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その戦闘艦はかなり古いもので、先代、先々代から数えて100年以前のものらしい。譲りうけた時にはそれはそれはびっくりするくらい、外観は綺麗で本当に旧艦か?と思うくらいだったが、いざコックピットで指揮を執るとメインエンジンは咳込むは、デスドライブは座標合わせに時間がかかるは、弾頭の発射には手動とAIのミックス、つまりAIの指示が無ければ1発もまともに撃つこともできない。とにかく何をするにしてもひと手間ふた手間かかる代物で、で。そのAIてのが、ザ・機械で機械機械していればいいのだが、人型のそれも男やもめの俺からすれば【かなり】の女性型の、何が【かなり】なのか、追々わかることなのだが、それ以外は傭兵の俺からすればある程度我慢できる、支給された武器に自分が合わせるのはお手のもんだ、まあいずれにしても、この超旧式艦と【かなり】のAIが1000年続く星間戦争の真っただ中に放り込まれ、人生しがらみだけで成り立っているような俺がどうやってしがらみから解放されるのか。星一つ消し飛ぶ位の次空弾が必要なのか。あ、あと、借金もふくめ、だ。さて、どうやら、補給艦からの補給はもうすぐ済みそうだ、今日のレコードはこれくらいにしておこう。+01:032:00598:0 以上。
そう言って、【かなり】のAIの右耳に近づけていた口を離して、顔から火が噴くほど真っ赤にしながらぼそり「早くカノジョ作らなきゃ」と呟いた。
遠くで、用事の終わった補給艦と超旧戦闘艦の接続橋が外れ、橋が無作為に壁に艦に当たる衝撃音と、それぞれの艦のサブエンジンを使いお互いが離れていく衝撃波が、艦内を振動させ共鳴させていた。補給艦のサブエンジン、からメインエンジンに切り替わった光跡が、ほかの星と変わらないほどの等級になったころ、その超旧式戦闘艦はデスドライブオンに入った。
百何万という物語の中から、この物語を選んで、読んで下さり本当にありがとうございます。