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第五十六話 神社のイラストと白石のデッサン

 昼間夕子(ひるまゆうこ)日向黒子(ひなたくろこ)は、前世の未来と零を傍で見守っている。

星乃紫(ほしのむらさき)朝霧美夏(あさぎりみか)も、三日月姫と、その妹を見守った。

酒田昇は、失態を夕子たちに(とが)められて、(ひど)く落ち込んでいた。




 安甲次郎(あきのじろう)神主と兄の一郎は、夕子の部屋に結界を張り巡らせた。


「昼間先生、今夜は神社に戻るつもりでしたが止めにします。

ーー このマンションにいることにします」


「神主さん、私たちは歓迎しますから、ゆっくりされてください」


「昼間先生、事が事なので、兄もよろしいでしょうか」


「神主さん、この部屋は、沢山のお部屋があるので大丈夫ですから」


 夕子の言葉を聞いていた朝霧が横から口を(はさ)んだ。

「私たちも心配だから、今夜は夕子のお部屋で寝泊まりします」


「そうね、朝霧先生と私も付き合うわ。

ーー それに、ここ私たちの部屋と違い大きいんですよね」

星乃が言った。


 星乃の言葉を聞いた生徒の日向黒子、白石陽子、夢乃真夏と兄の神姫(ヒメ)の四人も、星乃の言葉に乗じて寝泊まりを希望した。


「そうか、みんなも今夜は先生と一緒だな。

ーー 先生の(いびき)はうるさいぞ」


 夕子の言葉を聞いて生徒たちがはしゃぎ始めた。




「先生・・・・・・」


「真夏ちゃん、どうした?」


「三日月姫が、起きました」


 安甲神主が、三日月姫の様子を確認して安堵(あんど)した。

しばらくして、三日月妹、未来、零が目覚めた。


「夕子、わらわは、眠っていたのじゃな」


「三日月姫は、お疲れで眠られていました」


 酒田昇(さかたしょう)が、三日月姫の声を聞いて大声で泣き出した。


「酒田、なんか哀しいことがあったのじゃな」


「三日月姫、私のは嬉し泣きです」


「そうじゃったか、酒田。

ーー 夕子と未来の物語に、わらわも加わるが良いのじゃな」


「はい、三日月姫、私は歓迎しています」

酒田は三日月姫に伝えた。


「酒田、楽しみじゃ」


「三日月姫、物語はまだ下書きでござりまする」

前世の未来が言った。


「左様か、未来、楽しみじゃ」


「未来さまのお話を聞かせて頂き、絵を書かせていただきます」

白石が前世の未来に言った。


「陽子じゃったかな。よろしくたもれ」


 前世の未来が白石陽子を気にいったように夕子には見えた。


 その日は、その後変化なく過ぎて翌朝、十五人は解散することになった。




 午後になって、酒田が訪ねて来た。

「昼間先生、原稿ですが、いつから準備しますか」


「原稿は、頭の中にあるわよ。

ーー でも前世の未来と白石に相談しないと無理ね」


「そうですね。

ーー 今回のは、特殊なパターンですから案外時間必要かも知れませんね」


「酒田さん、それは、違うわよ。

ーー 前世の未来は竹取の原作者よ。

ーー 白石は帝と側室のお子の生まれ変わり

ーー となれば、無意識がまるで違うわよ」


「そういうもんですか?」

夕子は酒田の言葉に臍を曲げた。




「夕子、今日から御伽噺の続きを始めよう」

前世の未来は、そういうと、これまでの出来事を話し始めた。


 前世の未来が見た三日月姫の物語だった。


「未来、その物語に、わらわの思いも入れてたもれ」


「三日月姫さま、未来は姫さまの従者でござりまする」


「左様か、未来、ここはこうが良いのじゃが」


「はい、そのようにして、夕子、白石と聞いてみたくござります」


 未来は、そいうと夕子の袖を引いて三日月姫の前に夕子を連れて来た。


「三日月姫、私は姫の物語を書きたいのです。

ーー 時を超えて現世に現れたお姫様の物語を」


「夕子、それは凄いのじゃが、

ーー わらわは、あの時、記憶が飛んだのじゃ。

ーー 神隠しのせいじゃ」


「三日月姫さま、零も同じ事を言っていました。

ーー 零は、名前を思い出すのが大変でした」


「じゃが、わらわの方が軽いようじゃな」


「はい、あとで白石にも同席して頂きますので、

ーー 姫は、如何(いかが)でしょうか?」


「わらわも、白石の絵とやらが見たいのじゃから

ーー 差し(さわ)りは、ごじゃらん」




 酒田の訪問のあと、白石陽子が昼間夕子の部屋を訪ねた。


「白石、上がって」

「先生、お邪魔します」


 昼間夕子は、未来と三日月姫から聞いた下書きを白石に見せた。

白石は、原稿の下書きを見て声を上げる。


「先生、これ、古典じゃないですか」

「白石な、三日月姫は、あっちの人間と前にも言っただろう」


「でも、これ、生の古文ですよね」

「それで白石、これで絵を想像できるのか」


「いいえ、出来ません。

ーー 三日月姫さまと未来さまのヒントが必要です」


「なるほど・・・・・・」


 夕子は呟き、白石を奥の部屋に連れて行く。

 三日月姫と妹と未来が白石の到着を待っていた。


 白石は下書きを見ながら、三日月姫と未来に質問を始めた。

白石の右手が紙の上をなぞるようにデッサンをしている。


 しばらくして、白石が三日月姫に絵を見せた。


「白石、絵が上手いのじゃな」


「三日月姫さま、とんでもございません」


 前世の未来も、下書きの絵を見て驚いていた。


「帝の部屋にあった絵と似ている・・・・・・」


 前世の未来の言葉に三日月姫が身を乗り出す。


「わらわも、この絵を覚えているのじゃ」


 昼間夕子は、そのやり取りを見ていて鳥肌が立った。


 帝の部屋の絵は、側室のお子の前世を持つ白石が前世で描いた絵だったと悟る。




精霊が呟く。

[その絵、側室のお子の絵・・・・・・白石の絵]


 昼間夕子の中で、ガラスのパズルが激しく音を立てていた。


「白石、お前の絵と、神社のイラストが繋がりそうだ」


「昼間先生、何言っているのか、私にはさっぱり分かりませんが・・・・・・」


「あの絵は、白石が前世で描いた絵だったかもしれない・・・・・・」


 昼間は、そう言って白石陽子の絵と部屋のイラストを見た。

 お読みいただき、ありがとうございます!

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投稿後、加筆と脱字を修正をする場合があります。


三日月未来(みかづきみらい)

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