04 「病み上がりの人にダメだよ」
抱き付くように飛びついた男をそっとロマンが抑える。
「病み上がりの人にダメだよ」
「そうだった!身体は大丈夫なのか?!」
「はい、あの」
「どうした?」
「だれですか」
とその質問をきいた瞬間、ピシャーンと雷に打たれたように固まる男。
瞳から滝のように涙を流して答えた。
「うぅぅ。ああああ。うぁ。鑑観ぃるなだよぉ。わすれたのか。うぁあぁあん」
べたべたに泣いている。
イケメンであろう顔は見るも無残な姿になった。
ロマンの方を向けば苦笑いをしてそっと目を逸らす。
「伏見さんも起きたばかりで負担も大きいだろうし、そろそろ出ようか」
「えっ、俺はまだ来たばかりですよ?!」
「ほら、ね。伏見さんの顔色も悪いから」
「うぐぐ。若斗、これ、俺だと思って」
そういって取り出したのはぼろぼろになったぬいぐるみだった。
「大切なものだけど、若斗が思い出すきっかけになればな、とか思ったり」
私はそっとそれを押し返す。「えぇ!?」とショックを受けたように固まる鑑観。
そのままロマンにずるずると引きずられ、部屋の外へとフェードアウトしていった。
「どうしよう」
静かになった部屋で考える。
指折り、知った情報をまとめていく。
・私は伏見若斗。
・友達の鑑観るなさん。
・先輩のロマン・ベルモンドさん。
「私は学者だって言っていたけれど」
本や紙が積まれている机をみた。
そっとベットから降りようとする。
けれど足に力が入らず、顔から落ちそうになって手をついて地面に倒れ込んだ。
「いたい」
打ち付けた手のひらと肘と膝が痛む。
痛みで足の感覚を思い出した。
足に力を入れてゆっくり立つ。
生まれたばかりの小鹿になった気分だ。
ベットやいすを手すりにしながら机の元へ近づき、適当に手に取る。
開かれたアルバムの上に置かれていた、おそらくは一番新しいであろうそれ。
男性と女性のツーショットの写真だった。
「ロマンさんと私?」
私はどことなく嬉しそうに微笑んでいる。
写真の裏には「星を見せてあげる約束をした」と書かれていた。




