10 「星は見えなくなり、目覚めの時だ」
「危なかったね」
隣にいる先生が私に声をかけた。
目を開ければ視界を塗りつぶすのは満点の星空だった。
澄み切った空気と雨上がりの香り。
「先生が助けてくれたんですか」
先ほどまで埋め尽くしていた恐怖が消えていた。
むしろすこし火照るくらい身体が暖かく、心は落ち着いている。
「違うよ」
「恐ろしいものを見たね。君の勘の鋭さは相変わらずのようだ」
仮にも自分の生徒が死にかけたというのに気に描けていない態度は変わっていない。
といっても自分も自分の命が死にかけた事実よりも気になってしまうことがある。
「先生、あれはなんなんですか」
「うん、君も相変わらずだね」
星空を見上げる。
「答えになるかわからないけれど、
君が見たのはその本来なら存在を認識するのも難しい存在だ」
水面が生まれ波が足にかかる。
世界を埋め尽くしていた星空が薄れていき、夜明けのような色合いに代わっていく。
朝がくる。
「どうかこれからも彼を支えてあげてくれ」
ぱしゃんと音がした。
水面を踏み、水がはじける音。
私は振り返った。
視界の先に彼がいる。
「星は見えなくなり、目覚めの時だ」
私は手を伸ばす。
「ロマンをよろしくね」
先生の声が聞こえて、その夢は終わった。




