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アルビオンの幼子  作者: Nyatoruhu
ユリゼンの星
9/13

08 「君弱かったんだね」


医務室から救急箱を借りてきた。

コンコンと扉を叩いて、部屋に戻る。

彼女は布団に座っていた。


「気が付いたんだね。身体は大丈夫?」


扉を閉じて鍵をかけた。

テーブルに救急箱を置き、開ければ独特のアルコールの香りが鼻につく。

目当ての包帯とテープを取り出す。


「気休めだけど」


包帯を巻こうと彼女の前に膝をついて、見上げる。

とたん、視界が埋まった。

少し冷えた体温で抱きしめられる。

「どうし」たのと聞こうとして、震えていることに気づく。

ベットの上のタオルケットに手を伸ばしてそっと肩にかける。


「怖かったね」


しばらくして震えが収まるとそっと腕を下した。

肩にかけたブランケットで顔を隠している。

「ごめんなさい」と布越しにくぐもった小さな声が聞こえた。


「別に気にしてないよ」


「包帯巻こうか」


そういって布を解く。

手を引いて包帯を巻き始める。


「なにが起きたか説明できそう?」


「わからないです。ロマンさんか鑑観さんが帰ってきたのかなと思ったら、突然襲われて。あれは何ですか」


「おそらくだけど使い魔かな。術者の魔力を編み上げ使役している」


「使い魔」


「サモンという術式に類似はしていたけれど、正直特定はしようがないね」


両手の包帯が巻き終わり、首を見た。痛々しい痕が残っている。

青あざになっているが、おそらく日が立てばある程度消えるだろう。

彼女の首元に手を伸ばした瞬間、びくりとこわばる。

行き場に困った様子の手が胸元を掴んだ。

彼女の力が弱いせいもあってパーカーが伸びる心配はない。

肌に指が触れて彼女が息をのむ。

睫毛が震え、視線が泳いでいる。

初めて会った時に僕を負かして、四年前一緒に戦った時の勇敢さはそこになかった。


「君弱かったんだね」


彼女は「え」と戸惑いの声をこぼす。


「僕が見てるから寝てていいよ」


ベットの脇に椅子を移動させノートとバインダーをサイドテーブルにおく。

そのまま作業を始めた。

静かな部屋でペンが紙にあたる音だけがある。

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