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-5.7

 髪の毛の先の端末に端子を接続し、ラボケースの中に。

 そこは培養液(ばいようえき)に満たされていて、体全体をその中に沈め、走査(そうさ)、点検を開始するのを待っていた。

 (しばら)くすると、開始の合図。

 意識、と言うのだろうか、電源と言うべきか、私は起動停止した。




 父上、と言って閉めるコアの(ふた)を押しとどめて、言った。

 父上と呼ばれた、彼は、かまわずコアの(ふた)を閉めようとした。


 外では、爆発音、銃撃音、破裂した破片が、周りの物をはじいた音。

 金属が、割れた音、跳弾(ちょうだん)が、辺りを弾いて食い込む音、破裂音が、振動となって、辺りの空間を二重三重(にじゅうさんじゅう)にも膨張(ぼうちょう)させる。

 破片というには、あまりに大きすぎる破片が炸裂し、何かが辺り一面に叩きつけられて、突き刺さっていた。

 刺さらない他の物は、辺り一面をのたうち走り、ばらまかれた。

 その間を、しつこいほど弾丸が、閃光と共に間断なく、打ち込まれ、光と空間が、裂ける。爆発音、叩きつける音、重音、音を通り越した、振動。

 そして再び終わることのない、永遠に続くかと思われるほどそれは長く、長く、嵐の方が、終わりが見えるだけ幸せだ。

 自然現象であれば、いつかは終わる。

 そんな希望もあるが、絶望の嵐。人の作った、絶望の嵐では、どう足掻(あが)いても理不尽なほど降りかかってくる。

 その喧噪(けんそう)の中。

 敵が迫りくる中。

 父上と呼ばれている彼は続けて言った。お前を。この戦乱の世で己を守るためには、お前自身をこの戦艦に取り込ませる。今は、そうする以外にない、通常空間はおろか、次空間までも追うものが、迫ってくる、お前をここで、失くすわけにはいかない、この銀河大戦の世、乱世を、戦国の世を納めるには、お前の力が、最後のパーツとなる、それまでは、お前は存在せねばならぬ、お前の人生を台無しにしてしまうかもしれぬが、許せ、必ずお前を・・・。

 そういいながら、(ふた)を閉め、なお()つ外で、続けて。

 ・・・それまでは、色んな人間が、お前を駆使(くし)し戦いを()け抜けるだろう、その中で、必ず、(えにし)()くものが現れる、その者が、この艦を()って、銀河を()って終わらせてくれる、必ずだ。

 それまでは、仮の体で、我慢してくれ、お前の本体は、一番安全な所に取り込み隠している。


 逃げたり、守りにはいると、力尽きてしまえば、それまでだ、戦い、挑み続ければ、いつか活路(かつろ)は開くことができる。走って逃げても、追い付かれれば、終わりだ。どんな強固な城でも、水が岩を穿つように、必ず穴があく。

 戦え、戦う限り相手は(ひる)むだろうし、逃げもする。だからお前を、戦う武器そのものにする。


 その間、お前のアバター、この艦の端末として、二体用意しておく。一体は全くの無機質(むきしつ)な、男性型ロボットと言っていい、もう一体は、お前に瓜二つのAiアンドロイドを用意している、どちらで、活動するかはお前に任せる。

 この戦闘艦は強襲(きょうしゅう)揚陸艦(ようりくかん)、または、軽空母(けいくうぼ)としても、また、戦艦としても運用できる広汎用型(こうはんようがた)として、開発している。お前自身が(やり)となり、剣となり、盾となり。この乱世をいつか、収束させ、統一させるその日まで。


 コアの(ふた)が閉まり、そこから、記憶と呼ぶのが正しいのか、記録と呼ぶのが正確なのか。




 ・・・・・この戦闘艦は、いい出物だ、ロボット端末付の戦闘艦か、汎用型だな、・・・・


 仕方ない、手離すか、この艦は扱いにくい・・・


 ・・・この艦の設計者の設計思想が分からん、到底乗りこなせない、次の乗り組み・・・

 に託すしか。・・・


 ・・・・ダメだ、こんな艦では、・・・誰が乗りこなせるっていうんだ。こんなオンボロ艦。・・・


 ・・・こんな、・・・暴れ馬な艦無理だ、こっちの命がいくつあっても足りない。手離すしかない。・・・


 私には、無理よ、・・・女を一切寄せ付けない、こんな艦なんて、初めて、・・・・もう手離すしかない。・・・・


 ・・・なんだ、この艦は、・・・まともに主砲や、通常弾を撃つのに命削って、撃たなきゃならないなんて、・・・まっぴらごめんだ。・・・




 ・・・なんだ、お前なら、乗りこなせるっていうのか。面白い、・・・俺が引退したら、この艦をお前に(ゆず)る。乗りこなしてみろ、・・・

 おお、よくこんな癖のある艦をわし以外で、これだけ乗りこなせることができるとは、いいだろう。

 約束通り、わしは引退する。

 この艦をお前に譲る。

 もう、お前に教えることはなにも無い、この世をこの艦で駆け抜けてみろ、お前なら、わしの果たせなかった夢を叶えることができるかもしれん。・・・




 そう、私は、この人とならと、もう一体のアバター、AIアンドロイドを起動させた。


 そう、思い出した。


 そして、この艦の引継ぎが終わって、次の日には、男型のロボットから女性型AIアンドロイドに変わっていたので、それはもう、艦内を駆け回って、ロボットをさがして、探して探し回っていたけどとうとう観念して、ギブアップして、私を、この艦の端末の一部として受け入れてくれた。


 御父上、よき艦長を得ることが出来ました。必ず。



 そこで、コクーンの中での走査(そうさ)、点検が終わり、ラボ内のアナウンスが点検終了を教えてくれた。

 (しばら)く、ついさっきまで見ていた、あれは、夢。だったのか、それとも過去が、履歴(りれき)がフラッシュバックしただけなのか。

 私が、この艦の一部になってから、久しくそういったものは見ることはなかった。動かない私を見て、ナースが様子を確認するため、()(よっ)って来た。

 動き出した、私を見て、安心したのか、すぐさま、着替えの入ったケースを渡しながら、笑顔で、送り出してくれた。


 着替えながら、でも一つだけ。


 あの人が艦長になっていつか、人間に戻れる日がそう遠くない日に実現できる予感が、そう、その予感がする。


 ほら、笑顔で出迎えてくれる艦長に飛びつきたくなるこの感覚は、この艦長になってから。

 クリスタルのドアが開いて、出迎えてくれたあの人に。

 飛びついた。


 ニャー!


いつも、目を通していただき感謝いたします。ありがとうございます。※走査とか、広汎用など本来の意味とは厳密にいえば少し違う使い方をしておりますが。感覚的に使っているところがあります。何卒ご容赦下さいますよう。

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