09 「きみはふしみ」
これは夢だ。
布団に入った記憶と非現実的な風景が私の中と目の前にある。
広がる、広がる幾何学的模様が流れていく金の線。
一瞬広がる電気の波。シナプスのような線とつながっていくコネクター。
そして歯車といくつものレンズとそれを支える筒上と巨大な球体の金属でできた巨大な装置。
私はこれを知っている。
プラネタリウム。
さっきまでの溢れていた不安感は今はどこかにいってしまって、
ただ乾いていた器に湧いた水のように好奇心があった。
言葉がするりと出てくる。
「【ゾディアックサイン】」
魔力が注がれていく。
プラネタリウムを中心にして塗りつぶすように宇宙を展開される。
広がっていく天体。煌めく星々。音はなく、光だけが通り過ぎていく海の中。
そうだ、私の術式は■だ。
遠くで流れ、こぼれ、消える欠片。
その時、展開した宇宙から気配をしっかりと感じる。
見つめる気配を振り返れば毒々しい色彩がそこにいた。
形容さえ無意味なそれの視覚から伝えてくる精神性の暴力に私はさらされる。
そうだ。私は”これ”を観測したから。
逃げなければいけない。
生存本能という警鐘が脳裏に響いている。
夢という媒体を経由して俯瞰的にこの状況を見ているからこそ。
理解してしまう。これはみてはいけないものだ。
これを証明してはいけない。
そう本能が訴えかけてくる。
溶けた金属の様にどろりと伸ばしてきた。
振り払おうとして左手が捉えられる。
触れた場所から感覚が失われていく。
指先が動かない。指が、手首が、肘が、腕が。
どんどん自由が利かなっていくのを感じ、恐怖心に塗り替えられる。
「縺阪∩縺ッ縺?繧鯉シ」
ノイズ交じりの音がする。
触れられた瞬間。
自分の中にある記憶が空白になっていく感覚に襲われる。
形容するならば喰われている。
「縺阪∩繧偵♀縺励∴縺ヲ?」
「繧ゅ@繧ゅ@ーーー。もしもし」
ノイズが消え、明瞭になる。音が声になった。
「これだ」
目を瞑る。
祈った。
どうか、みんなはこれに見つからないように。
あ。
「きみはふしみ」
みんな、ってだれ。




