見ていたAIアンドロイドは、ホスピタルのラボで見たであろう、夢、記憶、記録とでも言うのであろうか、それを俺に手短に話した。

 その中で、ある機能が接続可能となったとも。そういう意味では、ホスピタルでの点検は決して無意味ではなかったと。

 意を決したように言い、言い終わると同時に、AIアンドロイドの背中、肩甲骨辺りが左右に開きニットワンピースを裂いて、端子の束が翼の様に広がり出てきて、床からせり出してきた接続端子にそれらを接続し、同時に、艦内のサイレン、と警報が鳴り響き、アンドロイドは俺達に、シートベルトを締めて、ショックに備えて下さい、と言った。

 こんどは左右の腕が展開し、中から複数の端末が生え、それを迎えるように制御盤が割れ中から端子が迎え接続した。その接続が終わると、緊急度が増す警報音に変わり、行きます、と、言うと艦全体に加速重力がかかった。


 次空振動をこの艦のエネルギー場として構築し、接触するものをすべて、その力場をもってして破壊する。分かりやすく言えば、この艦が一つのエネルギーの塊となり敵を突き破り、殲滅する。

 この艦の、兵器の一つ、この前、ホスピタルで、ラボの中で、思いだいました。記憶、メモリーの中にあったこと。と付け加えた。



 モニター一面、夥しい数の敵艦の壁が、目の前となった中、高高速で敵艦隊に突っ込んでいった。

 出力全開ブースト、と宣言すると同時に画面が真っ暗となり、衝撃がありとあらゆる方向から殴られるようにランダムに衝撃が走り、索敵していた、弩級戦艦の敵旗艦に体当たりし、砕石した。そしてその振動は嘘のようにピタリとやみ、警報も止み通常の航行に戻ったような錯覚に陥った。

 いや、まだ戦場のはず。画面が復帰し座標を確認すると、旗艦があったであろう、座標一面は敵のマーカーがその一面、部分だけ消えており空白地帯の様相だった、旗艦だけでなく周りも一掃したことを意味するものだった。

 追撃の様子もなくこのまま、戦線を離脱した。追撃の手も無い様だ。


 気が付けば、アンドロイドの腕や背中の端子端末は収納されていて。

 と、目のやり場に困った、ニットワンピースが裂けて、ほぼ全裸だったから。

 こっちをみて二ッと笑い、褒めて褒めてと言い、私頑張ったでしょ、と言いながら抱き着いて押し当ててきた。

 侍女はすかさず、駆け寄り、引き離そうとして、お姫様と禿は顔を真っ赤にしていた。

 俺はまってくれ、といい、二人を置いて、医療ラボにむかった。


 二人はカプセルの中で、ねむっていた。

 ログを見るとどうやら峠は越え安定している様だった。

 傍で、付喪神はジッと様子を見守っていていたようだった。

 ほっとして、カプセルを背に床に座り込みよかった、と何度も自分に言い聞かせるように呟いていた。もう二度と俺に縁する人間を死なせはしないと。

 噛みしめるようにつぶやいた。


 その俺たちの光跡の後を二つの戦艦が追って、敵の包囲網を突破したことは後から知ることとなる。


お時間いただき、ありがとうございます。-6を前編、後編で分けてみました。一編の長さがどれくらいが良いのか、工夫してみました。ありがとうございます。

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