06「交渉しても無駄だね」
「ん?」
端末が震える。
誰かから電話がかかってきていた。
表示されている名前は伏見若斗。
「どうしたのかな」
通話ボタンをそのまま押す。
「あの」と声が聞こえたすぐ対の瞬間にガタンと投げ出されたような音がする。
どたどたと何かの音がして女性の苦しむ声が聞こえてきた。
明らかに何か起きている。
踵を返して来た道をすぐ駆け戻った。
遠くまで行っていなかったから、時間もかけずにすぐ部屋の近くまでこれる。
「大丈夫っ?!」
返事は聞こえてこない。
どたどた暴れる音が聞こえてくる。
そのまま飛び込む。
異形の影が彼女の首を締めあげていた。
「これはどうゆうことかな」
魔力を体内に張り巡らせ、魔力の攻撃を放つ。
苛烈な魔力はそのまま喰らうように吹き飛ばし、彼女から引き離した。
まっすぐ見据え、見た事がない相手だがおそらくは。
「使い魔か。交渉しても無駄だね」
話が通じないであろうことは察する。
構え、敵を見据えた。
「【ベオウルフ】」
敵の真を捉える。
鋭い蹴りが敵を二つに引き裂いた。
敵はそのまま塵にように空気に溶けていく。
後には何も残らない。
「ひとまずは大丈夫。伏見さ」
首についた痕がどれほどの力で締め上げられたかを物語っている。
そっと肩を揺らしても返事はない。
口元と手首を確認して、かすかに呼吸と脈があることを確認した。
「気休めかもしれないけれど」と首元に手をかざす。
「【マルクト】」
痕は消えていないが、うっすらと薄くなった。
苦しそうではあるが先ほどより落ち着いたように見える。
「部屋を移ったほうがいいな」
ふと一抹の不安を感じる。
四年前の彼女と出会った頃に起きていた事件と似た、予感めいたものだ。
気のせいであればいい。
けれど彼女の部屋までなぜ使い魔が来れたのか。
それを考えて、まさかな。と考える。
「一体犯人の目的はなんだ」
伏見若斗の記憶喪失。
誰からの差し金か不明の使い魔。
そっと抱きかかえようと地面にしゃがみ込んだときに視界に入る。
握り締めたのかくしゃりとした写真。
君と僕が写っていた。
「これは」
写真をそっとポケットにしまい、彼女を抱える。
近くにあったノートも拾い、その部屋を後にした。




