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第九話 三日月と未来

 昼間夕子は陰陽師(おんみょうじ)にヒメとかぐや姫との繋がりを期待していた。

しかしヒメの結果はありふれた次元スリップで終わった。

(あやかし)の仕業もなく単純にスリップじゃ前世にたどり着くことは出来ない。


 あの声とかぐや姫との繋がりがまるで見えない限り、方法など無いのと同じなのだ。

せめて、あの声が導いてくれない限り・・・・・・。

かぐや姫の転生が遅れているのかという思いを夕子の心は否定した。



 夕子は、かぐや姫への悩みが尽きないまま、また一日が終わるのかと思った時。


「見つけて・・・・・・未来・・・・・・」


 夕子は、呆然(ぼうぜん)として、咄嗟(とっさ)に振り返る。


 誰もいない境内(けいだい)に、人影を感じる。

夢乃は、あのあとに妹と会うと言って帰った。

陰陽師の神主も社務所に戻っている。

参拝客がいないのに、夕子は人の気配を感じた。


「誰なの、あなたは・・・・・・」


 夕子は頭の中で誰もいない空間に呼びかけた。


「未来、あなたの姫よ・・・・・・」

「かぐや姫なの?」


「違うわ。あなたの姫よ」

「姫、教えてください。分からないわ」


「未来と私は、ずっと一緒よ」


夕子は、はっとした。


「姫、お名前を教えてください」

「三日月よ・・・・・・」


 夕子の中で、未来と三日月が繋がる。


「三日月がかぐや姫なのね」

「未来、誰かが、そんな名前で呼んでいました」


「未来、契り・・・・・・見つけて・・・・・・」


テレパシーのような姫との会話が途絶えた。



 姫は三日月と名乗りかぐや姫で無いと言う。

しかも夕子を未来と呼んでいる。


 三日月未来は夕子のペンネームなのだ。

夕子の無意識が選んだ結果かも知れないと夕子は考えた。

夕子は[かぐや姫]という物語の名前を勘違いして探していたのだ。


今後は、姫のことを三日月と呼ぶことにしようと心で誓う。


「未来・・・・・・三日月よ・・・・・・」

「もうすぐ・・・・・・契り・・・・・・」


 夕子は満面の笑顔になって神社の境内をあとにした。

まだ陽は高く強い日差しに思わず右手を額にかざした。



 夢乃真夏は、駅で兄の夢乃神姫を待っていた。


「ヒメちゃん、こっち!こっち!」

「真夏、悪い、悪い、遅くなっちゃって」


「全然、大丈夫よ」

「それで、あれ、分かったの」


「うん、それが、どうも意識だけスリップしたとか・・・・・・」

「意識が転んだの・・・・・・」


「そうじゃなくて、タイムスリップとかのスリップだとか」

「じゃあ、姫ちゃん、未来に行ったの」


「真夏、そうじゃなくてさ・・・・・・。

ーー なんか、次元スリップだとか言うらしいんだ」


「ヒメちゃん、異次元にスリップしたの?」

「どうも、そうらしくて、時間差が起きたとか」


「確かに次元間なら時間差も説明付くわね。

ーー 女神は、分かったの」

「いや、それは、まだなんだ・・・・・・」


「でも、謎解きが一つクリア出来て収穫じゃない」

「真夏はプラス思考だから、助かるよ」




「夢乃、まだ居たのか?」

「先生、真夏と喋り込んで」


「お前ら、本当に仲がいいなあ・・・・・・」

夕子はヒメの肩をポンポンと叩いた。

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