表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/94

第九十二話 巫女と帝

 三日月姫が十二人の巫女の名を呼んだ。

薄桃色装束の巫女が三日月姫の前に並んでいる。


「如月」

「弥生」

「皐月」


「桃」

「桜」

「椿」


「菖」

「楓」

「菊」


「霞」

「涼」

「橘」


 巫女たちは、ひとりずつ赤い袴の両端を持ち上げ立ち上がった。

三日月姫の前に出て深々とお辞儀をして引き下がる。


 帝は三日月姫の横でしきりに頷いて上機嫌だった。


 東富士見町保養所正面玄関前だった。




 さっきまで引率状況にあった昼間夕子は事態が把握出来ずにいた。

そんな時、星乃紫が夕子の耳元で囁く。


「夕子、未来に尋ねてみたら」

「そうか、そうね、それが一番」


「星乃先生は、才気煥発な方ですからね」

朝霧美夏が言った。


星乃は照れて朝霧を睨んだ。




 夕子は未来の元に寄り、全員を保養所に連れて行きたいと告げた。

「夕子、従者の私には権限がござりませぬ」


夕子は忘れていた。

前世時代の縦社会の掟を。


夕子は星乃にアドバイスをお願いしてみた。


「夕子、帝がいるじゃない」


 星乃の言葉に夕子の中で閃きが起きた。




 夕子は、三日月姫の横にいる帝に話掛けた。

三日月姫の従者未来が夕子を怖い表情で一瞥する。


「帝さま、保養所がご用意出来ております」

「夕子、大義じゃ、皆も保養所に参るのじゃ」

帝の大きな声に周囲が反応した。


 三日月姫姉妹が従った。

未来、十二人巫女の順に東富士見町保養所の大きな正面玄関に入って行く。


 東富士見町保養所の真新しいガラス自動扉が太陽光に反射している。

ミラーガラスが昼間、星乃、朝霧の三人と周囲の景色を写し出していた。


 保養所の中から、遅れて到着していた御坂恵子と昼間春雄が顔を現した。

その後ろには徳田理事長と秘書の山下瑞稀がいた。

全員がスーツ姿だった。


 保養所なのか会社なのかわからない服装に夕子は戸惑いを覚えた。

見れば夕子自身もスーツ姿だ。


 星乃紫と朝霧美夏が夕子に言った。


「今夜の酒宴の席、お酒大丈夫かしら」

「すっかり忘れていたわ」


 星乃が酒田昇を呼んだ。


「酒田さん、とりあえず、みんなでスーパーに行かない」

「星乃先生、ずるいな荷物持ちじゃないですか」


「分かった? 」

「分かりますよ」


「あら、どうして」

「星乃先生がそう言う時、声色が変わるじゃあないですか」


 朝霧がくすくす笑い出して星乃に言った。

「先生、正直ですから」


 夕子は、夢乃真夏の兄の神姫(ヒメ)を呼んだ。

「とりあえず、最低限は大丈夫だろう」

「でも、先生、絶対無理ですよ」


「ヒメ大丈夫、今は配送サービスあるから」

「そうね。持てない物は送りましょう」

朝霧が言った。


 朝霧の言葉に酒田が一番喜んでいる。


「でも夕子、今日はいいとしても」

「大丈夫よ。斉藤さんにお願いしてあるから」


 酒田とヒメは健啖家だから、スーパーに到着すると食材コーナーに直進した。

星乃と朝霧は日本酒コーナーに寄った。


 夕子は十二人の巫女の着替えを探すことにして、巫女のひとりを随伴させている。

従者未来は拒否していた。

三日月姫は、如月を呼んだ。


「如月は未来の代わりに妾に随伴するのじゃあ」

「姫さま、お供したくござりまする」


 夕子、三日月姫、如月の三人は二階の婦人服売り場にいた。

夕子は急遽、如月にワンピースを買い与え着替えせた。


 巫女装束では目立ちすぎる・・・・・・。


三日月姫は夕子に耳打ちした。

「夕子、同じ服、全員じゃ」


 昼間財閥令嬢の夕子はブラックカードで決済を済ませた。

配送先は東富士見町保養所昼間夕子と書かれていた。




 酒田とヒメには大きな誤算があった。

配送サービスから除外されていた品目を知らなかった。


星乃が言った。

「酒田さん、お気の毒」


 朝霧も笑いながら同じ反応だった。


 地下食品売り場で合流した夕子も酒田を揶揄う。

「そうね。自業自得ね」


 酒田は四面楚歌に置かれた。

「かわいそうじゃあ」

巫女の如月が酒田を庇う。


 如月には酒田の前世が見えていた。

「帝さま・・・・・・ 」

 お読みいただき、ありがとうございます!

ブックマーク、評価を頂けると嬉しいです。

投稿後、加筆と脱字を修正をする場合があります。


三日月未来(みかづきみらい)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ