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隙間シリーズ  作者: カマのスケ
1/1

ニート

初めて書きます。

隙間。

俺は今、隙間を見ている。


今朝から隙間が異様に気になる。

最初は閉まり損じた押し入れ。

そこの空間には何もいないはずなのに、何かがいるように感じてしまう。例えばカーテンの膨らみだ。そこに泥棒がいるんじゃないかという杞憂を発生させる。

軽く揺れているせいで余計に。

よくあることだ。


だが、朝方には似合わないその隙間の不穏な黒さが、今までのそういった経験からくる安心感をかき消す。

気分を変えようと布団から立ち上がり、臭い台所へ向かう。

冷蔵庫の硬くなったトーストを雑に置いてトースターを閉める。

インスタント味噌汁を作りながら、隙間女などの隙間に関連する怪異を思い浮かべる。そのせいで余計に隙間を意識してしまうようになった。

隙間が気になる。見たくないのに見てしまう。


今更だが、俺はニートだ。いろいろと後悔している。

今を見ずに、過去に目を向けながら嘆く毎日。

そんな日々に飽き飽きしていたので、今回の隙間の件はある意味良い刺激になっている。


味噌汁に中途半端に焼けたトーストを浸しながら、考える。

まず、部屋にいたくない。例の隙間が気になるからだ。

「ングッング、、、(久しぶりに外に出ようかなぁ)。」


そう思い、歯磨きもせずにボロいニューバランスを履いて外の出る。

眩しい。世界が俺を拒否しているような感覚を受けながらマンションの階段を下りている。

外出したのは何か月ぶりだろう?


一段降りるごとに感じる膝の軋みが記憶を刺激する。

確か、最後に外に出たのは親戚の集まりから帰ってきた親の荷物を運ぶのを手伝ったときだ。

いきなりおせちの残りを運んでと頼まれたんだった。

その時は久しぶりの外出で一瞬なのにかなり緊張したんだったかな。


そんなどうでもいいことを思い浮かべながらマンションの裏口から外に出る。

正面玄関から出たのは中学校が最後だ。

マンション管理人のおじさんに見られたくないからだ。

幼稚園の頃から僕を知っている人だ。小さいころから知っている子が引きこもりなんかになっているのを発見したら、、、、って思うと顔を見せられない。


この下劣な自意識過剰さがこのような惨状を招いたんだろうなとひしひしと感じながら、ところどころ割れたコンクリを眺めながら歩く。


どこに行こうかと思考するが、頭がもやもやして答えが出ない。頭が使いものにならないので体に聞いてみることにした。


何も考えずに歩いたからか、いつの間にか小学校の頃に登校ルートとして使っていた商店街に入っていた。

商店街と言ってもかなり寂れているし、ここは全蓋式アーケード(屋根がついてるやつ)じゃないので商店街と言われないとほぼ住宅街に見える。


もう何年も来てないから、かなり店の並びが変わっている。

「ショギョウムジョウ、、、(小声)」

と呟き、歩く。


突然、「にゃーん。」が耳に入る。

赤いボクサーパンツを咥えた白黒のハチワレがこっちをずっと見つめながら目の前に佇んでいた。

なんだこのシチュエーション。


猫が目の前の理髪店とパスタ屋の隙間に飛び入る。

漫画とかでよくある奴じゃん!と思いながら走って追いかける。

隙間の前に立って見た光景に目を疑った。

物理法則を完全に無視した暗い空間がそこにはあった。

例えるなら、3Dゲームの生成バグ。

明らかに不自然。この店と店の隙間だけが超黒い。

さっきの猫はもう見当たらない。だが、それ以上に自分の興味を惹くものが目の前にある。

考えるよりも先に足が前に進む。

このクソな日常から解放されるために、この身を隙間に投げ入れた。



































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