07 「それが伏見の答えなんだ」
人ならざる白髪の女性が私をのぞき込んでいる。
人でないとわかるのは頭部にある二本のヤギのような角の存在。
手を差し出されて手を繋いだ。
そのまま引き寄せられて、耳元でささやかれる。
「よかったね」
何がいいのか。その人を見た。
酷く楽しそうに笑っている。
「記憶を失った程度で済んだんだ、伏見」
これは私の事を知っている?
誰なのか、何を知っているのか。
問おうと声をだそうとして声がでないことに気づいた。
「ここは伏見若斗の記憶の欠片。君が見る夢。過去にあった出来事」
「だから当然。今の君は声を出すことも、何か影響を与えることもできない」
一方的に語りかけてくる。
「魔術を学ぶものは自らの身を護るためにそれを学ぶ」
「学ばなければ、君自身の魔力に殺されてしまうし
それに悪い人が君を実験材料にだってするかもしれない
そういったことから自分を守るために学園に通う」
「でも君は身を護る術も忘れてしまったんだ」
手を引かれ、うっそうとした森のような場所を歩く。
どこか見覚えがある景色だった。
開けた場所にたどりついて、彼女は言った。
「さぁ最初の問いだよ」
「あれは大切なもの?」
指さされた先を見る。
巨大な影と木に寄りかかる小さな影。
2m、3mはある。獅子、蛇、山羊、様々な獣がつぎはぎされたような巨大な獣とロマン・ベルモンドが血だらけで木にたたきつけられていた。
化物は鋭い爪を振り上げている。
それを見てどくんと鼓動が跳ねた。
この景色を私は知っている気がする。動悸が激しくなって背筋が凍りそうだ。
身体が勝手に動く。
手を伸ばす。
「それが伏見の答えなんだ」
目が覚める。
焦りの感情だけがあった。
どんな夢を見たのか覚えていない。
ただ、ロマンさんに会いたかった。




