3人の復讐はこれからだ(怖い話になっていますので苦手な方はスルーしてください)
真紀の家族
夫 田辺竜也 38歳
この国屈指の大企業に勤めている
役職は課長
推定年収1200万円
初婚
真紀が前科持ちとは全く知らない
真紀とは接待で利用した店で出会い真紀の外見が竜也のモロタイプだったことから猛アタックの末に結婚。
子供
由衣2歳
由真1歳
子供が出来たことを契機に一軒家を購入し現在に至る。
夏真っ盛りの深夜
まただ…
またあの夢だ…
バスタブに沈む2人の子供
その側で包丁で首を切って倒れている夫
夫の血で真っ赤に染まるバスルームの中で満足そうに笑う真紀。
「また殺してくれたね…親友なのに何でこんなことするの」
「どれだけ人を殺したら満足するの…ねぇ…」
「僕たちはこんなことでは死なないよ…」
3人は死んだ筈でその身体は二度と動かない筈なのに口々にそんなことを言いながら這い寄って来るが3人の顔は家族の顔ではなく美穂・メイ・伸二である。
「ねぇ…答えてよ…人を殺すのがそんなに楽しいの?ねぇ…答えてよ…」
真紀の足にしがみついてメイが問い掛けて来たところで目が覚める。
此処数日の間、毎夜見る夢。
人を殺せたことで満足したところで死んだ筈のあの3人が迫って来る。
真紀にとってこれ以上の恐怖はない。
私のせいじゃないのに何で絡んでくるの?
夢を見ているのはあの3人を殺したことに対する罪悪感を持っているからだとでも言うの?
あり得ない…
気が付くと嫌な汗でビッショリだったのでシャワーを浴びようとしたところで真紀の体が硬直する。
血…
そう、シャワーヘッドから出てきたのはお湯ではなくて真っ赤な血だったからだ。
先程の夢の光景が真紀の脳裏を過り思わず目を閉じてしまうが恐る恐る目を開けるとシャーヘッドから出ているのは普通にお湯であり、バスタブの中にも血がこびりついているなんてことはない。
ストレス溜まって来ちゃってんのかな…
夫は激務の上に接待とかで週末はホボ帰って来ないし休日は寝てばかりで夫婦の会話とかあまりないけど、元気な時は率先して家事を手伝ってくれるし私にぞっこんだってことで浮気とかもしないだろう。
私と子供の生活を支える為に仕事をしているのだから寂しいとか思うのは贅沢なのだと理解できる。
けど…
それは…
普通の主婦の話であり、私には当てはまらない。
私は世間一般で言う浮気や不倫をして日々の欲求を満たそうなんてことは考えない。
この三匹の獲物をどおやって死に追いやるかと言う妄想に捕われているのだから。
そんな妄想ばかりしていたのが暴走したのか或いは何時でも殺せる三匹が居るのに殺せないジレンマがあの夢に繋がったのか…
子供は事故に見せかけて殺せるとしても夫は…
実は夫は学生の頃から剣道や空手を嗜んでいたらしく隙が無さ過ぎる。
一度、寝込みを襲おうとしたのだけど、直ぐに反応されて逆に殺されそうになった。
そんなことがあってから実力行使は無理だと理解した私は薬を盛るとか車に細工してとか考えたけど、直接手は下さない。
飽くまでも三匹が自ら死ぬ様に仕向けなければならない。
それが私のポリシーなのだ。
殺したいけど殺せないジレンマに苛まれて生活していたある日のこと…
由衣5歳 由真4歳の冬の夜
由衣と由真が揃って高熱を出してしまった。
こんな時に限って夫は職場でトラブルが発生したとかで対応に追われてしまい、帰りが遅くなると連絡が入ってしまい対応に困ってしまう。
高熱に苦しむ娘を横目にこのまま放置しておけば死んでくれてるかも…
そんな考えが脳裏を過るが此処で何もしなければ育児放棄の上で2人の子供を死なせたと言われかねない。
助けるべきか見捨てるべきか…
迷いに迷って私が決断したのは…
放置しちゃえ!
このまま死んでくれたら万々歳じゃない
だった。
熱に魘されながらもママ助けてと訴える娘に何もすることなく、心の中で早く死んじゃえ!私にあなた方の死に様を見せて頂戴と叫ぶ私の表情は悪魔の表情になっていたに違いない。
そんな時
「また私達を殺すんだね…今度は見殺しにするんだ…」
「どれだけ人を殺せば気が済むのかなこのダニが」
私は耳を疑った。
幾ら熱に魘されているとは言え、単なる幼児がそんなことを言うはずがない。
それどころか由衣はメイ由真は美穂の声だったのだから私は混乱の極地に至ってしまった。
ヒィ…ッ!
あり得ないシチュエーションに恐怖のあまり腰が抜けてその場にへたり込んでしまったところで帰宅した夫が現状を見て直ぐに娘を病院に連れて行ったおかげで一命を取り留めてしまった。
後でこっ酷く叱られたけど、私はそれどころではなかった。
何であの二匹の声がしたの?
もしかして復讐されているの?
何で?
あいつ等は自ら死を選んだ…
ただそれだけ…
幽霊なんているわけないじゃない…
バカバカしい…
コレがあいつ等の復讐かもと疑いつつも死人がこんな事が出来る筈無い。コレは私の心が弱いからだと無理やり納得させることにした。