第五十九話 三日月姫と地酒ワンカップ
昼間夕子、星乃紫、朝霧美夏、三日月姫、三日月妹、前世の未来に、白石陽子と日向黒子が婦人売り場で合流した。
白石と日向は夕子たちの買い物が終えるのをエスカレーター付近で待つことになった。
夕子は、三日月姫と、その妹に新しいワンピースを選ぶことを決めている。
未来には、胸元が少しゆったりしたサイズを試着させて見た。
三人とも夕子が選んだワンピースがとても気に入り満足して夕子に礼を言った。
服の色は、三日月姫たちが今着用している色に近い。
六人は買い物を終え、夕子たちを待っていた白石と日向を拾い、地下の食品売り場に降りる。
日本酒のコーナーに立ち寄ると、酒田昇が夕子の視界に入った。
「あら、酒田さん、どうしたの?」
「多分、この辺りを見ていれば、みなさんが来る気がしたんですよ。
ーー 男の動物的な直感ですが・・・・・・」
と言って酒田は笑った。
「酒田さん、それ、笑って誤魔化してない」
「昼間先生、酒田さんも悪気はないのだから・・・・・・。
ーー まあ、いいじゃないですか」
星乃が酒田庇っていた。
夕子は閉口した表情を浮かべ星乃に見せたが、すぐにリセットした。
「じゃあ、酒田さんは、今夜のお酒を一本買って下さいね」
「昼間先生、何がよろしいですか?」
酒田は、そう言って、戯けた。
「じゃあ、酒田さんは、石川県の銘酒をお願い出来ますか」
「昼間先生、どんなお酒がよろしいですか?」
「そうね、呑兵衛の普段飲みだから、普通の純米酒でいいわよ」
夕子は、そう言って酒田の肩をポンポンと叩いた。
三日月姫と妹が、横でその話を聞いていた。
「夕子、わらわもお酒を選びたいのじゃ」
前世の未来は黙っていた。
三日月姫が新潟の日本酒を指で差し示した。
「三日月姫、これは純米吟醸酒ですがワンカップです」
「夕子、ワンカップってなんじゃな」
「最近、地酒ブームで、試飲向けに発売された小さな瓶のお酒です」
「夕子、それは、沢山あるのじゃな」
「はい、量販店の通販などで購入できるそうです」
「夕子、わらわも、沢山試飲してみたいのじゃ」
「じゃあ、三日月姫さま用に、今度、沢山注文しておきますね」
「じゃあ、夕子、今日はこれとこれを試飲したいのじゃが」
三日月姫の言葉に従って夕子の買い物籠に、前世の未来が地酒のワンカップを数個入れた。
夕子は純米大吟醸酒でなかったことに安心している。
酒田と合流して九名になった東富士見町マンションの住人たちは、スーパーマーケットでの買い物を済ませマンションに戻った。
昼間夕子が、自宅の鍵を開け中に入ると、零と安甲神主が顔を出した。
「昼間先生、早い方がと思い、零ちゃんと一緒に来てしまいました」
「神主さん、そうですね、善は急げですね・・・・・・」
夕子は、零に買ったばかりのワンピースを手渡した。
「夕子姉さん、これは?」
「零の新しい着替えよ」
零は包みを開けて喜んで、はしゃいでいた。
零の横にいた安甲神主が夕子に言った。
「白石陽子さんは、今日お会いできますか?」
夕子は、扉の外にいた買い物グループ全員を部屋の中に招き入れた。
「神主さん、こちらが白石陽子さんです」
陽子が紹介している横を、三日月姉妹、未来、日向黒子、星乃紫、朝霧美夏、酒田昇が通り抜けた。
「白石ですが・・・・・・」
「いやね、昼間先生と昨日、電話で話していたら、お部屋のイラストの話題になってね。
ーー 良かったら、そのイラストと・・・・・・。
ーー あなたが書かれた絵とかを見せていただきいと思っていますが・・・・・・。
ーー ご都合が良ければですが」
白石は、昼間先生を見た。
「先生が、そう思うなら・・・・・・」
「そうね。神主さんは、有名な陰陽師の子孫なの。
ーー だから見ていただいても、損は無いと思うわ」
「分かりました。
ーー じゃあ、先生も付き合って頂けますか」
「いいわよ。白石さん。
ーー じゃあ、安甲神主、私もご一緒しますので」
「昼間先生、じゃあ、早速、見せていただきましょう」
白石陽子、昼間夕子、安甲神主の三人は白石親子が住む三階に移動した。
「神主さん、ここが自宅です」
白石に並んで昼間も白石宅に上がった。
神主は白石の横にいた。
「神主さん、そこにあるイラストですが・・・・・・」
神主は、同じイラストをいくつも見ていたので驚きはなかった。
「エネルギーの異常は、無いようだ」
白石は、自室からスケッチブックを持って来て神主に見せた。
神主は、白石のスケッチブックのページを丁寧に捲りながら呟いた。
「白石さんは、絵がお上手ですね」
「いいえ、絵は趣味なので」
神主は、最後のページを開いて息を呑んだ。
「これは、これまでに見たイラストとは別物だね。
ーー 白石さんは、これを想像されたんですか?」
「いいえ、未来さんのお話を聞いていたら、
ーー 勝手に鉛筆が動き始めたんです。
ーー 他の絵も未来さんのお話のお陰なんです」
「昼間先生、問題はなさそうですが・・・・・・。
ーー 部屋の壁にある、例のイラストには結界を掛けましょう」
「それが、無難ですね」
「そうだ、昼間先生、三日月姫は、なんと」
「陽子の絵と帝の部屋の絵がそっくりとか言ってたわ」
昼間夕子、白石陽子は、神主と一緒に昼間宅がある四階に戻った。
「神主さん、何も無くて良かったわ」
「そうそう、毎回だと大変ですからね」
白石は、神主と昼間の会話の意味を理解していなかった。
「まあ、とにかく、今日は、飲みましょう」
夕子の頭には、晩酌の二文字しかなかった。
星乃紫と朝霧美夏は、三日月姫たちの晩酌の準備をしていた。
白石陽子と日向黒子は隣のリビングの大きなソファで部活の続きをしている。
酒田昇は、買い物の荷物運びでダイニングテーブルに腰掛けダウンしていた。
三日月姫と妹、前世の未来は、零と一緒に奥の部屋で部屋着に着替えた。
夕子は、腕まくりして、星乃と朝霧を手伝う。
「紫、美夏、あとは何かしら・・・・・・」
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三日月未来




