08 「君弱かったんだね」
医務室から救急箱を借りてきた。
コンコンと扉を叩いて、部屋に戻る。
彼女は布団に座っていた。
「気が付いたんだね。身体は大丈夫?」
扉を閉じて鍵をかけた。
テーブルに救急箱を置き、開ければ独特のアルコールの香りが鼻につく。
目当ての包帯とテープを取り出す。
「気休めだけど」
包帯を巻こうと彼女の前に膝をついて、見上げる。
とたん、視界が埋まった。
少し冷えた体温で抱きしめられる。
「どうし」たのと聞こうとして、震えていることに気づく。
ベットの上のタオルケットに手を伸ばしてそっと肩にかける。
「怖かったね」
しばらくして震えが収まるとそっと腕を下した。
肩にかけたブランケットで顔を隠している。
「ごめんなさい」と布越しにくぐもった小さな声が聞こえた。
「別に気にしてないよ」
「包帯巻こうか」
そういって布を解く。
手を引いて包帯を巻き始める。
「なにが起きたか説明できそう?」
「わからないです。ロマンさんか鑑観さんが帰ってきたのかなと思ったら、突然襲われて。あれは何ですか」
「おそらくだけど使い魔かな。術者の魔力を編み上げ使役している」
「使い魔」
「サモンという術式に類似はしていたけれど、正直特定はしようがないね」
両手の包帯が巻き終わり、首を見た。痛々しい痕が残っている。
青あざになっているが、おそらく日が立てばある程度消えるだろう。
彼女の首元に手を伸ばした瞬間、びくりとこわばる。
行き場に困った様子の手が胸元を掴んだ。
彼女の力が弱いせいもあってパーカーが伸びる心配はない。
肌に指が触れて彼女が息をのむ。
睫毛が震え、視線が泳いでいる。
初めて会った時に僕を負かして、四年前一緒に戦った時の勇敢さはそこになかった。
「君弱かったんだね」
彼女は「え」と戸惑いの声をこぼす。
「僕が見てるから寝てていいよ」
ベットの脇に椅子を移動させノートとバインダーをサイドテーブルにおく。
そのまま作業を始めた。
静かな部屋でペンが紙にあたる音だけがある。




