02 「はじめまして、か。なんだか不思議な感覚だね」
「あ、そう」
一瞬だけ固まって目を見開く。
でも声色は優し気に質問された。
私は彼を思い出そうとして、記憶をたどって、それに気づく。
ああ、私は。
「私、記憶がないみたいです」
どこか他人事のように感じている。
「私と、貴方の事をお聞きしていいですか」
彼は手を顔にあてて黙りこんだ。
それは当然かもしれない。
さっきの様子からして明らかに彼とは何かの関係性があったのだろう。
「なるほど。はじめまして、か。なんだか不思議な感覚だね」
「そう、だな。どこから話せばいいかな」
「君の名前は伏見若斗。君は本当にすごい人で、天文学において秀でた学者だと言われているね」
「4年かけて書いた君の魔術式の研究レポートは凄く評判が良かったと聞くよ」
「あとは、君は友人は多くない」
「多くない」とはっきり言われ思わず笑ってしまう。
この人はそのまま言葉にする人みたいだ。
もしかしたら結構デリカシーがない人なのかもしれない。
「僕はロマン・ベルモンド」
「君と出会って4年くらいかな?君の先輩だね」
「いったん君の友人に声をかけてみようか、何か思い出すかもしれない」
そう言って上着のポケットから端末を取り出し、何かメッセージを送った。
「あの一つ質問していいですか」
「うん」
「魔術式ってなんですか」
端末に打ち込んでいた指がピタリと静止する。
「そこからか、本当に弱ったね」