復讐の始まり
「貴様が地獄界へ来るなんて珍しいこともあるものだな…で?何の用だ?」
レッドの訪問を受けて面会した是流は珍獣を見るかの様な表情でレッドを出迎える。
「面会を受けてくれてありがとうな
不躾で悪いけどよ、斎藤佑哉と言う罪人の魂が何処に落ちたか知りたくてな」
手土産に持ってきた100人もの人間の罪人の魂を是流に渡した後で斎藤佑哉の詳細を問うレッドに対してお礼も言わずに暫しの間思い出す様な素振りをした後で、地獄界の全土を示すマップを開き一点を指し示す。
「あの罪人なら現在はソコで焼かれている筈だ」
その場所は地獄の業火が絶えず吹き出す焦熱地獄。
行き着いた場所でどの様な責め苦を味わっているかに興味はないし見たいとも思わないが、確認しなければならないことがあるので行かないとならない。
案内してくれるとありがたいが…
絶え間なく聴こえてくる罪人の悲鳴とうめき声がレッドの足を止める。
流石のヒーローでもこの状況では歩を進めることに躊躇してしまうらしい。
そんなレッドに早く行けと言わんばかりに煽る是流にチッと舌打ちをして歩を進める。
………
……
・・・解らん・・・
レッド達の見解を受けて更なる調査をしてみたのだが、何度調べても真紀の中に在るのは黒尾の欠片としか認識出来ない。
あまりに黒尾以外の反応が出て来ないので、あいつ等の考え過ぎじゃないのかとも思ってしまうが可能性が捨てきれない以上は監視は続けないとならない。
そんな中、修行を終えた3人が俺の下に戻って来たので仕上がり具合を確認してみた。
佐藤美穂 属性 火・闇
LR級レベル80
アンテナ飛ばし・壁抜け・影分身・呪い・千里眼・憑依・物質創造・予知・幻術
ネガティブ耐性(強)・洗脳耐性(強)
宮下伸二 属性 風・水
LR級レベル73
アンテナ飛ばし・壁抜け・影分身・ポルターガイスト・風刃・千里眼・憑依
ネガティブ耐性(強)・洗脳耐性(強)
脇坂メイ 属性 土・天
LR級レベル75
アンテナ飛ばし・壁抜け・岩分身・治療・千里眼・憑依・調合・金縛り・緑発召喚
ネガティブ耐性(強)・洗脳耐性(強)
とまぁ、こんな感じになったのだけど、魔改造されずに済んで良かったと思ったよ。
ただ、脇坂メイが緑発のことを旦那様と呼んでいたのには引いてしまったがね。(てか、修行中にマジで口説いたんかい!)
まぁ、追求も何もしなかったし本人同士がそれで良いなら誰にも文句は言えないからね。
準備は整ったのだが、ネックになるのは緑発の範囲固定だ
アレで縛られたままでは真紀が雨音以外の街に住み着いた場合、一切の手出しが出来なくなる。
それは緑発も解っていたみたいで3人の範囲固定は外してくれたよ。
それにより3人の行動範囲はこの国全土まで広がったことになる。
結局、レッドが地獄界から帰還したのは真紀の出所一ヶ月前で、二度と行きたくはないと言いながらも以下のことを話した。
悪魔たちは非協力的で探すのなら自力でどおぞと言った感じだったらしく無数の罪人の中から斎藤佑哉を探し出すのに時間がかかったとのことだ。
「責め苦に絶えきれず助けを求めてくる罪人ばかりで大変だったけど、斎藤佑哉は焼かれながらも自分の罪は理解している様子で黙って責を受け入れていたよ。で、ヤツを調べてみたんだよ
そうしたらビンゴだったよ」
黒尾の欠片も残っていなかったが、あれだけの悪党が欠片を入れていたとあって残滓は確実に残っていたとのこと。
「より純粋な悪意に反応する様に調整されていたんだと思うぜ」
佑哉→真紀→黒尾と言った経路で寄生したのだろう。理由は万が一を考慮して保険を掛けたつもりが思ったより佑哉の良心を攻略出来なかったから真紀へ寄生し直して更に入って来た黒尾の欠片に寄生して眠りに着いたと言ったところかな。
佑哉の身内の墓は霊園に在るし破王社とは繋がっていたから何方かで寄生されたのだろう。
黒尾かと思ったらまさかの強欲だったと言うことでちょっとだけ警戒を強めながら3人に作戦を指示するのであった。
………
……
出所した真紀は夜の仕事をしながら都内の片隅でひっそりと暮らしていたが、元々ビジュアルと人当たりは良かったのと自らが起こした事件のことを知っている者が周囲に居なかったのも手伝って直ぐに彼氏が出来て結婚。
更に翌年と翌々年には女の子を授かり二児の母ととなり、良き母として生活していて更生したかの様に見えた。
然し…
人を殺したい…
手口なら色々あるし、バレない自信もある
でも、もしバレたりしたら今度こそ…
一度染み付いた殺しと言う名の快楽を忘れることが出来なかった真紀は家族の死を望み、その心を確実に蝕んで行った。
始まったな…
そんな真紀を監視し続けていたレイがボソリと呟くとレイのアンテナを共有していた者達も無言で頷く。
解っているとは思うけど、俺達の目的は真紀本人を懲らしめるのではなくて黒尾とその中に寄生している強欲の始末だ。
真紀への復讐は飽くまでも3人にヤラせなければ意味がない。
問題は真紀の悪意が膨れ上がり過ぎて黒尾又は強欲が復活してしまう可能性だけだ。
そうなると3人では対処できないだろう。
俺達は、何が起きても即対応出来るように臨戦態勢をとりつつ3人のやることを見届けることしたのであった。