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第七十五話 わらわは、騒がしいの嫌いじゃ!

第七十五話は、約二千六百文字です。

しばらくお付き合い頂けたら幸いです。

三日月未来

 酒宴の翌朝、前夜の約束を受けて昼間財閥会長昼間秋生と社長代理の功は夕子の部屋を訪問していた。


「夕子さま、地下シェルターの準備が整いました」


「御坂さん、じゃあ、全員を集めてください」


「夕子さまのお友達ですか」


「それも含めて、保養所の人間全員です」


 御坂恵子は、司令室の斉藤由鶴に伝えた。


「夕子さま、スタッフを含めて全員を、

ーー 地下シェルターに集合させるよう手配しました」


「あとは、あなたも含めて、この階の人間全員ね」


 酒宴があった前夜、昼間秋生と功は、唐突にシェルター実験の事を夕子に伝えた。

開発者の研究員も搭乗予定という。




「お父さん、私たちは、準備が出来ました」


 父の功は、秋生と一緒に北東の角にある脱出カプセルエレベーター前に移動した。


 帝、三日月姫姉妹、未来、零、酒田、星乃、朝霧、夕子、日向黒子、白石陽子、白石式子、夢乃真夏、ヒメ、安甲神主兄弟の十六名に、御坂、秋生、功の三名を加えた十九名が脱出カプセルエレベーターに搭乗する。


「御坂さん、バス運転手さんは」


「スタッフが一般エレベーターで地下シェルターにご案内いたします」


「分かったわ」


 夕子と御坂を中心に座席に着席してシートベルトを締めた。


 夕子の前のコントロールパネルで、シートベルトランプが確認できた。


「御坂さん、全員準備出来ました」


「夕子さま、ではお願いします」


 エレベーターのステンレス扉が静に閉じた。

夕子がスタートボタンを解除したあと、エレベーターはゆっくり動き出し加速を始める。


 地下百メートルにあるシェルターに、あっという間に到着した。

夕子は御坂恵子の指示に従ってエレベーターの扉を開いた。


 カプセルエレベーターの扉口が移動式シェルターの搭乗口になっている。


 他の一般エレベーター用も同じで構造だった。

シェルターの搭乗口は合計五ヶ所設置されている。


 夕子の部屋から一台、会長室から一台、社長室から一台、一般エレベーターが一台、スタッフ専用が一台あった。

 夕子が中にシェルター内に入ると司令室の斉藤由鶴が待っていた。

御坂恵子が斉藤を夕子に紹介する。


「斉藤さん、こちらが昼間社長代理功さまのお嬢様でございます」


「斉藤由鶴と申します」


 斉藤は、ピクシーカットの髪型を七三に分けている。

ちょっと神経質そうな切れ長の大きな目が印象的な女性だ。


 明るい灰色のスカートスーツに薄いピンクアーモンドのシャツを着ている。

斉藤は、夕子に挨拶したあと、昼間秋生会長に気付き会釈をした。


「斉藤さん、お元気そうで何よりです。

ーー 夕子、こちらがこのシェルターの開発研究を進めている斉藤さんだ」


「昼間夕子です。よろしくお願いします」


 斉藤由鶴は、ちょっと風変わりな女で挨拶が苦手だった。

研究だけが斉藤の生き甲斐になっている。


 斉藤は、挨拶を終えるとスタッフ三名を連れてシェルターの操縦席に移動した。


 夕子が御坂恵子に尋ねる。


「御坂さん、斉藤さんって、ちょっとアレね」


「そうなの、研究者に多いタイプね」


「ところで、思ったより少ない気がしますが」


「そうなの、湖の噴火騒動で予定を切り上げた人が殆どで、

ーー 予約取消しも多いわ。

ーー そんな折なので、会長が移動シェルターを試したいと」


「御坂君、今日の参加者は最終的に何人なりましたか」

 

 御坂の部下が会長に歩み寄り言った。


「昼間会長、一般スタッフと幹部や司令室を入れて百十名になります。

ーー あと夕子さまたち十六名と、

ーー 会長と社長代理と御坂さんで十九名です。

ーー 合計すると百二十九名ですが、保養所バスの運転手さんもいらっしゃいます」


「じゃあ、今日は百三十名でいいんですね」

夕子の父の功が言った。


「はい、一般客室のお客様はすべて、昨日のうちにお帰りになっています」


「御坂さん、先日、シェルターの搭乗定員は、三百三十名と言っていましたね」


「はい、その通りです。

ーー 客室定員は最大二百名ですから」


 夕子は御坂の説明を聞いて、贅沢な保養所かと思った。




「お嬢様、遅れました」


 バス運転手がスタッフと一緒にスタッフ専用エレベーターからシェルターに搭乗した。

御坂恵子は、司令室幹部の斉藤由鶴から連絡を受け夕子に伝えた。


「そろそろ、テストが始まります」


 御坂は、そういうと座席のコントロールパネルからシートベルトランプを確認して、操縦席の斉藤に伝えた。


「御坂さん、私の方もスタンバイしています。

ーー ランプも問題ありません。

ーー これから無人モードから、有人モードに切り替えます」


 斉藤は、パネルにモード変更のパスワードを入力して赤色ランプを確認した。

赤色が有人モードに変わったことを意味している。




 五台ある搭乗口とエレベーターを接続していた搭乗緩衝器が解除され、シェルター内に収納された。

御坂は、会長に連絡を入れて報告を済ませるとマイクを手にアナウンスを始める。


「これより、このシェルターは地下滑走路に移動します。

ーー 地下滑走路から、垂直離脱して駿河湾に着水します。

ーー 移動時間は、ごく僅かです。

ーー 着水の後、当シェルターは潜水モードか船舶モード選択します」


「御坂さん、どっちなんですか? 」


「斉藤由鶴さんが切り替えるか、

ーー 人工知能が切り変えるかのどちらかになります」




 御坂恵子のアナウンスが終わると緩やかな滑り台を滑るようにシェルターは移動を始めた。


 夢乃真夏が兄の夢乃神姫[ヒメ]に言った。


「ヒメお兄ちゃん、真夏、遊園地にいるみたいで楽しいよ」


 ヒメは真夏の楽観的な性格とは対照的に緊張を隠せないでいる。

酒田昇も普段の明るさが鳴りを潜めている。


 星乃紫、朝霧美夏は夕子の後ろの席で、そわそわしていた。

秋生会長と社長代理の功は、御坂の後ろで御坂を見ている。

その後ろには、三日月姫姉妹、未来、零、帝が並び、シェルターの動きに首を傾げていた。


 酒田昇、ヒメ、安甲神主兄弟、運転手が後ろにいる。

夢乃真夏、白石式子、白石陽子、日向黒子が最後尾に座っていた。


 移動式リニアシェルターが地下滑走路を抜け、出口に出た時だった。

 大きな爆発音がシェルター内に聞こえた。


 シェルターは、低空で浮上して近くの駿河湾に着水した。


「斎藤さん、爆発音ありましたが」


「御坂さん、これは本番なのよ」


 昼間秋生会長の直感は正しかった。


「お父さん、なんで分かったのですか」


「功、斎藤さんは、未来からこのシェルターの情報だけを持ち帰ったとでも思うかな」


「じゃ、歴史もですか」


「孫娘が心配になってなあ、功を誘ったのだよ」


「お父さん、これは、本番だったのですね」


「外が騒がしいようじゃが」

帝が三日月姫に言った。


「わらわは、騒がしいの嫌いじゃ」

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三日月未来(みかづきみらい)

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