初代校長と先代国王
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ジェムおじさんはグリトスと自分に慌てて透明化の魔法を使った。
ガラガラッと、校長室のドアが開いて、校長先生と教頭先生が入ってきた。
「なんだ君たちは?5年と4年のさかもと兄弟じゃないか。日曜日なのにどうしてこんなところにいるんだ?!」
教頭が二人に怒って言った。
「いやぁ~、暇だったからお兄ちゃんと学校のグランドでキャッチボールをしに来てたんですよ。そうしたら、玄関が開いていたから、つい入っちゃって。日曜の学校の中を探検してたら、昔の学校ってどんな感じだったのかな~って気になって、ちょうどドアが開いてたから、写真を見てたんです。」
ゆうすけナイス!!こうすけは心の中で思った。こういうピンチの時、ゆうすけは天才的に機転が利く。
「さかもとが小学校の歴史に興味を持つなんて、めずらしいことがあるもんだな。関心なことだ。」
怒っていた教頭先生が、驚いた顔になって言った。
「本当だね。だがしかし、勝手に校長室に入ることは良くない。ましてや今日は日曜日だ。ドアを開けていた先生も悪いけど、今後は勝手に入っちゃだめだよ。」
校長先生が穏やかに注意した。
「はーい。で、校長先生と教頭先生は、このさくら小学校の最初の校長先生はどんな人だったのか知っていますか?」
ゆうすけが初代校長の写真を指差して聞いた。
「はははっ。まるでゴリラにそっくりだろう。この辺りでは有名な先生だったみたいだよ。すがに私が教師になる前のことだから、噂でしか聞いたことないんだけどね。」
校長先生がゆっくりと答えた。
「その噂って、どんな噂なんですか?」
こうすけが聞いた。さすが、学年トップの優等生。凛としている。
「もう40年も前のことだからね。もう亡くなっているんじゃないかな。堂和先生という人だよ。当時は、景気が良くて日本中の至る所で新興住宅地が開発されていて、それと同時に小学校もたくさん設立されてね。全国的に小学校の数が増えていたんだ。学校が増えた分、校長先生や新しい先生がどんどん増えた。さくら小学校もそのころに創立して、その時に新しく校長先生として着任されたのが、この堂和先生だよ。写真のとおり、見た目にすごくインパクトのある先生だったらしいね。ほとんどしゃべらなくていつもだまっているんだけど、本当に子ども想いで優しい先生だったらしい。誰よりも先に学校に来て、誰よりも遅くまで残っていたから、学校に住んでいるんじゃないか、なんてうわさもあったらしい。でも実際には、このさくら団地にご自宅があったらしい。ただ、普通は教員から教頭、校長へと昇格するから、校長に着任する時はだいたいそれまでに務めていた小学校があって、先生同士の知り合いがいるんだけど、堂和先生はさくら小学校にくるまでの経歴が全くわからないんだよ。まぁ、昔のことだしね。でも、仕事熱心で本当に優しい人だったそうだよ。」
「そうなんですね。優しい先生だったんですね。経歴がわからなくての履歴書や何か書類が残っていないんですか。」
「昔のことだからね。今はほとんどがデータ化されているけど、当時はまだ紙の書類だったからね。保管されていたとしても、私が着任するずっと前のことだし、どこにあるのか。」
「そうですか。教えてくださってありがとうございます。」
校長先生の話を聞いてこうすけが頭を下げた。
「僕は今の校長先生の方がかっこよくて好きだよ。」
にっこりしてゆうすけが言った。
「ははは、ありがとう。」
校長先生がにっこりしてお礼を言った。さすが、天性の人たらしだとこうすけは思った。小学4年制生の男子の言葉とは思えないリップサービスだ。さらに、子ども特有の無邪気さ全開の最高の笑顔のサービス付きだ。それでいて一切の嫌みがないのはゆうすけならではだ。校長先生もご機嫌になった。
ゆうすけのおかげで、校長室に勝手に入っていたことをこれ以上咎められることなく、初代校長の情報を聞き出すことができた。
「では、僕たちもう帰ります。校長先生、教頭先生、さようならー!」
元気よく挨拶をして、ゆうすけは廊下に出た。こうすけもお辞儀をして、ゆっくりとゆうすけに続いて廊下に出た。動作をゆっくりにしたのは、魔法で透明化しているジェムおじさんとグリトスを外に逃がすためだ。姿は見えないけど、ちゃんと出られただろうか。
ゆっくりと校長室のドアを閉め、二人は近くの1年生の教室へ逃げ込んだ。
「こうすけくん、ゆうすけくん、うまく校長の話を聞き出せたね!」
ジェムおじさんの声がした。校内だから透明化の魔法は解いていないのだろう
「ジェムおじさん無事に出られたんだね。グリトスもいる?」
ワンッとグリトスが小さく吠えて返事をした。
「経歴不明で校長に就任したってことは、堂和先生が前の国王ってことで間違いないね。なんでさくら団地に来て、さらに野生化してしまったのか、その謎解く必要があるね。」
こうすけが言う。
「誰かに見られる前に、ジェムおじさんの家に行こう。」