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第八十九話 全員で行こう!それがベストね!

 昼間財閥の紺色のスカートスーツの昼間夕子と御坂恵子は沢山の思い出を水戸保養所に置き去りにして大洗の海上を航行していた。いつになく穏やかな海に日差しが降り注ぐ。マルチ脱出カプセルの広がった両翼がキラキラと輝いて眩しい。


「夕子さま、そろそろ船舶モードから滑空モードに移りますが・・・・・・。 」

パイロットの斉藤由鶴司令からだった。


「ありがとう斉藤さん、それでお願いします」


 脱出カプセルは潜水艦モード、船舶モード、飛行モードを備えていた。夕子の返事と同時に斉藤は、脱出カプセルを浮上モードにシフトして低空で滑降させた。穏やかな波から機体が徐々に離れて行く。眼下に大海原の波飛沫が広がっている。高所が苦手な夢乃神姫とは対照的に妹の真夏は顔を輝かせていた。




 昼間夕子はパイロットの斉藤由鶴司令に運行予定を確認した。


「斉藤さん、脱出カプセルの機体のままで羽畑空港の一般滑走路は大丈夫ですか」

「夕子さま、羽畑には昼間財閥と徳田財閥の専用滑走路とプライベートターミナルがございます」


「斉藤さん、すっかり忘れていました」

「仕方ありませんわ、避難暮らしが長かったので」


「ところで斉藤さん、空港には飛行モードで入るのですか」

「いいえ、専用滑走路であってもトップシークレットなので、空港の地下滑走路に潜水モードで進入します」


 夕子は斉藤に当たり前のことを聞いて後悔している・・・・・・。


「夕子さま、到着のあとの移動ですが」

 チーフディレクターの御坂恵子だった。御坂の席の近くには昼間春雄と巫女の花園舞がいる。


「御坂さんは、このあとどうされますか」

「東富士見町マンションに寄って、本社のご挨拶は翌日以降にと考えています」


 御坂恵子の説明では、本社スタッフが御坂に割り当てた部屋を居住可能な状態にしているとの報告を受けていた。


「御坂さんーー 今夜は東富士見町で御坂さんの歓迎会にしましょう」


 唐突ないつもの発想に、近くの席にいた星乃紫と朝霧美夏が呆れ顔をして夕子をじっと見返して微笑んだ。


「夕子さま、保養所と違いスーパーに買い物に行かないと行けませんよ」

「大丈夫よ! スーパーは近いしーー ヒメや酒田もいるから心配ないわ」


 その大きな声にヒメと酒田が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ夕子を見て言った。


「昼間先生・・・・・・。 」


 酒田昇の声は三日月姫に遮られ夕子に届かない。


「夕子、わらわも久しぶりの東富士見町の夕子の部屋が楽しみじゃ」

「三日月姫さま、お戯れが・・・・・・。 」

 未来が言い掛けた時、帝が言葉を重ねて言った。


「夕子、余も今宵の酒宴が楽しみじゃよ」

「帝さまのお口に合うお酒があるとよろしいのですが」


「余は現世で夕子たちと交わす盃が何より楽しいのじゃよ」


 三日月姫の従者の未来が帝の言葉に緊張を隠せない。




「当機はまもなく羽畑空港地下滑走路に向け、潜水モードに変わります」

 斉藤由鶴司令のアナウンスに機内の乗客が緊張する。


 御坂恵子が元キャビンアテンダントのキャリアを活かして斉藤をフォローした。

「潜水モードのあと地下滑走路ゲートに入り浮上して搭乗口へ牽引されます。

ーー そのあと昼間財閥の専用ターミナルを経由して東都に移動します」


 夢乃真夏が御坂に質問した。

「御坂さん、移動って東富士見町ですか」

「いいえ、東都の中心部にある昼間のホテルまで地下鉄で移動します」


「じゃあ、御坂さんたちとは、そこでお別れなの」

「スタッフの殆どは、ホテルに隣接する寮に入るわ。

ーー そして東富士見町グループは、ホテルから別ルートで東富士見町に移動の予定よ」


「御坂さんも春雄さんも一緒なの」

「前に言ったでしょう。

ーー 会長や社長の意向で東富士見町マンションで暮らすわ」


 真夏は満目の笑みを浮かべて御坂に言った。


「今後ともよろしくお願いします。御坂お姉さん」

「まあ、真夏ちゃんたらお茶目ね」




 スーツ姿の昼間夕子と御坂恵子は専用ターミナルのロビーから地下鉄駅に通じる動く歩道の入り口で、あとから来る三日月姫たちを待っている。花顔柳腰な二人を遠くから見ればモデルか女優と見間違うかもしれない。


「御坂さん、徳田理事長と山下瑞稀さんの姿がないのですが」

「お二人なら例の赤いヘリコプターで茨城国際空港に行くと言っていましたわ。

ーー 山下さんがあとで連絡すると言っていました」


「そう、今夜の歓迎会にいないのは残念だけど仕方がないないわね」

「夕子さん、それなら心配ないわよ。

ーー 山下さんも徳田理事長も東富士見町マンションに寄ると言っていましたから」


 夕子は御坂の言葉が飲み込めずにいた。


「先生、お待たせ」

「真夏ちゃん、遅いわね」


「ヒメ兄が、ちょっと体調を崩してノロノロしていたの」

「ヒメは高所ダメだったんですね」


「そうなの。本当に手間のかかる兄で困るの」


 夕子は真夏の言葉に込み上げる笑いを押し殺していた。

 同僚の星乃紫と朝霧美夏が夕子に言った。


「今夜は、どうするの」

「とりあえず、現地調達して足らない分は即安でいいわ」


「でも、大人数で買い出しに行ったあとどうするの」


「分かったわ。二手に分かれて行動よ。

ーー マンションで準備するグループ。

ーー 買い出しグループでどうかしら」


 星乃と朝霧は夕子の思いつきに顔を見合わせて戸惑うだけだった。


「じゃあ、準備グループは誰にするの」


「・・・・・・ 」

 夕子が言葉を失っている。


「いいわ。全員で行こう!それがベストね! 」

 昼間夕子の甲高く明るい声が地下通路に響いていた。三日月姫の従者未来が遠くで眉を顰め囁く。


「あれが生まれ変わりとは・・・・・・ 」


 お読みいただき、ありがとうございます!

約二千二百文字です。

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投稿後、加筆と脱字を修正をする場合があります。


三日月未来(みかづきみらい)

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